社会と繋がった生徒主体の学習の実現へ ~ DQが果たす役割とは~

牧野奏子
#DQEveryChild in JAPAN
10 min readDec 25, 2018
筆者:DQJapan 牧野奏子(慶應義塾大学4年)

12/12・12/13の二日間に渡り、町田市の和光中学校にて中学1年生全クラスでDQテストを実施致しました。和光中学校はICTインフラが非常に充実しており、テクノロジーに知見のある先生方が先進的な情報の授業を行なっている学校です。

そこで今回、このような和光中学校のテクノロジー分野を牽引されており、DQテストも引き受けてくださった小池則行先生にインタビューさせていただきました。

*DQ(デジタルインテリジェンス)とは

情報リテラシーと情報モラルにおける 新グローバルスタンダードであり、 OECDが策定するEducation 2030に含まれます。

インタビュー(和光中学校・小池先生)

【小池則行 Noriyuki Koike 】

和光中学校・和光高校で生徒にテクノロジーを教えながら、システム管理者、ウェブデザイナーとしても従事。 テクノロジーは非常に強力なツールであると考えており、学生のより効果的な学習のためにテクノロジーを導入することに取り組んでいる。GEG新宿(Google Educator Group)リーダーも務める。

*DQテストにご協力いただけた理由、賛同いただけた理由

— — どのようなきっかけでDQをお知りになったのでしょうか。

小池:2016年の12月にDQアンバサダーの石山さんがGEG新宿に加入し、DQを日本でも普及させたいと話していました。記事も読んだのですが、まさに私が課題を感じていた点とシンクロしたんですよね。

— — 小池先生が持たれている課題意識とはどういったものでしょう。

小池:今スマホの普及率が中学生のユーザーで7~8割くらい、高校生はほぼ100%です。今やスマホは日常のツールとしてありますが、一方で扱い方に関する教育が何もされていないことが課題だと感じていました。学習するための効果的なコンテンツが日本にあるかというと残念ながらほとんどありません。欧米の方がリテラシー教育への意識が高く、企業もタイアップし、教育コンテンツが積極的に作られています。

— — そのような中、日本語にもなっていたDQテストに取り組もうと思われたわけですね。

小池:そうですね。すでに授業内容は決まっていたのですが、学校に出向いてサポートもしてくれるとのことだったので、どうにか1時間確保して実施することにしたんです。生徒自身にどの程度知識があって、適切なマナーを持ってネット上でのふるまいができているのかとかも知りたいなと思って。実際にDQテストを実施してみてこれはいいものだと、デジタル世界との関わり方を実際に測定できるって大事だと思いました。

— — これまでの日本の情報リテラシー教育をどう思いますか?

小池:日本の情報リテラシーの授業は、偉い人がきてこれはやっちゃだめだというような一方的な講義をしています。これは生徒を怖がらせるだけで、何の対策にもなっていないと思います。自分自身でどういう振る舞いがリスクを持っていて、どういう振る舞いがオンライン上で気持ちのよいものなのかを身につけていくことがこれから絶対必要じゃないですか。これは僕らもfacebookとかSNS使いながら日々実感していることで、大人も必要なことだと思います。子供達はこれから社会に出ていく立場であるから、今勉強しておくことは非常に価値のあることだと、だから今回DQテストをやってみようと思いました。

和光中学校にてDQテスト実施時の様子

*日本でDQを拡大するために必要なこと

— — 今後日本でDQを拡大するためにはどのようなことがキーになると思いますか。

小池:テクノロジーに可能性を感じている層にアプローチすることは大事かと思いますね。GoogleとかMicrosoftとかもやっていますが、今の日本の教育に疑問を感じ、そこを良い方向に変えていこうと活動しているグループがたくさんあります。これまではそれぞれが局所的にやっていたのですが、現在はそれがオンライン上でつながりつつあるっていうのが今実感しているところです。

一つのグループで発足した動きが別のグループに関わっていくような形で協働しながら、DQが日本でブラッシュアップされて参加しやすいものになって拡大していくのがいいのかなと。最初はバイラルみたいな形で実施していき、ある程度の段階で有力者を巻き込めるとそこでまた膨らむんじゃないかなと思いますね。

— — 今回の和光中学校でのDQテスト導入はかなりのスピード感で決まりましたね。

小池:そうなんです。今回のDQテスト実施は、教育の意義やあるべきものを目指しながら行動を起こしている人達の関係性が以前からあって、そこから今回の話が飛んできて、自分がやっていることとシンクロして、これだけ早く動けるっていう。これこそ現代のやり方じゃんって思ったんですよ。

