スタートアップを加速させるデザインの力

日本のスタートアップをデザインの力で活性化するベンチャーキャピタリストの想い

私は弁護士として経験を積み、これまでのキャリアの大部分は経営コンサルタントとして働いてきました。しかし、D4V(Design for Ventures)に参画してIDEOと協働するようになってさから、デザインがビジネスにもたらすインパクトの大きさについて、新たな考えを持つようになったのです。

最近のマッキンゼーの調査は、経営においてデザインを重視する企業は売上が32%大きく、ステークホルダーに対するリターンも56%大きいことを示しています。ベンチャー界においては、デザインのインパクトについて、元Kleiner Perkinsのデザイン・パートナーであるジョン・マエダ氏の年次報告書”Design in Tech”によく表現されています。マエダ氏は、デザインとベンチャーの交わる点に対する自身の考察について、いくつかの顕著な潮流を取り上げながら次のように紹介しています。

  • デザイナーと共同で起業したスタートアップのうち27社が、2010年以降、Intuit, Google, Facebook, Adobe, LinkedIn, Yahooといった企業に買収されている。(2015)
  • VCからの累積投資額が上位5位(20%)に入るベンチャーで、2013年以降追加増資している企業は、デザイナーを共同創業者としている。(2015)
  • VCで働くデザイナーが増えている。過去2年間のVCにおけるデザイナーの数がその前の4年間の累積よりも増えている。(2016)

マエダ氏のレポートにある通り、過去数年、アメリカのVCとスタートアップのステークホルダーから、デザインの役割は徐々に認知されるようになってきています。一方、日本においては、まだデザインがスタートアップ市場に米国と同じレベルで浸透しているとは言い難い状況です。だからこそ、D4Vにとってはチャンスがあります。D4Vは、デザインの力を活かすことによって、日本のスタートアップのエコシステムにおけるユニークなポジションを築いているのです。

D4Vで働いてきたこの1年半の間、どうしたらデザインを日本のスタートアップのニーズに応える形で活用できるか、多くのことを学んできました(日々プロトタイプを繰り返しながら自然と進化しています!)

私たちは次に紹介するデザイナーたちから学んだマインドセットを、事業における行動指針として、投資先企業が(そして私たち自身も)これを取り入れ、進化させることを目指しています。

  1. ユーザー中心であれ:自社のターゲットユーザーについてよく理解し、彼らに求めてもらえるサービスを追求する

つい、「誰もが」あなたのプロダクトやサービスのターゲットです、と言いたくなるものです。でも、自社の顧客について明確に定義し、直接彼らと話し、彼らが心から求めているものが何かを探求することが大事です。ユーザーリサーチを行うときは、オンラインのアンケートなどに頼らず、自分の足でユーザーの声を聞きにいくのです。彼らがありのままの姿であなたのプロダクトやサービスを使う様子を観察し、彼らとの会話から得たインサイトを使って、機会領域を考えます。人々の求めるものを創る(プロダクトと市場の相性を見極める)ためには、ユーザーのライフスタイルと、潜在的なニーズ、フラストレーションや欲求を理解する必要があるのです。

2. 繰り返し実験する:プロトタイプは、反復的なプロセス

アイデアをプロトタイプ(実験、テスト)するのに、早すぎることも、遅すぎることもありません。初期のアイデアを簡単なスケッチでテストし、ユーザーとの対話の材料にすることも可能です。形にすることで、真のユーザーに、早く、頻繁にそれを使ってもらうことができるのです。さらに、プロトタイプは、期限のない、継続的な実験と考えられます。サービスのプロトタイプに関しては、IDEOのこちらのブログビデオを参照してください。

3. 意義のあるストーリーを創る:ユーザーに提供する価値を、わかりやすく伝える

あなたが何を創っているのか、なぜそれが大事なのか、ターゲットユーザーにわかりやすく伝えることの重要性を忘れてはいけません。印象に残る、生き生きとしたストーリーを組み立てることは、ターゲットユーザー層の興味を惹きつけ、顧客を獲得するのに役立つでしょう。また、わかりやすいストーリーは、潜在的な投資家、メディア、人材といった、あなたのビジネスを成功させるのに必要なあらゆる支援を引き寄せることにも繋がるはずです。


D4Vは現在どのように投資先のスタートアップを支援していますか?

