Engineering Managerの難しさTOP3
この記事はEngineering Manager Advent Calendar 2018の14日目の記事です。
株式会社FiNC Technologiesにてエンジニアリングマネージャーやっております清水 @takayuki_shmz です。今は自分の担当の日が回ってしまいそうで焦っております。
今日はEngineering Managerをそこそこやってみて、特に難しかったなぁという点を書きたいと思います。TOP3とか偉そうに書いてますが気をつけてください、n=1の主観100%です。異論は余裕をもって認めます。
まぁ「この世のすべての不利益は当人の能力不足」とのことなので、以後でる話題はすべて自分がマネージャーを始める際の勉強不足が原因なのですが、Engineering Manager界隈も徐々に盛り上がっていますので、僕のただの後悔を書き綴ることで、誰かの役に立てばと思います。
ではTOP3、1個ずつ行きたいと思います。
1. 適切な課題定義
と聞かれて、皆さんはすぐ答えられるでしょうか。
自分が感じてなかなか解決できないEngineering Managerのお仕事の難しさの一つは、課題定義でした。言い換えれば優先度、フォーカス、取捨選択などともいえて、いちエンジニアとしてでなく、いちEngineering Managerとしてなにかに取り組むときに、なにをやるべきか、そのwhatとwhyを決めることです。
Engineering Managerをやっていて、目の前に基本的に課題がないなんてことはほとんどのケースでなく、たいていは複数の問題に直面しているところから始まり、さらに掘り進めるともっと課題がでてくる、という状況かと思います。
そもそもエンジニアリングで重要なのはざっくりいうと「どう不確実性を効率よく減らしていくか」だと有名なエンジニアリング組織論への招待もかいてありますので、基本的に不確実=確定までの課題が散乱しているわけです。
Engineering Managerとして持つ責任の範囲が増えればふえるほど、この数も複雑性もましていき、なにが問題か見えにくくなります。
そこで安易に「1on1をしよう」「勉強会をしよう」といったhowから入ると、うまくいくこともあれど、つねに最適であるとはいい難い選択になってしまいます。
ですので、どんなに小さなチームでも、その組織を適切に診断し、あるべき姿を描き、それに向かって走るための基本方針たて、whatとwhyを突き詰めてから、上手に状況にあったフォーカスを持ってマネジメントしていったほうがベターなわけです。
そういったプロセスがあってはじめて「Engineering Managerとして、今最も課題だと思っていることTOP3はなんですか?」にすぐに答えられるEngineering Managerになれるわけです。
…と口では言うのは簡単なのですが、そんな心構えで始めたわけは当然なく、微妙に「やってることあってるのかなぁ」「チームの生産性あげるにはこれが一番なのかなぁ」と不安と失敗を繰り返して、やっと課題定義の質を上げて、戦略的に考えて動く重要性を学び、意識するに至りました。
2. 感情のマネジメント(EQ)
「感情のマネジメント」とは、組織のパフォーマンスを最大化するために、いかに感情的な課題を認識・解決して、相手を感情的にプラスな状態に持っていくかということと一旦します。
逆をあえておくと、おそらくそれは「論理のマネジメント」で、合理的・論理的に物事が進むことを好むエンジニアに、なにかを変えるときにしっかり論理的に説明し、納得してもらい、パフォーマンスを担保することです。
Engineering Managerを始めたときは、開発プロセスや1on1、目標設定など、課題に向き合いながら仕組みを整えて解決することにフォーカスが行きがちですが、それらを論理だけで進めると、うまくいかないこともあります。
それこそ何か開発ルールを一つ変えるにも、必ず既存のルールを最初に考えた人がいますので、変えたときに本人がどう感じるか、極端にいえばその人がメンツがつぶれたように感じないか、といったような感情の問題もさりげなく、でもそつなく認識しなければいけません。
これが1:1であればまだ1on1でじっくり話して、わかってもらった上で変えて行けば何の問題も起きませんが、Engineering Managerは対峙するステークホルダーはたいてい複数人で、時にはPMなど別職種もいますので、様々な人の感情を察知することができるのが実は大事ではないかと思います。
