結局、ユーザーインタビューって最低何人に聞けばいいの?
「オッケー、じゃあ、何人に聞く?」
顧客開発のためユーザーインタビューを行うとなると、その準備のミーティングで「やるのはいいが、果たして何人に聞けば充分なのか」という議論が必ず最初に出てきます。
この疑問に対して逃げを抜いた返答をすると「1サイクルあたり1ペルソナ最低3人」です。正確に書くと「仮説検証を1サイクル回す毎に、3人×ペルソナの数」が、最低限行うべき人数です。
その理由や詳細・細かな条件について以下で書いていきます。
そもそも人数で測ることがナンセンス(原理的には)
さて、1ペルソナ3人と言い切りましたが、それはどんな場合・どんなケースでも当てはまるわけではありません。
実は、そもそも「何人」という疑問自体がユーザーインタビューを計るのに適していません。何故なら、ユーザーインタビューは定量調査ではなく、定性調査だからです。
定性調査の成果は、行動とその本質(Jobs to be Done)の発見・仮説の見当ハズレな部分の発見・仮説に追加すべきものの発見です。その行動や本質を持つ人数や量の統計ではありません。
(もしユーザーインタビューで統計を作ろうとすると、数年がかりになるでしょう。こちらの場合、アンケートなどマーケティング寄りの定量的調査手法をとるべきです。)
そのため、ユーザーインタビューの区切りはこれらを「充分に発見できた」時に初めて訪れます。これが訪れたら、インタビューは次のサイクルに移ります。
インサイトを発見できたら「充分」のサイン
この「充分に発見できた」というタイミングは、1人にインタビューしただけで訪れることもあれば、10人インタビューしないと見つからないこともあります。
では、どうなると「充分に発見できた」と判断できるのでしょうか?
それは、インタビュー結果から「ユーザーの行動」と「その行動の本質(インサイト)」の2つを発見できた時です。
これは、インサイトハック分析や上位下位関係分析など、インタビュー後に行う定性分析によって明らかになるもので、インタビュー単体からは発見できません。
何故なら、インタビューは行動や事実を発見する機能のみを持っており、その裏側にあるインサイトを発見する役割は分析が担っているからです。
つまり、ただインタビューを行っただけでは、ユーザーインタビューを終わらせるサインを見つけることは永遠にできません。必ず分析をセットで行うようにしましょう。
「3人」は、ある公式と実務をすり合わせた、スピード重視の数字
では「1ペルソナ3人」という数字はどこから出したのかというと、ある有名な公式を利用しています。
上記は、工学博士であるヤコブ・ニールセン博士によるユーザーテストについての公式とそのグラフです。赤い線は、ユーザーテストから得られる学びの量を表しています。
このグラフを見ると、5人のテストでそのサービスにある約85%の問題を発見できることがわかります。一方で、4人目・5人目からは得られる学びの量が目に見えて逓減していきます。そして、15人でほぼ100%に至る…。
このニールセン博士による公式はユーザビリティテストについての公式なのですが、ユーザーインタビューでも4人目くらいから新しい発見は逓減していく傾向にあります。
これらに付随して、実務においてはスピードを重視しなければなりません。70%ほどの問題を発見できれば、もう次のサイクルに移るべきです。そして、70%は3人で達成することができます。
ペルソナ仮説とインタビュー項目を最初のプロトタイプと考え、素早くサイクルを回す
以上から、私たちは3人で1サイクルを回すのが最も効率的だと答えるようにしています。ペルソナ仮説とインタビュー項目を最初のプロトタイプと考え、素早くサイクルを回しましょう。
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