DeFi(分散型金融)はどこが革命的?

Taisuke Horitsugi
DeFi Japan
Published in
11 min readDec 23, 2019

パブリックブロックチェーンを使った金融プロダクトを指す DeFi(Decentralized Finance, 分散型金融)は、Ethereumを中心に開発が進み、現在も毎日のように進歩を続けています。

注: DeFi は「ディファイ」と発音します。

プロローグが始まったばかりであるDeFiムーブメント、結局これがどこを目指しているのか、何が革命的なのか、そもそもの理想を再確認してみましょう。

注:DeFiは生まれたての赤ちゃんであり、夢と理想は無限大ですが、それに対する課題もたくさんあります(ほとんどにおいて、解決に向けた議論が進んではいます)。この投稿ではひとまず、課題を抜きにした重要な理想論/ゴールに焦点を当てます。

情報革命と金融

DeFiの一つである分散型予測市場プラットフォーム、AugerのCo founderが投稿したブログ “A Crypto Thesis ~Open Financial Systems” は長文ですが、パブリック・プラットフォームを使った金融に対する示唆にあふれた、とても興味深い投稿です。

彼はそのブログにて、パブリック・ブロックチェーンを利用した全く新しい金融インフラストラクチャを、インターネットが起こした情報革命と同じ文脈で捉え、「金融は、情報革命における印刷機に相当する出来事すら、未だに始まっていないのだ!」と主張しています。

金融には、まだ印刷機ほどの革命すら起こっていない?

情報革命においては、15世紀にグーテンベルクによる活版印刷術の発明に端を発し、何より21世紀ではインターネットが深く浸透、人類の情報に対する関わり方が根底から覆されることになりました。

しかし「金融」分野では、インターネットが情報に対してもたらしたような革命的変化は、まだ経験していません。

そこで登場するのがEthereumなどのパブリックブロックチェーンです。これらを使ったDeFi(分散型金融プロダクト)はその特性を活かし、情報革命と同じ変化を金融分野にもたらすことができる、と考えられています。

DeFiは、どんな新しい金融を作り出すのか?引用したブログに従い、情報革命と照らし合わせて考えてみましょう。

DeFi, 金融開発を自由にする

DeFi…アイディアと実力があれば、誰でも金融プロダクトを開発できる

現在、論評やニュースの創造はインターネットの力により完全に個人に開放されています。特に大きな資本やノウハウがなくとも、アイディアや信念さえあれば誰もがウェブサイトを運営し、数千億円の時価総額を持つメディアよりも多数のインプレッション、強い信頼を獲得することもできます。

もはや、世論を動かすニュースや鋭い論考は新聞社やテレビ局でなく、個人のブログ、SNSやYouTubeから生まれることも全く珍しくありません。情報革命は「情報の創造」を自由化することに成功しています。

翻って金融を考えると、その特性上、まだこの点でのインターネットの恩恵を受けることができていません。多くのユーザーから金銭を預かり運用/分配することはもちろん、債券やデリバティブ、そのマーケット創造を小さなチームがすぐに開発することは規制やセキュリティ面でも非常に困難です。

DeFi が革命的であるポイントは、この「金融開発の自由化」をより深く実現する可能性を秘めているところです。

Ethereumを使えば、誰もがスマートコントラクトを書いてプロダクトを開発し、パブリックな利用を実現できます。なおかつネットワークの力に裏付けされたネイティブトークンEther(ETH)と、同じくプログラムで制御可能なERC20トークンが与えられていることもあり、「金融」にまつわるプロダクト開発の障壁も低く、いかなる個人にも開放されているのです

金融開発の自由を享受したCrypto生まれプロジェクト

MakerDAO, Compound, Uniswap, 0x project, Kyber Network, dYdX, bZx, Set protocol…

これらは現在の DeFi業界 をリードしているチームの名前です。

上記のプロジェクト名からも分かるように、既存の金融ビッグプレイヤーの名前はそこにありません。全て、パブリックブロックチェーン(Ethereum)で生まれ育ったプロジェクトであり、このプラットフォームがもたらす金融開発の自由化の恩恵を享受したグローバルチームです。

DeFiの開発者コミュニティは非常にオープンであり、アイディア実現のために他チームのスマートコントラクトに接続し、利用することにも許可は求められません。むしろシナジーを生むために奨励されていますし、組み合わせることで非常に高度で複雑な金融商品も表現することができます。

ブログやSNSによる世界中への情報発信がパーミッションレス(誰の許可も必要としない)であるように、DeFi はパーミッションレスなグローバル金融プロダクト開発を実現する可能性を秘めています。

才能とアイディアに溢れた開発者が競争することで、より効率的なプロダクトが誕生するチャンスが増えます。「ブログを書くように、金融プロダクトが開発できる」と考えてもいいかもしれません。

DeFi, 金融アクセスを自由化する

DeFi…金融プロダクトへのグローバルなアクセスが自由に

インターネットは当然、人々の情報へのアクセスを完全に開放しています。自国の情報はもちろん、国境に縛られずあらゆる言語での情報にアクセスし、多様な洞察に触れることができます。

