Service Nervous System (SNS) は、オンチェーン Dapps にトークン型ガバナンスをどのようにもたらすか?(日本語訳)

tokuryoo
DfinityJP
Published in
11 min readMar 8, 2022

Medium の DFINITY 公式の記事 How the Service Nervous System (SNS) Will Bring Tokenized Governance to On-Chain Dapps(2021/10/9) の日本語訳です。

Internet Computer が提案する SNS 機能は、開発者が dapp を開発する際に、トークンベースの非中央集権型ガバナンスシステムを構築することを可能にします。

By Lara Schmid, Researcher | DFINITY

Internet Computer のコミュニティは、DFINITY Foundation が 開発者 及び ステークホルダー と協力して提案している技術的なアップグレードのリストであるブロックチェーンの機能とアップグレードロードマップを積極的に形作っています。これらの提案された機能のうちの1つである SNS(service nervous system)は、起業家と開発者が Dapps 用に非中央集権型でトークン型のガバナンスシステムを構築することを可能にする機能として提案されています。

SNS は、Internet Computer のブロックチェーンを完全にオープン、パーミッションレス、非中央集権的に制御する自律的なトークン型ガバナンスシステムである Network Nervous System (NNS) から派生したものです。NNS は、世界中の誰もがネットワークに提案を行い、投票することができ、採択されれば、その提案は直ちに自動的に実行され、ネットワークはリアルタイムに適応し、進化していくことが可能です。

NNS とは対照的に、SNS は “サービス “とも呼ばれる1つの dapp をコントロールするだけです。世界中の誰もが ICP ユーティリティトークンを投票ニューロンにステーキングすることで NNS のガバナンスに参加できるように、SNS のガバナンスにも誰もが参加でき、関連する dapp の運営と進化を自律的に制御することになります。

Andreessen Horowitz のジェネラルパートナーである Chris Dixon は、「たとえば、Twitterのように、ロジックとデータが企業によってコントロールされるのではなく、コードが自律的かつ検証可能な形で実行されるプログラムによって制御されるソーシャルネットワークを構築することを想像してみてください。」と書いたことがあります。「その所有権とコントロールは、トークン化され、ユーザーと開発者に配布される可能性さえあるのです。」

注:この機能はまだ、具体的な設計とエンジニアリング作業を開始するための正式なモーションプロポーザルが提示される前の、設計とコミュニティでの議論の段階にあります。開発者フォーラムで SNS の会話に参加しましょう。

SNS の優位性

Internet Computer 上でアプリとサービスを立ち上げる起業家や開発者は、dapp を実行するための十分な cycle 、追加機能の開発、需要に応じたスケールアップを可能にするリソース、を集めるために SNS の導入を検討できます。SNS は、トークンベースのガバナンスを促進し、dapp にユーザーを引き付け、ネットワーク効果によってアプリのリーチを拡大できます。

SNSを採用し、アプリのコントロールを非中央集権型でトークン型のガバナンスに転換することで、例えば、誰でも cycle と引き換えに、例えば dapp 特有の「SNS ガバナンストークン」を取得することが可能になります。また、アーリーアダプターとアクティブユーザーに SNS トークンを配布することで、アプリの成長を促進し、アプリの方向性や成功にステーキングしてもらうことも可能になります。ガバナンスの安定化のため、ガバナンスの決定に参加したい人は、(NNS のように)トークンの一部を投票ニューロンにロックし、dapp の長期的な利益のために行動するようインセンティブを与える必要があるのです。

このオープンなガバナンスモデルのもう一つの重要な原則は、ユーザーが共同所有に参加する以外に、ユーザーは、アプリの開発者が単純にサービスを停止したり、機能を削除したり、望ましくない方法でコードを更新したりできないようにできることです。これにより、単一の団体または中央集権的な組織がアプリを制御し、その将来を決定することがないようにできます。同時に、SNS コミュニティの要望、フィードバック、投票に直接対応する提案を通じて、dapp が進化・アップグレードすることを可能にします。これは、より大きな Internet Computer のコミュニティが NNS を使用してブロックチェーンを管理し、継続的にアップグレードするのと同じです。

だからこそ、トークン型によって dapp をコントロールするパーミッションレスのガバナンスシステムを提供することは、非常に強力な機能なのです。あるdapp の開発者、ユーザー、ステークホルダー が、どのような機能がベストかを共同で判断し、あらゆる提案の採択または却下を決定できます。また、SNS は dapp トークン型の新しいアプリケーションを促進し、SNS のコードの一部を再利用して構築されるかもしれない他の新しいガバナンスのための基盤を提供します。その展開は興味深いものになるでしょう。

NNS との関係

Internet Computer を制御する NNS は1つしかありませんが、service network system(SNS)は無数に存在し、すべての dapp は SNS を活用して自身をコントロールできます。特に、SNS を経由して dapp を統治するためのユーティリティトークンを作成する機能は、NNS により簡単にアウト・オブ・ザ・ボックスで提供され、作成・更新できるので、開発者が特別な努力をせずとも実装できます。つまり、すべての SNS とそれに関連するトークンは NNS の拡張であり、デファクトスタンダードとなる実装が共有され、特定の dapp の SNS のコードとアップグレードは Internet Computer のコミュニティによって吟味されることになります。

