DeNAアナリティクス部のビジョンと未来:新たな指針策定の裏側に迫る

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2023年6月、DeNAのアナリティクス部では部内のビジョンを新たに策定しました。

DeNAアナリティクス部 新ビジョン ―「データに価値を与え、事業の未来を切り拓く」

本記事では、このビジョン策定の裏側に迫ります。マネジャー陣の小田、出口(@hm_dgc)とのインタビュー形式で、策定プロセス、その影響、そしてアナリティクス部の未来について深く探っていきます。

記事に登場する人物

新ビジョン策定の背景

― はじめに、お二人の自己紹介をお願いします。

小田:私は新卒で金融系のSI企業に入社し、そこで大手企業さま向けにデータ分析の仕事をしていました。その後AI系のベンチャー企業に転職し、インフラ企業さま向けにプロジェクトマネージャーとして、プロジェクトマネジメント業務を行っていました。

2020年に中途でDeNAに入社してからは一貫して、共通部門としてのアナリティクス組織に属しながら、ライブストリーミング事業のデータ分析業務に従事しています。2022年からは、マネージャーとしてグループ及び部門運営にも携わっています。

出口:私は新卒でDeNAに入社し、ウェブ開発のサーバーサイドエンジニアを経て、アナリティクス組織に異動しました。過去はゲーム事業、直近では小田と同じくライブストリーミング事業のデータ分析業務を行いながら、2019年からはマネージャーとして組織運営をしています。

― では早速ですが、新ビジョン策定の背景について教えてください。

小田:2023年から部門のマネジメントに関わるようになり、まず取り組みたいと思ったのは、組織の存在意義を明確にすることでした。

アナリティクス部は、事業を横断して分析機能を提供する共通部門となっており、各メンバーが担当する事業部に深く入り込んで分析業務を行うアサイン形態をとっています。事業状況の把握がしやすく、スピーディーな対応が出来るメリットがある反面、普段の業務で関わる人や重視する考え方が、その事業部に依存している状態になるんですよね。これだと、共通部門に所属しているシナジーがいまいち薄いと感じていました。

まずはアナリストのキャリアラダーやスキルマップの刷新をしようとも思ったのですが、そもそも組織全体の方向性が定まって無い中で、そんな話をしても意味がない、みんなが納得したものなんて作れない、と思いました。共通のビジョンが作れないのであれば、部門を解体しても良いのでは?とも思いました。やや冗談っぽい発言ですが当時は本当にそう思いました(笑)

出口裕己(左)、小田卓也(右)

出口:私も小田と同じような課題感はありました。特にここ1年ほどで関わる事業が増えており、ますますその傾向が加速していると感じていました。

加えて、個人への依存も気になっていました。

DeNAでは、アナリストの役割は事業から非常に重要視されており、2010年頃から優秀なメンバーに牽引されて組織として存在し続けてきました。
しかし、どんな組織であれ、人員の入れ替わりは避けられません。組織としての共通指針が無く個に依存している状態だと、人員の入れ替わりによって「組織として大事にしたいこと」が失われる可能性があります。

直近では、過去から組織にいる方と、新たに入ってくれた方が、良いバランスで混ざり合っています。マネジメント陣も、私が新卒で長く組織の歴史を知っており、小田が中途で外部の知見がある。ちょうどよいバランスだなと思い、このタイミングでビジョンを固め直そうと思いました。

― 関わる事業部の増加、そして人員の入れ替わりによって、組織の存在意義が薄れている危機感があったのですね。その危機感を払拭するために、今回のビジョンを策定されたと。策定する際に重視した価値観や原則は何ですか?

出口:何よりも、ビジョンの実現が事業への貢献に繋がるように意識しました。また、中長期的に顕在化しそうな組織課題のシューティングをする際の指針としても使える事を意識しました。

出口 裕己

小田:私が意識したことは、まずは各事業の分析を行っているアナリティクス部のリーダー陣が納得し、共感出来るものにすることでした。共感があるからこそ、各リーダーが日々の業務で体現したいと思えるし、体現できるからこそ周囲にも自信を持って説明出来る、そういうものにしたかったです。

また細部にもこだわり、覚えやすく、普段から口に出せるフレーズにするといった点にも意識しました。

出口:作って終わり、では意味がないですもんね。作成当日に、早速slackスタンプを作って、気軽に使えるようにしてみたり(笑)

slack用のスタンプも作成

未来を切り拓くため、ビジョンに込めた思い

― それでは、具体的にビジョンに込めた思いについて教えてください。

出口:前半の「データに価値を与え」の部分は、ただデータが存在しているだけではダメで、そこに「価値を与える」事こそが重要という思いを込めました。当初は「データを使って」という文言案もあったのですが、いかにデータが持つ価値を高められるかが、アナリストの役目だろうと。

小田:そのためには、日々進化する技術のキャッチアップも重要ですよね。事業に近い立場のアナリストが積極的に新しい技術トレンドを把握し、それらを課題解決のソリューションとして意思決定レイヤーに提案できることの価値は、大きいと考えています。

― 後半部分「事業の未来を切り拓く」にはどのような思いが込められていますか?

