ヘルスケアにおけるブロックチェーン: ペインポイントから得られるもの

現在、医療は非常にデータ中心の業界です。新薬の開発、医療記録の管理、どの治療法が効果的かの分析など、全てデータを中心に行なわれます。

そこで疑問に浮かぶことは、そのデータの出どころはどこなのか?どこで管理されているのか?データを使用したい人々は、どのようにデータを取り扱っているのか?

本記事は、こちらの録画をもとに作成されました

健康データの所在?

医療研究機関、病院、医師がX線撮影をした際の記録などからデータが取得されます。時には、身につけているウェアラブル端末が記録している脈拍数など、自身で生成している情報の可能性もあります。その情報は心臓専門医が何か異常な動きがないか翌日に確認ができる携帯ECGにもなり得ます。また、健康に関する質問に答えることで、自分でデータを報告することもできます。したがって、データはさまざまな情報源から取得され、現在は多くの場所で保管されています。最も一般的なのは、病院または医師の患者の健康記録システムです。

データ形式は、多くの場合、その場所固有なものであるため、ある機関から別の機関にデータを移動させる場合、相互性が無いためにデータ移行ができない可能性も存在します。データの保存には、さまざまな標準が使用されます。10種類以上の基準があります。データ標準の例としては、ファイル名、ファイルをエンコードする方法、患者がどのような状態または疾患を持っているか、医療処置を決める方法などがあります。多くの標準は互換性がありません。したがって、あるシステムがデータをある形式で保存し、別の形式に転送する場合、通常、ある形式から別の形式に変換するソフトウェアを作成する必要があります。ご想像のとおり、このような手順には多くの問題が存在します。技術的な問題とは別に、健康データの共有に関する規制上および法律上の問題もたくさんあります。

素早いデータへのアクセスは迅速な治療を意味する

データの共有に関しては断片化され、規制が多いのが現実です。健康データを簡単に共有できれば実現できることを想像してみてください。製薬会社や医療研究会社が、多くの患者や多くのがん患者のデータにアクセスできたらどんな事ができるでしょうか。データマイニングを実行して、どの治療法が他の治療法よりも効果的かを判断することができます。まれな癌であれば、製薬会社が十分な数の患者を見つけてデータを取得するのは非常に複雑で高いコストがかかります。そして、様々な医療機関と個別に連携する必要があります。また、データが適切な形式であることを確認し、すべての共有契約を確認する必要があります。このプロセスがいかに非効率的であるかは、言うまでもありません。インセンティブが無しに、システム間の相互性を向上させる取り組みはなかなか起きません。その結果、珍しい疾患に対する多くの薬の開発は高価であり、開発に非常に長い時間がかかります。これが原因で治療研究がされない病気をOrphan Diseases(患者数がきわめて少なく,製薬企業が関心を示さないような疾患のこと)と呼ぶようになりました。

医療データのもう1つの問題は、多くの場合、紙面上以外に存在しないことです。そのため、共有するのがはるかに難しくなります。保管方法、相互運用性、およびデータの共有を困難にするプライバシーの問題については、すでに説明しました。

では、私たちに何ができるでしょうか?なぜ私たちはブロックチェーンをこの状況から抜け出す方法として見ていたのでしょうか?

ペインポイントから得られるもの

ヘルス業界でのブロックチェーン

ブロックチェーン上のすべてのトランザクションは、アカウントの所有者によって送信されたメッセージであり、半匿名アイデンティティです。したがって、患者が所有者であるアイデンティティのシステムを作ることができます。患者は自発的に特定の医療機関とデータを共有します。ブロックチェーンのユーザーのアイデンティティとアクセス制御の側面により、患者が自分の健康データを制御できることが容易になります。

プライベートブロックチェーンやデータベースで同じことをするとどうなるでしょうか?

患者はチェーンオーナー又は、データベース管理者に従うしかありません。そのため、インフラを所有する単一の事業者がデータを検閲したり、データの使用と適用を制限したりすると、そのブロックチェーンへの信頼が低下します。パブリックであることからずれてしまうため、別の摩擦点をもたらします。

したがって、オープンで分散型のブロックチェーンのインフラを使うことは、現在のやり方に代わる強力な代替手段です。インフラは、病院、政府、およびデータベースへのアクセスを許可または拒否する権利または特権を持つ人によって一元化され、制御されます。ブロックチェーンでは、データベースも権限もありません。患者がやるべきことは、アイデンティティを確立することだけで、データを取引して移動する権利を持つ事ができます。

dHealth NetworkのCTOであるVega Paithankar氏は、ヘルスケアでブロックチェーンを使用することの利点とリスクをStartup Grindに説明しました。

健康データはどのように保護されているのか?