11月20日頃に、石山さんがSNSでDQテストの告知をしていて、次の日の朝にふと、明日の授業きてくれるんだったらやりたいなと思ったんですね。それで石山さんに「明日の授業でやりたいんだけど来れる?」って言ったら、「明日行きます!」って返信が来て、1日で決まったんです。そして次の日、石山さん、牧野さん、高橋さんが学校にきて、生徒に説明してDQテストを実施しました。

このスピード感は今までの学校だったら絶対にありえない。ソーシャルを使っているからこういうことができるし、以前からの関係性があってそこから話がでてきてっていうこういうことが本当に起こりうるんだってことを実感しました。

— — 私も石山から明日実施すると聞いてびっくりしました。

小池:このスピード感って言葉に表せないほど、すごいとしか言いようがありません。今日の明日でお願いしますで実施できるスピード感、このスピード感を持ちながら、タイムリーな形で学習を展開できるっていうすごさ。これは草の根で繋がっているから有り得るんだろうなって。これトップダウンだったら実施までにめちゃめちゃ時間かかっていたと思いますよ。

— — やっぱり今の時代現場から変えていくしかないですよね。

小池:そうですね。いつも生徒に、面白い授業をやりたいから真剣に授業準備をしてるって言っているんです。今回みたいなことがどんどん起きると、生徒たちも小池がいつも言っていることは嘘じゃないなって思うと思うんです。このようなものをいかにうまく使えるかが今後の人生に大きく関わってくるってことも、授業で再三再四言ってるし。子供達はLINEとか自分の身近なところでのコネクションはあるけど、対外的な社会人としてのコネクションはまだまだありません。勉強も学校の中で完結することじゃなくて、外につながっているものの方がいいと思っています。それにその方が生徒自身も楽しいと思いますね。

— — 今回のDQも学校内で完結するものではなく、外の世界と繋がった学習ですね。

小池:DQはまさにそうですよね。他の学校と比べて世界と比べてどうなんだっていう、グローバルな思考というか。地球規模で何が起きていて、自分たちはどうなんだって考えるきっかけに絶対なります。それをただ単に教師が教えるのと、実際に自分でテストを受けて世界と比べてどうってのが出るって全然違うと思うんです。

そういう意味では今回みたいにDQの実証段階に参加できるのは、すごくいいなと。だってこれからどうなるかわからないことをやらないと、面白くないですよね!完成されたものを用意されてこれどうですかって言われても入る余地なくて面白くない。これも生徒にもいつも言ってるんです。知らないことを自分で掘っていく方が楽しいよって。

和光中学校でDQテストを実施させていただいた際、生徒からの質問が非常に多く、設問の意図を解釈しながら真剣に取り組んでいる姿が印象的でした。テスト後に「普段考えないことを考えられた貴重な機会だった」と感想を述べてくれた生徒もいました。このように自分のオンライン上の行動やデジタルデバイスの利用状況を振り返る機会は普段なかなかないと思うので、今回のテストが意識の変化のきっかけになれば幸いです。

今回ご協力くださった小池先生、中山先生、林先生、誠にありがとうございました。

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◎DQとは(https://medium.com/blended-learning/dq-dqeverychild-cac84d7ae745?source=linkShare-e92b0c3c13fb-1538202194)
DQ(デジタルインテリジェンス)とは、個々人がデジタルライフの課題に向き合い、デジタルライフのニーズに対応するために必要な、技術的・社会的・精神的スキルの総称です。
2018年9月、WEF(世界経済フォーラム)とOECDとの共同宣言で、DQはデジタルリテラシーにおける世界基準になりました。

◎DQ Instituteとは(https://www.dqinstitute.org/)
DQ Instituteは、デジタルによる教育や文化の向上をめざす国際シンクタンクです。
世界経済フォーラムやその他多数の公共・民間組織と連携しながら、独自のオンラインプラットフォームを用いて、インターネット上のすべての子供たちがデジタルシティズンシップ教育を受けられる支援をしております。

◎DQ Worldとは(https://www.dqworld.net/)
DQ Worldは、主に8–12才の子供たちに8つのDQシティズンシップスキルを身につけるための世界最先端のオンライン学習プラットフォームです。UNESCOの国際アワードを2度受賞しており、世界で50万人以上の子供たちに利用されています。無料で利用できます。

◎日本での#DQEveryChildムーブメント(https://medium.com/dqeverychild-in-japan
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