書籍「世界ハッカースペースガイド」

目先の利益なんか関係なしに、面白い!と思う能力さえあれば、ハッカースペースは実に楽しい場所になりうる。そして本書はそのまたとないガイドになるだろう。(解説:山形浩生)

ハッカーは集まる。ハッカーは旅をする。より豊かになるために。
僕がずっと追いかけている、「夢中になって好きなことをしている人たち」の本です。人間の興味は、なかなか一人ではキープできなくて、共有することで強くなります。夢中になって興味のあることを行い、それを共有する人たちは、どんな会社や団体、時には国家よりも大きな進化を人類にもたらします。

そこまで大げさなことにならなくても、好きなものを好きと言え、同好の士と共有できる場所は、自分が自分自身に戻り、かつ新しい刺激を受ける、ありがたい場所です。ハッカースペースはそういう場所だと思っています。

僕は海外勤務になった2014年から、世界のそういうスペースをまわってきて、それぞれのスペースの姿をこの本にまとめました。

この文章も、深圳の電気街にある、ニコ技深圳観察会SEG出張所で書いています。大きなコワーキングオフィス内に5つのデスクで島を作っている、僕たちが管理することになったハッカースペースです。いくつかのスポンサーのおかげで運営できています。

今の僕はメイカー向けに電子部品を売るスイッチサイエンスの海外ビジネス開発担当で、このスペースの管理で収入を得ているわけではありません。でも、こういうことをしているのは、僕が今の仕事をすることになったストーリーの中でとても貴重なものです。

おそらく未来には、コンピュータの進化によって「やらなければならない面倒なこと」はどんどん機械が行うようになり、人間の仕事は趣味か仕事かわからない領域になっていくでしょう。

ハッカースペースはある意味そうした未来を先取りしていると思っています。

この書籍は翔泳社のデジタルファーストというシリーズで、オンデマンドプリントと電子書籍が中心です。前著「メイカーズのエコシステム」(インプレスR&D)と似ていて、誰かが広めてくれないと人目に触れません。可能であれば感想など公開いただけると幸いです。

謝辞
執筆中、書籍の下読みで、 伊藤亜聖さま 井上太一さま 加藤航さま 鈴木涼太さま山本遼さま 湯村翼さまにそれぞれコメントや間違いのご指摘などいただきました。書いていく上でとても役立ちました。ありがとうございます。

内容紹介

世界の各都市には、「ハッカースペース」と呼ばれる場所があり、
ソフトウェアやハードウェアのエンジニアを中心に、
さまざまな人が自由に訪れ、日夜活動しています。

本書は、著者が実際に訪れた世界中の全14か所のハッカースペースを、
そこに集まる個性豊かなハッカーや熱いプロジェクトとともに紹介するガイドブックです。

アクセス方法やアポイントメントの取り方など、実際に訪問するための知識はもちろん、
「パリのハッカーたちはレジスタンスの精神がある」といった、
行ってみなければわからない部分も写真付きで取り上げています。

深の注目女性ハッカーであるSexyCyborgへの赤裸々なインタビューも収録。

解説:山形浩生

【目次(抜粋)】
まえがき ハッカーは集まる。ハッカーは旅をする。より豊かになるために。

第1章 ハッカースペースってどんなところ?
・ハッカースペースはハッカーたちの集会場や作業場
・ミッチ・アルトマンの開いたノイズブリッジに見る、ハッカースペースのスタンダード
・ハッカースペースへのアポイントメント、訪問方法
・ハッカースペースパスポートを入手しよう
・ミッチ・アルトマンから皆さんへのメッセージ

第2章 アメリカのハッカースペース
・スタートアップブームに沸く多様性の街ニューヨーク

第3章 ヨーロッパのハッカースペース
・ヨーロッパのハッカースペース事情
・ネットの中立性を守れ!パリのレジスタンスハッカーたち
・誰でもバイオハッカーになれる パリのLa Paillasse
・中古の船舶を改造したアートの海賊船 ILLUTRON

第4章 アジアのハッカースペース
・政府も市民もハッカーも ハッカースペースシンガポール
・新たに燃え上がるタイのメイカームーブメントバンコクとチェンマイ
・台北の製造業がアツい ファブラボ台北、ファブラボ台南

第5章 中国のハッカースペース
・メイカーの魂を燃やし続ける柴火創客空間
・起業を強力に後押しする深圳のメイカースペース SEG+
・とある中国のハッカーSexyCyborg様インタビュー

あとがき 「会う」ことには特別な意味がある
解説 ハッカースペースの可能性(山形浩生)

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