e-Residencyの取得を検討しているなら、まず最初に読んでほしい記事

2014年12月にローンチされたe-Residency。

2018年時点で世界の登録者は40,000人を超え、日本からも約2,000人のe-Resident(電子国民)が誕生しています。安倍首相もe-Residentの1人として登録を受けていることは有名です。

一方で日本人の多くが、まだまだe-Residencyのメリットやデメリットを本当の意味で理解せず、とりあえず取得している方が多いかと思います。

今回、現地エストニア在住者の視点から、2018年現在のe-Residency事情を大解説し、取得のメリット・デメリットや、どんな人がe-Residencyを取得するべきなのか、解説していきたいと思います。

そもそもe-Residencyとは

e-Residencyは、エストニア政府の電子プラットフォームを自国民のみならず、外国人向けに開放したプログラムです。意外に思われるかもしれませんが、エストニア政府自身は、e-Residencyのために何か新しい技術を開発した訳ではありません。
自国に元々存在していた技術を、そのまま外国人に開放しただけのことなのです。ただし、この大胆な政策を取れるのもエストニア共和国の強みだと思っています。

ではe-Residencyを取得し、e-Residentになると、どんな恩恵を受けることができるのでしょうか?解説していきたいと思います。

e-Residencyでできること

法人設立

現地法人をエストニア国外から設立することができます。LeapIN1Officeなどの起業支援サービスを使用することで、20~30分で法人登記することが可能です。

口座開設

EU市場にアクセス可能なビジネス口座を開設することが可能です。ただし、一部の金融機関では、Face to Face(対面)の面談を要求することがあり、必ずしも遠隔で開設できるとは限りません。最近ではLeuPAYが選択肢として加わりました。

電子署名

エストニア政府の提供するソフトウェアで、電子署名を行うことが可能になります。契約書の締結に際して国際郵便等で書類をやり取りする必要が無くなり、ビジネスのスピードが増します。

エストニアに移住したり、ビジネスをやる人にとってはメリットが大きそうですね。ちなみに筆者はLeapINを利用し、LHVで銀行口座を開設しました。

↑e-ResidencyカードとUSBリーダー これらを用いると電子署名をすることができます

e-Residencyでできないこと

移住/ビザ取得

e-Residency制度は、あくまでもエストニア政府のデジタルプラットフォームの一部を利用できるサービスです。取得したからといって、実際に移住権やビザを取得できる訳ではありません。

電子投票

エストニアではe-IDカードで電子投票が可能ですが、e-Residentはこの限りではありません。エストニアの選挙で投票するためには、現地での永住許可を取得する必要があります。

公共交通機関の無料利用

現在エストニア国民は公共交通機関を基本的に無料ですが、e-Residentはこの限りではありません。ただ、今後プログラムのアップデートで利用できるようになる可能性もあります。

よく勘違いする人がいるのですが、e-Residencyでエストニアに移住することはできません。エストニアはEU加盟国だから、ビザの発給基準もEUに従う必要があるんです。ちなみに筆者は就業ビザ(D-Visa)を雇用主から発給してもらってます。

e-Residency取得のメリット

それではe-Residencyを取得するとどんなメリットがあるのでしょうか。整理していきましょう。

  1. 法人の設立費、維持費が安価
  2. 法人税(20%) は配当する際に発生 ※内部留保している限り課税されない
  3. 会社をリモートで経営できる
  4. 書類の電子署名、暗号化による取引の迅速化
  5. EU市場でビジネスが展開しやすくなる
  6. e-Residencyの情報が入ってきやすくなる

日本だとなんだかんだ数十万円かかってしまうところが、エストニアだと約3万円~設立することができます。やはり起業したい人へのメリットが大きそうですね。最近だとe-Residencyコミュニティという電子国民向けのコミュニティもリリースされました。

e-Residency取得のデメリット

e-Residencyの取得、そしてエストニア法人の設立に際して発生するデメリットは以下の通りです。

  1. 税申告は居住国のルールに従う必要があるため煩雑になる可能性がある
  2. エストニアの法制度に定められた申告をする必要があり、日本には無い税関係の手続きを行う必要がある(月次報告書など)
  3. 日本人がクライアントである場合、エストニアの銀行口座に国際送金してもらう必要がある
  4. 起業支援サービスを利用すると、法人維持手数料はかかる(LeapINだと最低約49EUR~/月)

エストニアの税制を理解するには、なんだかんだ時間がかかるもの。なんでもかんでも起業すればいいってものではないですね。月次の決算を行わないと、罰金が請求されるケースもあるんだとか…。

こんな人にオススメ

EU市場でビジネスを展開したい人

ど直球ですが、エストニアはEUに属している国なので、エストニアの法人さえ設立してしまえば、EU内では比較的自由にビジネスを展開することができます。日本にいながらEU圏でビジネスをストレス無くできるのは、e-Residencyの最大のメリットの一つといっても過言ではないでしょう。

