日本のスタートアップの未来は明るい

-はじめてのD4V Makeathonで感じた希望-

Fumiaki Nagase 永瀬史章
D4V_DesignForVentures
9 min readJun 28, 2019

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6月15日に第一回D4V Makeathonを開催し、およそ25名の参加者が5チームにわかれ、それぞれのテーマに沿ってプロトタイプを作成しました。当日は全員はじめてのMakethonにもかかわらず、米国に負けない、かなりレベルの高いもので、日本のスタートアップに関わる身として非常に嬉しい結果になりました。次回開催は夏頃を考えておりますので、今回参加できなかった方もぜひ奮ってご参加ください。

早い段階でプロトタイプを作る意味はなにか

今回のMakeathonは、その名の通り、MAKING(プロトタイピング)に重点的においたプログラムでした。限られた時間の中で、様々なアイディアを机上で議論するのではなく、でてきたアイディアをなるべく早くカタチにすることを大切にしました。

まず、カタチにすることで、アイディアのたたき台ができ、周囲の人たちがそのアイディアを広げやすくするという効果があります。付箋を使って議論していると、みんな、なんとなくわかっているという状況に陥りがちですが、カタチにすることで、『あ!なるほど、こういうことね!』という共通言語ができて、他のメンバーもそのアイディアを広げやすくなります。

もう一つの効果として、新しい気づきや問いを出しやすくなります。『この機能はどうなるんだっけ?』『そしたら、このシーンの場合、どうなるんだっけ?』と、今まで、議論してて気づかなかった問いが顕在化されます。

そして最後に、実際に誰か(ユーザー)に体験してもらい、フィードバックをもらうことで、次の課題や仮説を立てやすくなります。作ったプロトタイプをユーザーにあてると、生のフィードバックが返ってくるので、早い段階で様々な仮説を検証することができます。

時間とリソースが限られているアーリーステージのスタートアップでは、なるべく早くProduct Solution Fitに到達する必要があります。そのため、まず「問いを立てる→プロトタイプをつくる→フィードバックをもらう→サービスの洗練」のサイクルを高速に回し、ユーザーの課題に対して最適なSolultionを見つけることが重要になってきます。

今回のイベントではこれらが体験でき、プロトタイプイングの重要性が認識された点が素晴らしかったと思います。参加者の実際の声を下記にいくつか記載します。

「プロトタイプをすることで、問いを立て直したり、より精度が高まっていくのを感じた。」
「とりあえず手を動かす、の重要性。いつまでも議論せず、動いてみることで新たな問題が浮上する。」
「プロトタイプ→フィードバック→サービスの洗練のサイクルを回すことの大切さ」
「作りながら考えること。プロトタイプを作る前に検証事項を決めておくこと。」

また、今回のMakeathon開催の背景についてはnoteに記載しておりますので、こちらもご覧ください。

様々なバックグラウンドの学生/社会人が参加

グラフに示すように今回は様々なバックグラウンドの方々に参加していただけました。男女比、学生/社会人比、スキル比など、どれをとっても当初の想定を上回る非常にバラエティに富んだ参加者が集まりました。Diversityの中からよいディスカッションが生まれ、また良いプロダクトが生まれるということから考えても非常に魅力的です。参加者からも「良かった点は人。スタートアップ、大企業、コンサルなど様々なバックグラウンドで思想を持った人と話せたこと。」との声をいただけました。

参加者を通じて多くの参加者が様々な学びを得、またよい仲間に出会えたアンケートに回答してくれました。今回のMakeathonにおける大きなテーマであった、プロトタイプを作るということも多くの参加者が楽しみながら取り組んでいました。Makeathon後の交流会も盛り上がり、その後自主的に2次会も開催されるなど、若い起業家のコミュニティー作りの第一歩になったのではないかと思います。

「進行よし、内容よし、参加者よしでとても楽しい会でした!このコミュニティがさらに盛り上がることを楽しみにしています!」

「様々なテーマがあり自分に思い付かない着眼点も多く非常に勉強になった。」

実際に作られたプロトタイプ

実際に今回作られたプロトタイプについていくつかご紹介します。

まず、1つ目のチームは「老老介護者に対するバランスの取れた食事のサービス」へのソリューションとして「日替わりメニューの使い切り原材料セットの訪問販売車とそれに付随するブレスレット型管理デバイス」のプロトタイプを作りました。老人役となった他チーム参加者に対しデバイスを渡し実、際に体験してもらうことで、決済や管理のしやすさなどの利点や、深掘りポイントとしてそもそも料理を老人に任せる方法で良いのか、車が来たときの音は聞こえるのか等様々な意見交換が行われました。

