UniswapV3解説│double jump.tokyo
本記事では、Teal Swap含め、さまざまなDEXで利用されているUniswapV3型の流動性提供について説明します。流動性提供の仕組みや注意点などの基礎知識を身につけておきましょう。
本記事は、DEXや流動性提供の仕組みを解説することを目的としており、流動性提供や投資を推奨するものではありません。
サマリー
- 流動性提供とは、DEXにトークンペアを預けること。V3は価格レンジを指定する。
- 流動性が増えることで、DEXのユーザーは取引時に不利なレートになりにくくなる。
- メリット:取引手数料の一部やキャンペーン特典が受け取れる。
- デメリット:預けたトークンペアは価格変動によって内訳の比率が変化し、流動性提供を解除した時に預けた枚数と異なる枚数が戻ってくる。価格が上がったトークンの枚数が減り、価格が下がったトークンの枚数が増える仕組みのため、これによって損をする場合がある。
流動性とは?
DEXは一般的な取引所での板取引とは異なり、直接的な取引相手がいません。DEXは「いつでも取引可能」「価格が自動的に決まる」といった特徴を持っています。
ここで、DEXにおける流動性とは、トークンを取引するための準備金のことを指します。例えば、ETHとUSDCを取引するためには、ETH-USDCペアの流動性が必要となります。DEXに対して流動性となるトークンペアを預けることを流動性提供といいます。取引には手数料がかかり、手数料の一部は流動性提供者に還元され、流動性のシェアに応じて手数料が配分されます。
DEXユーザー目線では、流動性が十分にあると取引の際に不利なレートになりにくくなります。実際に流動性の少ない取引と多い取引を比較してみましょう。
流動性が少ないプールに対して、1万ドル相当のUSDCとUSDTをswapしようとすると、レートが大幅に悪化して6463ドル相当のUSDTしか受け取れません。一方で、流動性が多いプールでは、9328ドル相当のOASを受け取ることができます。
このように、流動性が増えることでスムーズな取引ができるようになるため、キャンペーンなどを行って流動性提供を推奨する施策が行われることがあります。
流動性提供(V3)とは?
流動性となるトークンペアをDEXに預けることを流動性提供といいます。
流動性提供には大きく分けてUniswapV2型とV3型があり、V2は全価格レンジに対してトークンペアを提供し、V3は価格レンジを指定してトークンペアを提供します。
V2とV3で同じ金額の流動性提供を行なった場合、V3の方が効率的に流動性を増やすことができます。少しわかりにくいので、図を用いて説明していきます。
V3の流動性提供をする際、上図のような価格と流動性のグラフがよくでてきます。提供されている資金を流動性x価格レンジの面積と考えるとわかりやすいです。価格レンジを狭くするほど、その価格レンジでの流動性が高くなり、反対に広くするほど流動性を薄く提供することになります。V2は全価格レンジに対して提供するので、最も薄く広く提供するイメージです。
価格レンジを絞って流動性提供をしている分、その価格レンジでの流動性はV2よりも多くなります。その結果、取引が行われた時のレート変化が小さくなり、不利なレートになりにくくなります。
流動性提供の注意点
預けた時と同じ枚数のトークンペアが戻ってくるわけではない
流動性提供では、ステーキングのように預けたトークンがそのまま戻ってくるわけではありません。
流動性として預けたトークンペアは、取引によってその中身の比率が変わっていきます。例えば、最初にETHとUSDCを50:50の比率で預けた後、USDCでETHがたくさん買われると、流動性の在庫としてはUSDCが増えてETHが減ることになります。その状態で流動性提供を解除すると、預けた時よりもETHが減ってUSDCが増えた状態で戻ってくることになります。
インパーマネントロス
流動性の中身は、価格の上がったトークンの枚数は減り、価格の下がったトークンの枚数が増えます。これによって、流動性提供をしなかった場合と比べて損失が発生する場合があります。これをインパーマネントロスといいます。
インパーマネントロスは、流動性提供時と解除時で価格が異なれば必ず発生するため、インパーマネントロス以上の収益を手数料やキャンペーンで得られる見込みがあるかどうかが、流動性提供の判断ポイントになります。
価格変動のイメージと照らし合わせるとインパーマネントロスを理解しやすいです。
トークンペアの価格比率が預けた時よりも乖離するほどインパーマネントロスは大きくなります。相対的に値下がりした方のトークンを多く押し付けられることになるためです。
取引がされながら、流動性解除時に価格比率が預けた時と大きく変わっていなければ、インパーマネントロスは少なく、手数料収入も得られることになります。流動性提供の成功パターンです。
価格レンジの設定について
V3における注意点として、価格レンジを外れてしまうと取引手数料を受け取ることができないことが挙げられます。(キャンペーンによっては、取引手数料だけでなく特典も得られない場合もありますのでよく確認してください。)
また、V3では価格レンジと現在の価格に応じて、預けてあるトークンペアの比率が100%:0%から0%:100%まで変化します。価格レンジを外れてトークンが値上がりしていった場合、値上がりしていない方のトークンが100%になります。反対に価格レンジを外れてトークンが値下がりしていった場合、値下がりしている方のトークンが100%になります。
この仕組みを理解した上で価格レンジを設定することが大切です。
まとめ
以上、UniswapV3型の流動性提供について説明しました。
流動性提供はDEXにおいて重要な役割を果たしますが、その仕組みやリスクを十分に理解することが不可欠です。V3型の流動性提供は価格レンジを指定する点で効率的に流動性を増やすことができ、取引におけるレート変動を抑える効果があります。
しかし、インパーマネントロスや価格レンジの設定など、注意すべき点も多く存在します。これらのリスクとメリットを十分に考慮したうえで流動性提供を行うことが大切です。