プロダクトマネージャーの「意思決定」に欠かせない3つのこと

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10 min readDec 20, 2016
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こんにちは!Pairs事業部プロダクトマネージャーの金田です。
Product Manager Advent Calendar 2016の20日目を担当します。
今回はプロダクトマネージャーとして重要な仕事である「意思決定」について考えをまとめようと思います。

意思決定の重要さと難しさ

プロダクトマネージャーの役割はプロダクトのフェーズやその中で占める責任の範囲で変わってきますが、最も重要で外せない仕事は「意思決定」ではないかと考えています。

  • Aという機能とBという機能、どちらを優先して着手すべきなのか
  • リリースする上で外せない要件は何か、逆にスコープアウトしてもよいものは何か

我々プロダクトマネージャーが決めなければならないコトは日常の些細な問題から、
メンバーの人生を左右し兼ねない重要な決定も含まれるでしょう。
こうした意思決定の連続が、プロダクトの成長を「いつ」「どこまでに」届かせるのかを
左右しているということは皆さんも実感していらっしゃる通りかと思います。

プロダクトマネージャーとして現場に入って感じるのは、その「意思決定」の難しさです。
それを生み出しているのは、我々が向き合う不確実な事項の多さではないでしょうか。

  • 右肩上がりで行くと思ったKPIの伸びがある日突然止まる
  • 頼りにしていたメンバーがいなくなる

など、常に予測できない事態と隣り合わせです。

意思決定する上で重要なこと

これら不確実な事項を予見し、成長に繋がる意思決定を成していくために何をすべきなのでしょうか。

アメリカ合衆国の空軍に所属していたジョン・ボイド氏によって生み出された「OODAループ」という意思決定のフレームワークがあります。
戦争で指揮官がどう意思決定を行うべきか示唆を与えてくれるもので、ビジネスの場でも使われています。

「OODAループ」は、以下の4つのフェーズを繰り返すことによって健全な意思決定を促進しようとするものです。

  • 観察(Observe)組織内外の情報を収集し、情勢判断と意思決定の土台を作る
  • 情勢判断(Orient)観察の結果得られた情報を元に分析を行う
  • 意思決定(Decide)情勢判断に基いて意思決定を行う
  • 行動(Act)前段階に従い行動し、結果を観察することで次の情勢判断に繋げる

このフレームワークについて調べていく中で、プロダクトマネージャーの「意思決定」において大事だと気づいたことがあったので、考えたことをまとめたいと思います。

  1. 意思決定は観察から始まる
  2. 情勢判断は個人の才能や経験によってバイアスがかかる
  3. 情勢判断は組織が大きくなり意思決定者が増えていくとワークしなくなる

それぞれ詳しく説明していきたいと思います。

1. 意思決定は観察から始まる

当たり前のことのように聞こえますがとても重要な事実です。
プロダクトとそれを取り巻く環境に関して知らないことが多ければ多いほど、意思決定は不確実性を増すというのは体感でもお分かりになるでしょう。

「OODAループ」では外部環境の観察だけでなく、組織内部の観察も重要と考えている点が興味深いです。
実際に私自身や周りのプロダクトマネージャーの動きを振り返ってみると、以下の動きが観察に当たる重要な動きになるのではないかと考えています。

【外部環境の観察】サービスを見る / そのサービスを作る会社を見ること

競合サービスに限らず幅広く色々なサービスを触るのはとても重要な「外部環境の観察」だと言えます。
この際にサービスを触る際にインプットしておくべき領域をしっかり言語化できていると尚良いです。
私個人の場合は以下の3つをセットでインプットするようにしています。

  • UI/UX:主要なユーザー体験は何か、それを実現するための手法が何か考えてみる
  • マネタイズ:そのサービスがどのようにマネタイズしているか、価格はいくらか調べてみる
  • 会社のフェーズ:会社規模・売上規模を予測し、なぜ今この機能を提供をしているのか考えてみる

特に最後の「会社のフェーズ」まで合せてインプットするのはとくに重要だと思います。
今のそのサービスを見てアレコレと批評を付けるのは簡単です。
しかし、組織や事業のフェーズを把握して、なぜその機能追加を行ったのかというところまで言えている人は少ないのではないでしょうか。