研究者が要求できる健康データには 2 種類あります。1つは、患者がどのように感じているか、または痛みを感じる機会がいくつあったかなどの質問に答えるときの自己報告データです。もう1つは、医療従事者のデータベースに保存されている検証済みデータです。患者は医療従事者にデータを共有する同意を提供します。したがって、アプリ自体またはアプリの所有者管理者 (この場合は dHealth ファウンデーション) は、データに触れることはありません。データは、患者から医療機関または研究者に直接送信されます。医療機関は、多くの場合、患者の健康状態を監視するためのデータを要求する側になります。

dHealthは、ヘルスケア専用のブロックチェーンを構築したファウンデーションであり、すでにプロジェクトを開発しています。そのため、Vegaは、「dHealthでは、プライバシーの問題を自分たちで解決しないようにしています。代わりに、患者にプライバシーを管理させ、そのデータを要求する人の身元を確認するためのツールを提供するようにしています。」と語っています。

ユーザーのペイン・ポイント

dHealthから始まったプロジェクトで、Centivaアプリがあります。呼吸器疾患の患者、特に結核を監視するのに役立ち、専門家や研究者にデータを提供します。Vegaは、多くの調査に反復的な情報が含まれている可能性があることに気付きました。あなたが結核患者であれば、毎月の調査に回答する必要があり、住んでいる場所、年齢など、同じ質問を聞かれる場合もあります。したがって、患者が切り返し聞かれる質の回答データを保存する何らかの方法があれば、より簡単かもしれません。しかし、繰り返しになりますが、最大の関心事はデータのプライバシーとセキュリティであり、これはペインポイントであるため、アプリ側が管理する場所に保持すべきではありません。しかし、データの単純なユーザビリティとそれをセキュリティで保護するプロセスは常に対極にあります。一方を強めるとき、もう一方は弱くなるかもしれません。

もう一つの問題点は、ほとんどの患者が平均して高齢者である傾向です。高齢者は、テクノロジー、特にデータプライバシーに関して疎い傾向にあります。また、患者が病院に足を運び、健康データのコピーを受け取った場合、それがどう機能するかを確認しもできていません。Vegaは、これが独自の課題を生み出すと考えています。患者は、情報開示のリクエストを受け取ったときに何を共有すべきかの判断を何を基準にしたらいいのでしょうか?

したがって、テクノロジーとデータプライバシーに関する認識と親しみやすさは大きな問題になります。しかし、従来のデータ権利方法も特段便利ではなく、かかりつけ医以外の別の専門家に診察してもらう必要がある場合、データ/情報の移行が難しいのが現状です。たとえば、2番目の専門家は、最初の医師に電話して、データがどのような形式で保管され、どのように転送されるかを把握する必要があります。

リスクと制限

明らかなリスクは、患者やユーザーが、誰が自分のデータを共有するように求めているのかわからない可能性があることです。もう一つは、私たち全員に起こること:パスワードを失うことです。患者の身元を制御するパスワード、つまり署名者のアプリ パスワードを失うことを想像してみてください。これらは深刻な問題であるため、私たちは最善の管理方法を見つけ出すプロセスにあります。

Vegaは、最も重要な制限は、ヘルスケア業界がこの新しいテクノロジーをどのように受け入れるかであると考えています。彼らはブロックチェーンに慣れていないので、「このブロックチェーンストレージを使って、全ての患者の健康記録してください。」と急には言えないでしょう。 ブロックチェーン導入はとても複雑な場合があります。

それでも、珍しい疾患の患者や、医療従事者や患者がデジタル技術の受け入れに寛容な市場、より受容的なコミュニティをターゲットにすることで、ブロックチェーンの新しい世界への扉をゆっくりと開くことを期待しています。

まとめ

ヘルスケアにブロックチェーンを実装するのは多少の困難がありますが、新しい技術であることを考えると、スマートフォンの普及があることから簡単になり、人々は遅かれ早かれ新しい技術に慣れる事が予想されます。それに加えて、現在利用可能なものに代わる最良の選択肢であり、世界のヘルス業界に大きな力を与えるでしょう。

dHealth は、医療業界向けに構築されたレイヤー1プロトコルです。私たちは、Web 2 の世界の企業間のギャップを Web 3 の世界の分散型 Medverse で埋めることによって、貴重な健康データへのアクセスと交換をトークン化しています。

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