DeFi(分散型金融)の簡単なヒストリー

Taisuke Horitsugi
DeFi Japan
Published in
9 min readDec 3, 2019

2019年11月26日(火)に、DeFi Japan ミートアップとして “やさしいDeFi” を行いました。パブリックブロックチェーンを活用した金融、すなわち分散型金融(Decentralized Finance, DeFi) について学び、将来像についての考察を深めあえるコミュニティ作りが目的です。

初回はMakerDAOKathleenさんには DeFi の必要性や概要を、BuidlKanaGoldさんにはステーブルコインDAIの課題や今後について語っていただきました。

DeFiの簡単なヒストリー

私の方からは、DeFiにおける流動性供給プロトコル、Kyber Networkを通した統計などを交えつつ、簡単なDeFiの歴史についてお話しました。

その内容を、ここにまとめておきます。

この投稿により、今からDeFiについて学びたい人に「DeFiストーリーと現在の立ち位置」を把握していただき、今後の学習に役立ててもらいたいと思っています。

以下より、当日のスライドと簡単な説明をつけて振り返っておきます。

1. Ethereumの誕生 (2015/7/30)

Bitcoinに次ぐ時価総額を持つパブリックブロックチェーンであるEthereum(イーサリアム)は、2015年の7月30日に稼働を始めました。

考案したのは Vitalik Buterin氏です。ローンチ時、21歳であった彼は Ethereumの狙いについて、

think of the difference between something like a pocket calculator and a smartphone, where a pocket calculator does one thing and it does one thing well, but really people want to do all these other things. And if you have a smartphone then on the smartphone you have a pocket calculator as an app.

ポケット電卓とスマートフォンの違いを考えてください。ポケット電卓は単一の機能をうまく提供しますが、人々は他のことも必要としています。スマートフォンがあれば、ポケット電卓もアプリケーションとして実現できるはずです。

話しています

スマートフォンのように多機能なパブリックブロックチェーンを目指し設計されたのが Ethereum であり、開発者がそれを利用して構築したアプリケーションを 分散型アプリケーション(Decentralized Application, DApps) と呼んでいます。

そのアプリケーションでも特に、レンディングや決済、資産運用に関するアプリケーションこそ、DeFiアプリケーションと呼ばれるものです。

2. 大ICO時代 (2016~2018)

Ethereumがローンチしても、すぐにたくさんのアプリケーションが生まれたわけではありません。まずは開発の資金調達のような目的で、たくさんのICO(Initial Coin Offering)が行われました。

数多のプロジェクトがEthereumの多機能性を活用し、Ether(ETH)を調達しする見返りとして 自社発行のERC20トークン(Ethereum上のトークン)を配布しました。

たくさんの人々がトークンの値上がりに期待し、すぐにICOはバブルや詐欺を生み出すことになりました。業界にネガティブな影響も与えましたが、この時期に一部の優秀なプロジェクトが発行したトークンは今もなおEthereum上で活発に取引されています。

この時期が、Ethereumにたくさんの価値が生まれた大きなきっかけです。Bitcoinには原則 bitcoin(BTC) のみが広く流通していますが、Ethereumには複数のトークンが流通しています。

3. 分散型取引所, DEXの勃興(2018~)

ICOにより Ethereum にたくさんのトークンが流通するとなれば、それを交換したいニーズが生まれます。

本来、ETHとERC20トークンを交換したければ、Binanceのような大きな取引所へETHなど資金を預け入れ、そのシステム内でトレードしなければなりません。

しかし、Ethereumはアプリケーション開発を可能にするプラットフォームである以上、取引所機能を持つDAppsも生まれます。それが、分散型取引所(Decentralized Exchange, DEX)です。

DEXを使えば、取引所に資産を預けることなく、ERC20トークンであれば簡単にETHとトレードすることができます。2018年頃には、オーダーブックを持たずにベストレートを提供してくれる簡単なDEXもたくさん生まれ、たくさんのユーザーがDEXを使ってトレードを行うようになりました。

4. DeFi コミュニティ発足

2018年8月には、いよいよ海外からDeFiコミュニティが発足しました!パブリックブロックチェーンを使った金融DAppsを “DeFi” とキャッチーに名付けたのも彼らです。

多くのユーザーを獲得したDEXは、ETHとERC20の取引を可能にする DeFiプロダクトであることは間違いありません。しかし「金融」を広くカバーするため、もっと高機能なプロダクトが開発できるはずです。

DeFiコミュニティは、そういった高機能な金融アプリケーションの開発を目指す人々が助け合い、議論できる場所を作るためにスタートしています。何の許可も必要ない、パブリックなプラットフォームでのオープンソースプロジェクトがお互いの成長を支え合うコミュニティです。

誰でも参加できるTelegramグループが作られ、最初に「パートナーシップでない、もっと敷居の低い “コミュニティ活動” であること」が強調されました。

すぐに、実際にDeFiアプリケーションの開発者が自らのアイディアを紹介し、それに対するフィードバックや議論がスタートしています。

5. 勢いを見せるDeFi

お互いのオープンソースプロジェクトを活用しあう DeFi コミュニティの力もあり、今ではDEXにとどまらない、それを発展させた多様な DeFiプロダクトが利用されています。

DeFiの根幹をなすステーブルコインDAIに始まり、融資や資産運用がパーミッションレスで簡単にできるアプリケーションがたくさんあります。

スライドに上げたDeFiプロジェクトは一例ですが、ほぼ全てが他プロジェクトのスマートコントラクトを利用した形で存在しており、あるプロジェクトがつきっきりで他プロジェクトを助けることも珍しくありません。

DeFiハッカソン開催による助成金で成長したプロダクトもありますし、課題をたくさん抱えつつも、コミュニティの力を使って今後もパブリックブロックチェーンを使った金融を実現する試みが続きます。

広がるDeFiユースケース

DeFi Prime の分類に従えば、DeFiプロダクトは15のジャンルに分けられ、Ethereum上に構築されたものだけでも190のサービスが展開されています。

DeFiの成長

DEXなどの取引高を正確に把握するのはとても困難であるため、DeFiプロダクト全体に流動性を提供する Kyber Network の統計から DeFi全体の成長を推測します。

2018年の11月には月間取引高が490万ドル程度でしたが、今年の10月の取引高は3500万ドルでした。まだまだ悪い市況が続いた年でしたが、1年間で約7倍の成長を見せることができました。

BinanceとDEXの24h取引高比較

しかし取引高の観点から見ると、集権的な取引所にはまだまだ遠く放されているのが現状です。

24h におけるBinanceの取引高に比べれば、DeFiでの取引を支える上位6プロダクトの取引高を合算したとしても、たった1.3%にしかなりません(CoinGecko 11月26日の統計)。

DeFi成長指標の一つとして、取引高の指標を注意深く見ると面白いはずです。

DeFi Japanコミュニティとして

日本と英語圏を比べると、DeFiのみならずパブリックブロックチェーン全体で途方も無いほどの情報格差があるため、一人で広く深く学ぶことはとても難しい状態です。

オンラインとオフラインを混ぜ合わせた継続的なコミュニティ活動をメンバー全体で行うことで、気軽に学んで議論し、フィードバックを受けることができる場所にしていきましょう。

DeFi Japan telegram グループでぜひ話しましょう!

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