出口:アナリストの役割は、ともすると「支援・サポート」といった言葉で語られる事が多いのですが、事業の意思決定者と一緒に未来を切り拓く気概を持とう、という思いを込めました。

小田:事業会社としては、その気概は大事にしたいですよね。また、「未来」という言葉も大切にしています。データは過去から現在を反映するものですが、その分析結果をもとに事業の未来に貢献することを強く意識しています。

ビジョンに込めた思い:実際の説明資料より抜粋

策定過程で判明した重視する価値感の相違

― 新しいビジョンを策定する際に大変だったことは何ですか?

出口:今回、部署のマネージャーを中心に、メンバーを巻き込みながら策定を行いました。キックオフ時にざっくりと方向性をすり合わせた時は、大きなズレはなかったです。

しかし、いざ文言に落として意見をもらうと、各人のこれまでのキャリアや、メインで関わってきた事業によって、重視するポイントや細部におけるニュアンスの違いが浮き彫りになりました。

小田:ですね。技術を重視する人、事業戦略策定に関わることを重要とする人、など様々な意見が出て、その後の調整が一番大変でした(笑)
今思えば当たり前だなと思ってます。事業フェーズや領域、それまでに発揮してきた専門性が全然違うんだから。

その後は、オフラインでも議論するようになり、それぞれが重要だと感じることを出し尽くし、今の形になりました。

ビジョン策定会議の様子

― すり合わせた結果として、今の形になったのですね。策定プロセスの中で学びはありましたか?

出口:先導する私たちが「なぜ今これをやりたいのか?」という想いをきちんと言語化し、それを共有することが非常に重要だということを学びました。ただ単にビジョンを示すだけではなく、そのビジョンに沿った方向性を示し、人々を巻き込むプロセス自体が非常に重要だったなと感じています。

ビジョンの浸透が意思決定の質を上げる

― アナリティクス部の日々の業務や意思決定にビジョンはどのように影響を与えていますか?

小田:まだ活用は始まったばかりですが、分析課題を解く際に、ビジョンに沿ったアウトプットが出来ているのかを、我々マネージャーから意識的に問うようにしています。

また、1on1のミーティングなどで、メンバーが迷った時に「ビジョン的にはこうですよね。」と共通の基準を持って話せるようになったことは、大きな進歩です。

それから、新しいプロジェクトを進めるかどうかの判断基準としても有効に機能し始めています。例えば、GPTを活用したPoC(クエリ自動化検討など)プロジェクトなども立ち上げてますが、それもビジョン達成に向けて必要不可欠だと感じたからです。

小田 卓也

出口:育成方針・アサイン方針もビジョンに沿って検討をしています。「データに価値を与える」ための分析ハードスキル、「事業の未来を切り拓く」ための事業ドライブスキル、これらをどの程度メンバーに求めるか、今向き合っている各事業で何をすればそれを発揮出来るか、考える指針としています。

アナリティクス部の未来はDeNAの未来

― 最後に、アナリティクス部の未来について、どのような可能性・挑戦があると考えていますか?

小田:データを使って事業を創る、グロースさせるという考え方は今後、より加速すると考えています。

その手段として例えば、生成AIを始めとしたAI活用がますます加速することは確実です。クエリ生成や可視化などはいずれAIで代替されると思っており、数年で働き方は根本的に変わって行くと思います。

一方で、本質的な事業課題を見つけ出す、事業に寄り添った解を導く、事業成長のキードライバーを見つけ出す。このような業務自体は残ると思います。技術の進化で現状の作業は最大限効率化し、真に解くべき課題に注力出来るようになり、ますます無くてはならない存在になって行くと思っています。アナリティクス部の未来はDeNAの未来と密接に関わっています。

出口:DeNAでは多様な事業が展開されており、また外部に目を向ければデータ関連の技術トレンドは大きな変化が起きています。このような環境で、事業とデータをつなげるアナリストの役割は、無限の可能性を秘めていると感じています。

事業の意思決定構造を理解し、その中にどうデータを織り交ぜていくかは、とてもチャレンジングです。現在も、事業部長レイヤーと一緒に「各事業・プロダクトにおいて、真に解くべき課題は何か」についての議論が行われています。

こういった刺激的な職場で一緒に働くことに興味がある方がいらっしゃいましたら、ぜひ私たちと一緒に事業の未来を切り拓きましょう!

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