いわゆる「マネージャーに向いている」人の要件の一つは、個人的にはこの「感情のマネジメント」ができるか、能力でいえば「EQが高いか」ではないかとさえ思います。
EQって?といわれると意外と説明に困るので、Google先生に早速聞きます。
心の知能指数(こころのちのうしすう、英: Emotional Intelligence Quotient、EQ)は、心の知能 (英: Emotional Intelligence、EI) を測定する指標である。心の知能とは、自己や他者の感情を知覚し、また自分の感情をコントロールする知能を指す。
だそうです。自分だけでも大変なのに他者のまでなんて、難しいですね。
「論理のマネジメント」ができないと、そもそもEngineering Managerは難しい面がでるのはご理解いただけるかとおもいますが、たとえ論理のマネジメントができていても感情のマネジメントが不十分だと「あの人の下はちょっと」とか「言ってることは正しいけどさ」なんて反応をされかねない、Engineering Managerになってしまいます。
きっと頭の切れる方であれば、論理的な課題を解決することは簡単でしょう。論理的に考えればたいてい同じ答えに辿り着く課題ですので。
難しいのは感情的な課題で、そこにはたいてい多数の変数と文脈のある複雑系・トレードオフな課題なので、一筋縄ではいきません。
感情のマネジメントに、「アプローチはこれだ!」なんて答えを言えるほどの経験はないのでなにも答えを言わず終わりますが、これが難しいことだと認識することは、Engineering Managerが不安を無駄に抱かないために重要なのではないかと思います。あなたにとって難しいものは、意外と誰にでも難しい、なんてこともあるかもしれません。
3. 言葉で人を動かす
最後は、「言葉で人を動かす難しさ」です。
ケースバイケースですが、Engineering Managerとして見る範囲がひろがってくると徐々に自分が手を動かす機会は相対的に減ってくると思います。
じゃあそのかわりにどう自分なりのバリューを出すかというと「自分がいるから、チームのパフォーマンスが上がる」という状態をつくることを目指します。これなxxxマネージャーという役職全般で言えることかもしれません。
そうなると自分の武器は、言葉だけです。言葉というより、コミュニケーションというワードのほうが正しいかも知れません。「言葉をつかって、人になにかを伝え、実際にうごいてもらう」=コミュニケーションという定義です。
言葉というのは対面もあればドキュメントもありますが、相手の行動なり、気持ちの変化なりをその言葉で引き出すことで、チームに小さな変化を起こし、チームのパフォーマンスにプラスの変化を起こすのが我々のお仕事です。
これは自分がマネジメントされていたとき、そんなことを意識もせず働いていたときには、当然感じなかった難しさでして、言葉を選ばずに素直な心の声をかけば「言ったのにやってくれない・変わらない」という状態です。
多くのマネジメントのハウツー的なものは、結局はコミュニケーションによって対象にどう変化を起こすかの具体にも見えますし、逆にあらゆる事がこの課題の事象だとすると、TOP3に入れてもなにも言っていないようなものかもしれませんが。
相手を動かすことは、失敗多く、けっこうメンタルにもきます。
そこでくじけないためにも、Engineering Managerとしての自分の仕事を遂行するためには、相手をコミュニケーションを通して動かすことがとても大事で、それは簡単なことじゃなくいろいろな努力が必要だと、逆にそれができれば立派なスキルでありバリューだと、そう思って始められればよいのではないでしょうか。
まとめ
ということでまとめると、個人的に感じる「Engineering Managerの難しさTOP3」は
- 適切な課題定義
- 感情のマネジメント(EQ)
- 言葉で人を動かす
となりました。じゃあどうするんだという話が一切でない記事で申し訳なさ満載ですが、その解決策はEngineering Manager Advent Calendar 2018をよんで(Vol.2もある)、ときにはEngineering Manager Meetupという非常に有意義なmeetupに参加して見つけてもらえればと思います。僕もそうしていきます。
僕のEngineering Managerとしてのアウトプットといえば、FiNC Technologiesでの活動が全てなので、その技術組織としての取り組みはこちらのFiNC Tech Blog やこちらの記事なんかにもありますので、もしよかったらご覧ください。