今後エストニアに移住することを考えている人

あまり語られていませんが、e-Residencyの電子署名機能は、現地で住む上でほぼ必須です。筆者もアパートの賃貸契約や、雇用契約など、必要な契約は全て電子署名で締結しました。簡単に出力できる電子署名の証明書を付けると、ビザの申請等にも公式書類として提出することができるので、煩わしい書類手続きを効率化するためにも、オススメです。

企業の看板が欲しいフリーランス

日本企業の中では、「企業だったら相手にするけど、フリーランスはね~」という方もまだまだ多いもの。そんな時に、日本より手軽に起業でき、かつ会社の看板を持つことができるe-Residencyはメリットになり得ます。

飲み会のネタが欲しい人

「おれエストニアの電子国民なんだよね~。ほら、これがe-Residencyカードなんだけど~」と飲み会のネタになること間違いなし!
ただIT界隈で無いと、そもそもe-Residency制度を知らない方もいらっしゃるのでご注意を。そんな時は、この記事で学んだことをドヤ顔で披露してください。

↑外箱もハイセンス エストニアブルーが映えます

こんな人は取らないほうが良い!

英語を理解しようとしない人

厳しいことを言うようですが、英語を理解しようとしない人に、e-Residencyは難しいと思います。基本的に申請手続きなどは全部英語ですし、活用をする上でも英語が基本のプラットフォームになります。

ただし今はテクノロジーの時代。Google翻訳にかければ、大体のことは何とか理解することができます。過度に心配する必要はありません!

日本のみをターゲットにしている経営者

e-Residencyを通した起業は、EUでビジネスを行うからこそメリットがあります。
既に日本で法人をお持ちで、かつ今後も海外に進出する予定が無いのであれば、わざわざe-Residencyを取得する必要もないでしょう。

租税回避を狙っている人

e-Residencyチーム自身も発表している通り、e-Residencyは租税回避のための手段ではありません。
最近だと日本とエストニア共和国の間に二重租税の回避条約が締結されました。2019年から有効になるということで、より二国間の課税システムが明確になることが期待されています。e-Residentだからと言って必ずしもエストニアに納税義務がある/日本に納税義務が無いわけではないので、事前に税理士さんと相談することが推奨されます。

申請方法

これは改めて解説する必要はないでしょう。

e-Residency日本オフィシャルパートナーのEstlynx社や、エストニア事情に精通している千葉氏のブログが参考になると思います。

一点注意事項として、e-Residencyの引き渡しには、対面での面談が必要です。日本では東京にあるエストニア大使館で面談をすることになるのですが、急激な需要増に伴って、現在受け取りまでの時間が約3ヶ月掛かっているとのことです。早めの取得をオススメします。

裏技なのですが、e-Residencyの取得場所を東京ではなくタリンにすると、約3週間〜で受領することができます。タリンにも複数のピックアップポイントがありますが、Tammsaareであれば市街地からも比較的近く、受領しやすいです。

受け取りに際しては、よく”英語が不安”などと心配される方がいらっしゃいますが、日本人は意外と英単語を知っているので何とかなります。むしろ”Tere!”(エストニア語でこんにちはの意味)と挨拶すると、喜んでくれますよ!

今後の展開

e-Residencyチームのメンバーは、e-Residencyを「Beta版」と表現しています。

世界初の電子国民制度としてリリースされたe-Residencyは、トライアンドエラーを繰り返しながら、そのコンテンツをアップデートしていくことを方針に据えています。現在でも、金融機関との提携強化や、e-Residentにも国民と同様に公共交通機関を無料にする施策の検討などを続けているのです。 実際にe-Residencyチームが運営しているFacebookページでは、常に新しいサービスに対するディスカッションが行われており、ユーザーの声を拾い続けている様子が伺えます。

また、今後各国が電子国民制度をリリースすることも考えられます。

e-Residencyは、自国の電子行政サービスを外国人に対して提供しているだけなので、電子行政の基盤が整っている国であれば、ポリシーを変更するだけで導入が可能です。エストニアの成功体験に続くべく、現在でも世界各国が電子国民制度の導入を検討しています。第2、第3のe-Residency制度導入国家が登場するに連れて、今後競争は加速し、ユーザーにとってより魅力的な電子国民制度が誕生することが期待されます。

どちらにせよ今後、より盛り上がっていくことは間違いないでしょう。

まとめ

今回は世界的に注目が集まるe-Residencyの最新情報をまとめてみました。
e-Residency周りは頻繁にアップデートがあるので、今後も引き続き更新していこうと思います。気になる方はぜひ取得してみてください!

※このブログは、筆者のブログ “Estonia Holic!”に投稿したものを再編集・掲載したものです。エストニア在住者の視点から、現地のスタートアップ情報やe-Residencyに関する情報を発信しておりますので、ぜひ本投稿も御覧ください。

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