NNSと同様、SNS には、ガバナンスキャニスターと台帳キャニスターがあります。ガバナンスキャニスターは、ステークされたトークンで構成される投票ニューロンと、ニューロン保有者なら誰でも提案できる技術の進化に関する提案を、保管します。台帳キャニスターは、ユーティリティトークンのアカウントとトランザクションを保管します。

NNS は dapp の SNS をアップグレードしますが、いくつかのガバナンスパラメータは SNS のガバナンス自体で変更可能です。例えば、dapp のコミュニティが SNS を通じて提案の投票期間をより長くしたり、ガバナンスの手数料を変更したりできるかもしれません。

とてもよく似ていますが、SNS と NNS の大きな違いは、SNS のキャニスターは cycle を燃焼することです。

SNS の初期化

開発者は、自分の dapp に SNS を割り当て、dapp のガバナンスを非中央集権化させたい旨を NNS に提案できます。そのためには、SNS を割り当てるべき dapp を識別する提案と、開発者が希望する SNS トークンの名称を提出することになります。その後、NNS 内に ICP トークンをステーキングした NNS ニューロンホルダーは、その提案に投票します。採択された場合、NNS は直ちに以下のように SNS を dapp に割り当てます。

まず、NNS は SNS を NNS レジストリに登録します。NNS レジストリには、すべての SNS とその SNS に割り当てられた Dapps、それに対応するSNSトークン名が登録されます。このとき、SNS 台帳は凍結され、トランザクションは発生しません。この時点で、開発者は dapp をコントロールし続け、引き続きアップグレードできます。例えば、セキュリティの修正が必要な場合などです。次のステップでは、dapp のガバナンストークンとニューロンを異なるプリンシパルに割り当てて配布し、dapp のガバナンスを効果的に非中央集権化させることになります。これが完了すると、SNS が dapp をコントロールするようになります。

最初に、SNS 経由で特定の dapp に対して 10 億のガバナンストークンが用意される予定です。最初のトークン配布は、例えば、以下のように配分されるでしょう。トークンの 25% は、dapp の開発者に配られます。さらに 35% は SNS をコントロールするアカウントに付与され、SNS の提案を通じて dapp のコミュニティの希望に沿って使用されます。例えば、dapp 内でユーザーに配布し、エンゲージメントを高めるなどです。残りの 40% は、オープンかつパーミッションレスのオークション(例えば、cycle と交換など)を通じて一般に配布できます。この構想はまだ初期段階にあり、最終的にはすべての入札に対して、dapp のガバナンストークンごとの単一の清算価格が設定されます。

SNS が NNS の管理下で運営され、Internet Computer のブロックチェーンに完全に組み込まれることで、トークン化とオークションが容易になります。SNS はオークションの収益を直接保持します。例えば、SNS のガバナンスキャニスターはオークションからの cycle を保管し、それを演算に使用できます。

ガバナンスを強化するために、SNS を通じて開発者とオークション参加者に配布される初期 dapp トークンの 90% をロックされたニューロンとして配布することも可能です。これにより、SNS が非中央集権型であること、投票者が最初からガバナンスに投資していること、が証明されます。残りの 10% は流動性のあるトークンにできます。

初期のトークンの割り当てが完了すると、SNS の台帳がアンロックされ、SNS がアプリをコントロールするようになります。これで、ネイティブガバナンスシステムとニューロンホルダーによって完全にコントロールされた dapp が完成しました。今後の dapp のアップデートは、すべてコミュニティの判断で行われるようになります。SNS の投票者は、SNS が保有するトークンをアーリーアダプターまたは dapp の最もアクティブなユーザーに渡すか、開発者への機能提供やバグ報償金に使うか、その他の目的に使うかを決定できます。また、SNS には初期 cycle が用意されており、SNS または dapp キャニスターの燃料として使用でき、成長に必要なリソースを提供できます。

先にある道のり

非中央集権型ガバナンスとトークン化により、開発者は相互運用可能な dapp とブロックチェーンベースのサービスのための新しい革新的なモデルを解放するための強力な手段を得ることができます。この SNS 機能は Internet Computer のロードマップの主要なコンポーネントであり、コミュニティ全体が開発者フォーラムでの議論に参加し、質問・提案することを歓迎します。

この機能を実現するためには、既存の NNS のキャニスターのコードを SNS に再利用するための汎用化だけではなく、新しい要素の設計と実装も必要になります。例えば、SNS 経由で dapp のガバナンストークンを配布する際に言及されるオークションプロセスは、NNS にはまだ存在しない機能です。SNS の初期化プロセスについても、現在の NNS を変更する必要があります。この機能に関する作業の全ステージは、コミュニティの議論とレビューの対象になります。

SNS のガバナンス機構は、全てをオンチェーンで構築する開発者のためのテックエコノミーへのアクセスを民主化するのに役立ち、Web ベースのサービスの本質を再定義するトークン型 dapp を自力で立ち上げる手段を提供します。
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