プロトタイプを作ることの利点として、このようにディスカッションがかなり具体的にできるということがあります。今回のMakeathonは時間もかなり短かったですが、プロトタイプを繰り返していけば実際にビジネス化可能なレベルまで議論を重ねることができるのではないでしょうか。

訪問販売車をダンボールで作った様子。モニターやPCで代用。車の高さが老人にあっているかまでディスカッションが及んだ

2つ目に紹介するチームは「学力や学歴だけでなくソフトスキルによる就職を実現するためのサービス」へのソリューションとして「指輪/ブレスレット型のデバイスで日常のバイタルを取り、そのデータを基に学生の心理状況を測定し、その日の活動と突合させることで、例えばモチベーションが上がる活動等、日々の活動を記録する」ことを考えました。

実際のアプリの画面遷移を紙芝居で表現したり、実際のロゴまで作り込んだりと細部にこだわったプロトタイプには会場からも感嘆の声が上がっていました。

短い時間の中でそれぞれの役割分担をうまく考えながら作業をした好例であり、実際チームでプロトタイプやプロダクトを作っていく際の役割分担の重要性等が感じられたのではないでしょうか。

紙芝居型の画面遷移プロトタイプとロゴ、ロゴの背景にあるリングが実際のプロダクトの感情を示す際のリングになっており、こだわりが見られた

最後にご紹介するチームは「近所の人とのアセットのシェア」へのソリューションとして「ガレージを仲介したP2Pのモノのレンタル」というサービスを考えました。実際に、キャンプ道具を貸し借りしたいというチームメンバのニーズやP2Pのダイレクトマッチングでは時間を合わせることが難しいという懸念などを十分に考慮し、このような結論となったようです。

このチームはかなり概念的なテーマに取り組みましたが、自分たちの経験や見方を活かし、うまくターゲットを絞り込むことで具体的に実現可能なサービスにしっかりと落とし込むことができたと思います。また、デジタルでの画面遷移もしっかり作られており、顔認証やQR決済など使用できるテクノロジーもしっかり考慮した良いデジタルプロトタイプでした。

ガレージでの決済画面。利便性向上のため顔認証やQRなど各種技術が取り込まれていた

サンフランシスコのMakeathonと比べても全く引けを取らないレベル

正直なところ、前回サンフランシスコでのMakeathonを視察し、HarvardやStanfordといった世界トップレベルの同世代の作るプロトタイプと比べ、日本ではどこまでできるのだろうかと開催前は懸念していました。しかしながら実際に開催してみると、「想像を上回るレベルの参加者による、非常にクオリティの高いプロトタイプ」ができました。

確かに米国の学生のほうがディスカッション等には慣れているので初速はあるのですが、その後のユーザーの視点にたった示唆の深さであったり、プロトタイプの質とスピード感、プロトタイプを作るときの工夫という観点においては今回の参加者のレベルは非常に高く、サンフランシスコの学生達と同レベルもしくはそれ以上であったと言っても過言ではありません。(このあたりについては今後また整理しようと思っています。)

これは非常に嬉しい誤算で、今回の結果を受け、日本のスタートアップのこれからはかなり明るいと強い自信を持つことができました。

次回開催に向けて

今回の開催のあと、クローズドのD4V Makeathon Alumni Facebookグループを作成しました。すでに自主的に個別の打ち上げが行われるほどのコミュニティができているため、これを更に大きくしていかない手はありません。実は今回、前回サンフランシスコで参加していたHarvard在学中の学生がたまたま来日していたので当日参加してもらったのですが、今後さらにAlumniも積極的に巻き込みながらコミュニティを大きくしていければと、考えています。

また、実は今回の開催前に、運営を手伝いたいとボランティアとして名乗りを上げてくださった方がいらっしゃいました。当日の都合がつかず実現とはなりませんでしたが、今後このように運営に携わっていただける方も増やしていければと思っておりますので、ご興味があればぜひご連絡ください!

D4Vでは今回のフィードバックを踏まえ、次回の開催についてすでにディスカッションを始めています。更に進化したD4V Makeathonを実施できると思いますので、今回参加できなかった方もぜひ次回ご参加ください!

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