STEM/STEAMを香港やシンガポールから学ぶべきでは?

個人ブログなのでざっくり書きなぐる。いつかもう少しきちんと考察してevidenceを揃え、どこかの媒体に書くかもしれない。

STEM/STEAMという教育の考え方がある。いま無いものを、いろいろ調べて、実際に作り上げるところまで持っていくという一連の流れを目指す教育方法だ。STEAMはScience,Technology,Engineering,Mathというそれぞれの科目なので理系科目重視でもあるし、ないものを調べてゴールを見据えて作り上げるという意味でデザイン思考とかプロジェクトベース教育とかも内包している。STEAMのAはArtで、これも作るためのチカラだ。(ここではまとめてSTEMで呼ぶ)
Makeやティンカリングとは深く関わりがあるし、プログラミング教育なども同じ文脈で語られることが多い。
もともと、MBAや法律家などを重視しすぎて何かを作るチカラが落ちたアメリカの教育システムの、特に小中学校を変えるためにオバマ政権のころから始まった。

香港、シンガポールのSTEM
PISAランキングという、OECDがやっている15歳の時の各科目理解度調査で、香港、シンガポール、上海はいつもトップを争っている。(日本も悪くない。アメリカはだいぶ下)
香港とシンガポールは、
・試験があるものすごい受験国家
・かつ、移民国家なのでみんな「自分の国の試験」だけを相手にしてない。海外の大学に行く人がすごく多い
・子供の教育にすごく時間も金も投資されている
という国で、通常の試験の成績を上げることとSTEMの両立をすごく大きいプレッシャーの中で教育関係者が行っている。
先日、メイカーフェア香港のオーガナイザー Clifford Choiに案内してもrって、香港のSTEM教育の小中学校を見てきたが、トップ校ほど「いわゆる受験勉強だけでこの先いいのかしら?」という問題点を持っているのだ。

見学したBaptist Rainbow primary school(小学校)では、 香港の公立小学校の先生方が、自分たちのSTEMクラスのためにスポンサー見つけたり企業コラボしたりと、まるでベンチャー経営者のように動いててすごかった。
この学校では午前中は試験のために知識を先生が教え、午後は生徒が主導してプロジェクトベース教育を行っていた。

インディーバイオなどを行っている香港のLok Sin Tong Yu Kan Hing中学で、「うまくいく、STEM教育プログラムの作り方」プレゼン

さらにこのビデオでプレゼンしてくれたLok Sin Tong Yu Kan Hing中学では週に4コマのSTEMコースがあり、プロジェクトベース教育、コンピューテーショナルシンキングの他、生物科学や養殖などのキャリアプランに役立っている。
何よりプレゼンがアツかった。そのアツさは深圳のメイカー達と何も変わらない。
-公立高校の先生は余裕がない
-試験対策、Whatsappで24時間メッセージが親から来る
-お金もない
-その中でも、新しい教育を子供に提供しないと未来がない。
などのメッセージは超アツいし、カブトガニの養殖などの具体的なテーマをもとに生物、化学などの知見を積み上げていくやり方、アフタースクールとパブリックなプログラムのあわせ方などもすばらしかった。
もちろん、そのアツさを楽しみながらやっているから、ラテアートプリンタみたいな遊び心もできてくる。

秀逸なのはこのスライドで、日本でも話題になるコンピューテーショナルシンキングについて、まずコミュニケーションとcollaborationから始めている。香港のコンピューテーショナルシンキングはコラボレーション, コミュニケーションに重点が置かれてて、
日本はパーソナルコンピューテーショナルシンキング、
香港ではクラウドコンピューテーショナルシンキングだと感じた。

アメリカのSTEM
STEMについて調べると言い出しっぺのアメリカの文献やレポートが多い。もちろん教育プログラムの改善は大事なことだし、新しく書かれたものは古いものよりおおむね優れている。また、アメリカの教育カリキュラム(授業での内容)はとても自由度が高く、日本ほかアジア諸国の「新しいことはやりたいが、試験の成績が下がると困る」という問題と縁が薄いため、試行錯誤するのは向いていて実際に面白い取り組みも多い。

とはいえ、もともとS,T,E,M,それぞれの科目で日本よりだいぶ下位に位置するアメリカのものだ。基礎とされるスキルもかなり低位で、日本の中学生が見たらお遊戯にみえそうなものが多い。
新しい試みで、面白いし、既存のモノより何かよさそうだけど、「ホントにこれやると子供がテクノロジーのバックグラウンドをもとにアイデアを広げて、将来ロケット飛ばしたり、テクノロジーのスタートアップしたりするようになるのかな?」と思わされる。
とはいえアメリカのSTEMには僕は詳しくないし、そちらをDISるのが主旨じゃない。言いたいのはアジアのSTEM、特に香港とシンガポールは面白いということだ。

香港とシンガポールのSTEM情報
残念ながら、Googleでざっと検索した限り、両国のSTEMに関する情報は日本語ではあまりない。

シンガポールのSTEMについては、いくつか記事に書いたし、書籍「メイカーズのエコシステム」でもかなりページを割いた。

シンガポールの、未来を作るSTEM教育
失敗を恐れるシンガポール人気質を変えるSTEM教育
シンガポールと状況が似ているマレーシア(の華人)でもSTEMは注目されていて、このような取り組みがある。
“メイカーチルドレン”を育てる「STEM教育」を政府も後押し!マレーシアのサイエンスフェスタ

国家予算の60%を教育に書けているというタイでも面白い取り組みがありそうで、2013年ごろからSTEMに関する情報が英語でもでてきている。もちろん深圳でも技術教育、プロジェクトベース教育についてはいくつも面白い動きがある。
来年の1月にメイカーフェアバンコクに行くので、東南アジアのSTEMについては引き続き追いかけていきたい。

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