これでわかる。2015年、キュレーションメディアの躍進とその背景をがっつり解説。

Jun Ito
edism -エディズム-
8 min readDec 26, 2015

VOYAGE GROUPのメディア担当者がメディアについて書き綴るメディア『edism』にようこそ。コンテンツメディア事業本部の伊藤です。

普段の業務ではUI・UXの改善やSEOをメインに担当しています。
edismでは(ほぼ)毎週金曜更新を予定していますので、お楽しみに。
普段の仕事の内容上、データ分析・解析系の話が多くなると思います。

初回にあたる今回は、2015年ノリにノッていたキュレーションメディアの躍進の要因について書いていければと思います。

2015年も各社好調だったキュレーションメディア

2014年ごろからやたら聞くようになったキュレーションメディアという言葉ですが、振り返ってみると引き続き各社好調のうちに2015年を終えようとしています。

※Gunosy, SmartNewsなどの、他サービスの記事を集めてきて自プラットフォーム内に掲載するサービスもキュレーションメディアと呼ぶことがありますが、今回は自前で記事を作成し、自前ドメインにおいているサービスを考察対象にしています。

※SimilarWeb Proのデータより筆者作成。

上記グラフの数値は、各種キュレーションメディアのデスクトップの月間セッション数(述べ訪問回数)です。

各メディアかなりの勢いで伸びていることが理解いただけますでしょうか。

(ちなみに、各サービス、スマホからのアクセスが90%〜95%くらいを占めているので、サービス全体のセッション数はここの数値の約10〜20倍くらいになると思います。さらにPVとしては、セッションあたりPVをかけて、さらにその2〜3倍というところでしょうか。

またアプリの数値も加味できていないので、実態はさらに大きくなると思います。4meeeさんやLocariさんなど、かなりアプリにトラフィック比率が寄っていると思われるメディアもあるので、このグラフで媒体同士の大きさを比較するのは危険かと思われます。予防線デス。)

キュレーションメディアの躍進の背景は?

今回は、「なぜキュレーションメディアがたくさん生まれ、短期間に成長できたのか」について解説を加えていきたいと思います!

まず前提として、突きつめると記事メディアが新規に読者を獲得する流入経路というのは、以下の3つに分けられます。

  • 検索流入
  • ソーシャル流入
  • リファラル(参照)流入

結論からいうと、キュレーションメディアの躍進は、これら3領域で、以下の様な潮流がうまく絡みあった結果起きた事象だと思います。

(1)検索流入:NAVERまとめモデルという、神がかったサービス形態の発明

第1に、キュレーションメディアの原点であるNAVERまとめについて。

今のスタイルのキュレーションメディアの元祖といえばNAVERまとめ。驚異の月間30億PVを誇る、押しも押されもせぬ巨大サービスです。

今回は説明を省略しますが、ユーザーに大量にコンテンツを作成してもらい、それをシステムの工夫で検索エンジンに理解しやすいよう整理するというこのNAVERまとめのスタイルは、以下の2点において「発明」と呼んでも過言ではないくらい優れたシステムです。

  • 訓練されたライターでなくてもコンテンツを生産することができる
  • SEOの知識の無いライターの記事でも大量の検索流入を稼げる

いやー、エポックメイキングですね。

語弊を恐れず言ってしまえば、この「NAVERモデル」をバーティカル(狭い領域)に応用したのが、今のmeryやiemoなどのキュレーションメディアなわけです。

食べログ、価格コムなどのようなわかりやすいデータベース型ではない、読み物型のコンテンツで検索流入を集められるこの方式の発明が、キュレーションメディア隆盛の一つの源流になっていることは間違いないでしょう。

※NAVERのシステムがいかにうまくできているかは、また別の機会に書きます。

(2)ソーシャル流入:SNSの普及とバイラルメディアの隆盛

第2に、SNSの普及。

2014年ごろから「バイラルメディア」という言葉がそれこそバズワード的に流行りだし、いろいろなメディアが興っては消えていきました。

バイラルメディアと聞くと「人のコンテンツをパクってPVを稼ぐとは何事だ!ぷんすか!」とこみ上げる怒りを覚える方も多いかと思いますし、実際にそういうメディアもたくさんありました。(というか正直今もあります。)

ただし、「バイラルメディアとはそういうものだ」というよりは「そういうバイラルメディアもある」という言い方のほうが正確です。バイラルメディアの本質は「バズ流入」をメインに据える形でメディアとして十分なトラフィックを得られることにあります。

現に米BuzzFeedなどは、拡散の際のユーザー属性や感情表現を分析することで、バズ記事を作り出す再現度を高めることに成功しているようです。(このあたりもゆくゆく記事にするつもりです。)

何にせよ、人の興味を引ける記事さえ書ければ、資本がなくてもトラフィックを伸ばせるバズ狙いの形式は、メディア事業への参入に貢献したのではないでしょうか。

(3)リファラル流入:大規模プラットフォームの発展

リファラル流入とは、他のメディアに掲載されたリンクを経由するトラフィックのことです。

リファラル流入に関する大きな潮流としては、Gunosy, SmartNews, Antennaなどといった大規模プラットフォームが大量の広告予算を投下し、競うようにユーザー数を拡大したことが挙げられるでしょう。

特に黎明期におけるこれらのプラットフォームは、無名サイトでもうまくバズればいい位置に掲載され一日で数万単位のトラフィックを稼げたので、短期間でメディアが立ち上がっていくのに、大きく貢献しました。

(4)その他:広告市場の形成

最後に、メディア数の増加と「鶏と卵」との関係にはなりますが、広告市場の形成にも触れておきます。

これまでメディアにおける「広告」といえばバナー広告が中心でしたが、記事メディアの数や総トラフィックが増えるにつれて、「タイアップ記事広告」や「インフィード広告」といった広告がより一般的になりました。

その結果、そのような商材に対する規格が整備され、広告主や中間事業者の数は確実に増えました。

こうしてマネタイズ手段が増えたことにより、メディア側から見た際のPVあたりの収益性は向上し、事業としての魅力が増したといえます。

まとめ

改めて上記4ポイントを整理すると、キュレーションメディア隆盛の要因は、以下のようになります。

  • NAVERまとめモデルの発明により、読み物コンテンツの大量生産が容易になり、検索流入が確保できるようになった(検索流入)
  • SNSの普及により、バズ記事によるPVで新規メディアでも短期的にPVを伸ばすことが可能になった(ソーシャル流入)
  • 大規模プラットフォームに掲載されることで、新規メディアでも短期的にPVを伸ばすことが可能になった(リファラル流入)
  • 記事メディア向けの広告市場が形成され、PVあたりの生産性が高まった。(収益性の向上)

お分かりいただけたでしょうか。疑問点があれば、ぜひコメントしてくださいね!

こうして見ると、各キュレーションメディアについて、上記の割合がどうなっているのかが気になってくると思います。本当はそこについてメインに書こうと思ったのですが、ここまででかなり長くなってしまったので、次回にしようと思います。

それでは、良いお年を!

次回予告

混迷する社会、勃興するキュレーションメディア。IT業界の未来はどこにある!?
次回『企業文化が生み出すキュレーションメディアの「質」の違い』お楽しみにッ!

↑こんな感じのデータが出てきます。

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Jun Ito
edism -エディズム-

VOYAGE GROUPでウェブメディアのデータ解析やSEOをやっています。