投資先企業にはまず第一の支援として、1–2週間のデザイン・スプリントを行います。このセッションにおいては、D4VはIDEOのデザイナーたちの協力を得て、投資先企業が直面する具体的かつコアな課題に関するデザイン・チャレンジをサポートします。デザインの役割が認識されている国もありますが、ここ日本においては、デザイン・スプリントにおいてどのような課題が取り上げられるべきなのか悩む人が多いのが現状です。そのため、私たちの投資先企業には、デザイン・チャレンジを設定するための問いかけの例を示すシンプルなスライドを創ってシェアしています。

最近投資先企業と行なったデザイン・スプリントを振り返って、3つの学びをシェアします:

  1. 中核的なビジネスのニーズに取り組む

理想をいえば、私たちは投資先企業のどんな細かい要望にもすべて応えたいところですが、実際は優先順位をつけなければなりません。常にリソースは限られているので、通常業務からデザインス・プリントを行うための時間を捻出するときは、事業のニーズのコアな部分に関することで、かつそれに取り組めば、費やした時間に対し、甚大なインパクトを生み出せる場合のみです。自社の商品のコンセプトビデオを作りたい、というだけでは十分ではありません。それよりも必要なことは、これがいかに障壁を取り除くことができ、会社にとって次のバリューの転換点となるマイルストーンに向けてあるべき場所に連れて行ってくれるかどうか、ということです。

投資家と起業家が、早い段階で、頻繁に対話を重ねていくことも必要です。投資先企業が、我々に対してビジネス・ディベロップメントの進捗を常に共有してくれていると、こちらもアクティブにデザイン・スプリントを提案できるようになります。そうすることで、重要な前提やバリュープロポジションにズレがあった際すぐ対処することもできます。きちんとやれば、今デザインスプリントに時間を割くことで、長期的には投資先企業にとって時間の節約につながります。プロダクトやサービスが完成し、ずっと後の段階で根幹的な前提が誤っていることに気づくことほど悲惨なことはないでしょう。

2. スコープと期待する結果について共有しておく

投資先企業から参加する中心的な意思決定者(理想的には創業メンバー)は、スプリントのスコープを決める場に同席すること、そしてスプリントの方向性と期待する結果についてすり合わせる節目に参加することが求められます。さらに、提案されたデザインチャレンジのスコープによっては、インハウスのデザイナーがいる場合にのみスプリントの意味がある場合もあります。スプリントの目的は、投資先企業をアクセレレートし、彼らの力を補うことであり、社内にデザイン・リーダーシップを持つことへの潜在的なニーズを代替するものではありません。

1–2週間のスプリントで達成できることをスコープする際、期待できるアウトプットについて明確かつ現実的に考えることが欠かせません。それゆえ、社内にデザイン機能を持つスタートアップは、D4V/IDEOのチームが、1) 自社のデザインチームと協働し、メンタリングをすることを可能にし、何より、2)プロジェクトを引き継ぐ担当者がいること(たとえば、もともとスコープされていなかった仕上げの作業を行なうなど)を確認しておくことが必要です。

3. プロセスに関して、アジャイルに進める準備をしておく

時々、スタートアップにとっては予期せぬプロセスや結果になることもありますが、それはまったく問題ありません。たとえば、ある投資先企業のサービスの導入体験のデザインについてコラボレートすることが決まった時、チームはユーザーへ提供する価値を全体的に見直す必要があると考えました。同様に、別の投資先からコンセプトムービーとランディング・ページの制作を手伝って欲しいとリクエストをもらった際も、まずはブランド・ガイドラインを作り、それをビデオやウェブサイトだけでなく、将来あらゆるコミュ二ケーションに役立てることができると気づきました。「後戻りする」ことは、直感に反しており、恐怖を感じるかもしれませんが、ジョン・マエダ氏の言う通り、デザイン・シンキングは、直線的でないプロセスに違和感を感じないことが求められるのです。


我々D4Vのコミュニティのスタートアップ各社を支援し、彼らから学び続けるなかで、同時にこちらが提供するサービスを進化させ、プロトタイプし続けることで、日本のスタートアップにとって価値をもたらす進歩的なパートナーでありたいと思います。

次のポストをお楽しみに!

ヴィンセント

※本投稿は、英語の原文を翻訳したものです。元の投稿はこちら

D4V (Design for Ventures) is a venture capital in partnership with IDEO Tokyo