印刷術、ラジオ、新聞、テレビといった歴史的なメディアの発達の最後にはインターネットがこれら全ての革命をまとめあげ、様々なフォーマットで膨大な情報を安価に提供するようになりました。これこそ情報革命が人類にもたらした最も大きな変化です。

金融分野ではまだまだ情報革命のような高レベルでの金融アクセスの自由化は達成されていません。インターネットがあっても、”banking the unbanked (銀行口座がない人への金融手段を)” の標語に代表されるように、送金や貯蓄、資産管理へのアクセスが不十分である地域がたくさんあります(アメリカでさえ)。”Unbaked” な人々は通常、現金やプリペイドカードを利用し、保険や年金など資産管理サービスを活用することはできません。

「恵まれない国や地域の人々」に限らず、日本においても海外の魅力的な資産管理オプションを選択することには高いハードルがあり、アクセスがグローバルに自由化されていない事実は、当然のこととして広く受け入れられています。

しかし DeFi の開発が進むことで、「金融アクセスの自由化」を世界レベルで促進できる可能性があります。

例えばUSDとのステーブルコインであるDAIを入手することで、アルゼンチンやギリシャ、アフリカ大陸など地球上のどの場所にいようが、各種書類やKYC、手続きなしでドル建て資産にアクセスできますし、それをすぐにトレーダーに貸出してドル建金利を得ることができます。求められるのは、インターネットとEthereumアドレスのみ。政局が不安定な地域では、USD建資産は魅力的な価値の保存手段となります。

(このDeFiプロダクトの提供に規制が入る可能性もありますが、そもそも構造的に運営主体がいないDeFiもあります。また、運営主体の分散化に挑戦しているものも少なくありません。)

CompoundやUniswapは世界中のユーザーのトークンをスマートコントラクトに集約し、インターネットを持つ誰もがそのプールから流動性を享受することができます。契約の範囲は世界中に拡大され、マーケットメイカーやテイカーになることも、人種や国籍は全く関係がありません。

高度な投資戦略をもつ投資信託でさえも、それをスマートコントラクトで自動執行するプロダクトにアクセスすれば完了します。

In an ideal world, wealth creation tools should be available for everyone no matter one’s age, geography or current financial situation.

理想的には、年齢や地理、現在の財政状況に関係なく、誰にでも資産形成への道が開かれなければなりません。
- Set protocol

今やどんな複雑な情報へもインターネットで自由にアクセスできるように、DeFi は金融プロダクトへのアクセスをパーミッションレスに、もっと自由にするものです。

DeFi, 金融を自動化する

インターネット上のニュースメディアには、新聞配達員は必要ありません。ここ2001年から2018年の日本において、新聞販売所は約30%、新聞配達の従業員数は約40%減少しています。

https://www.pressnet.or.jp/data/employment/employment04.php

ニュースの発表や拡散はクリック一つで済み、世界中の人々がアクセス可能なインターネットに流すことができます。伝統的な手法から不要な仲介者を排除できるか、より効率的な仲介者が登場します(例: 配達業者→オンラインペイメント)。

これをDeFiに適用すると、「トラストレスな金融トランザクション」と言い換えることができます。例えば一定条件下の送金や担保精算に対して、 ”プログラマブル・マネー” であるETHやERC20トークンを扱うスマートコントラクトには強制執行能力があります。その結果、狙った結果の実現のためにカストディアンを始めとした企業や従業員への信頼を必要としません(Can’t be evil, 悪さができない)。

インターネットが情報発信とアクセスを劇的に効率化したように、DeFiも仲介者を排除するか、より効率的なものに置き換えた金融の実現を期待されています。

“DeFi” は皆を集めるキーワード

以上の3つが、DeFiが金融にもたらそうとしている変化です。

誤解を恐れずに言えば、 ”DeFi” ワードは多くの開発者やユーザーを呼び込むためのマントラ、マーケティング用語です。DeFi自体に数多の課題があるだけでなく、ベースとなるEthereumなどパブリックブロックチェーンも完成までまだ時間がかかる状況です。

これらのハードルはDeFiの開発コミュニティは痛いほど理解していますし、必死で解決に取り組んでいる段階です。

しかしDeFi の本質的な存在意義である、

  • 創造の自由
  • アクセスの自由
  • 自動化/効率化

の3つの金融分野での実現は、多くの実験と失敗を繰り返しつつ追い求めるだけの価値が十分にあります。

DeFiプロダクトの活用が進み、グローバルなコミュニティが動き出したのはたった1~2年前のとても若い業界です。この動きをもっと大きくするため、便利で興味深く自由なアイディアを持った 開発者がたくさん求められています。

日本からユーザーとしてはもちろん、柔軟なアイディアをDeFiにぶつける開発者の方もたくさん出てきてほしいと願っています。

質問があったり、DeFiの課題をぶつけてみたくなったらぜひ DeFi Japan テレグラムグループへJoinしてください。議論しましょう!

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