「競合サービスがある機能を追加したから自分たちも導入すべきだ!」という発言が的外れになりがちなのは、概ねこの観点が抜けているからだと思います。
サービスの表側だけでなく裏側の情報もきちんと仕入れていくことで、正しく判断できる能力が身に付くと考えています。

同時にこれからどうサービスを動かしていけば成長するか、といったイメージを膨らませることで「意思決定」の練習をするのも良いでしょう。
また、実際に中の人と繋がって、考えを聞いてみることもとても勉強になるのでオススメです。

【外部環境の観察】これからを想像する

これから訪れるであろうトレンド、技術について知ることもとても重要です。
ブロックチェーン、AIといった大きなトレンドからAmazon Dash Buttonなど身近な話題まで日頃からインプットを行い、自分のサービスにどう取り入れていくか想像(あるいは夢想)してみることもとても大切な習慣のひとつだと思います。

【組織内部の観察】社内のメンバーと触れ合う機会を増やす

社内のメンバーと触れ合う機会を増やすことは多くの気付きを与えてくれます。
忙しくとも、用が無いフリをして社内を歩き回っていると、
プロダクト改善のアイデアを得たり、メンバーの異変に気付いたりすることが多く、とても重要な観察の機会になることでしょう。
1on1、KPTに朝会なども重要な気付きの場です。積極的に活用してみてください。

2. 情勢判断は個人の才能や経験によってバイアスがかかる

「OODAループ」の2つ目のOである「情勢判断」は、意思決定の前に各人が観察によって仕入れた情報に対して見解をまとめるフェーズです。
見解という言葉が入るように、判断が一定であることは保証されておらず、意思決定者個人の能力や資質に応じて変化すると言われています。

「OODAループ」では以下の5つの要素が互いに絡み合うことで意思決定を行うと定義付けされています。

1.文化・伝統(Cultural Traditions)
・判断はその人が生まれ育った文化的背景に影響を受ける

2.過去の経験(Previous Experiences)
・判断はその人が過去に培った経験に影響を受ける

3.遺伝的資質(Genetic Heritage)
・判断はその人のDNAに影響を受ける

4.新しい情報(New Information)
・判断している間にも新しい情報が常に入ってくるし、その影響は回避できない

5.分析・総合(Analysis & Synthesis)
・純粋に事実を元に、状況の分析と判断を行う

私がこれを見た時に考えたのは、上3つの要素は意思決定においてバイアスに成りうるので、自分の癖をしっかり把握しておく必要があるということでした。
どういうことでしょうか?実際に自分の癖を例にとって書いてみました。

1.文化・伝統(Cultural Traditions)
・自分は日本人なので皆がいいと言う意見に同調しがちである
➔皆が良いと言う意見を聞いただけで意思決定してはいけない

・ディレクター出身なのでエンジニアの話を本人の申告だけで判断しがちである
➔エンジニアで頼れるメンバーを作って、裏を取る必要がある

2.過去の経験(Previous Experiences)
・過去自分が担当していたプロダクトでの成功事例を採用しがちである
➔過去に成功したという理由だけで意思決定してはいけない

3.遺伝的資質(Genetic Heritage)
・自分は男性なので男性ユーザーにとって良いと思う意見に同調しがちである
➔女性の意見こそ聞いて意思決定をすべきである

・自分はせっかちな性格なので情報を集めきる前に瞬断しがちである
➔重要な判断は一度時間を置き、情報を集めた上で意思決定すべきである

このように自分なりの癖を言語化しておくことで、自分が受ける意思決定バイアスをきちんと把握できるようになりました。
ぜひ皆さんも書き出してみてください。

3. 情勢判断は組織が大きくなり意思決定者が増えていくとワークしなくなる

「OODAループ」の2つ目のOである「情勢判断」で興味深い点がもう一つあります。
それは組織が大きくなって意思決定者が増えると齟齬が発生し、意思決定に至らない可能性が高くなるという指摘です。
この問題については「組織内で共通概念」を持つことが重要だと言われています。

先日開催されたJapanProductManagerConference2016において、「PokemonGO」のプロダクトマネージャーをされている河合敬一氏のお話がリンクすると思ったので、こちらに掲載しておきます。

ビジョンとミッションは何なのか、が最初に来ると思うんですよ。僕らの場合はさっき言った「Adventures on foot」。それにExplore、Exercise、Engageという3つの軸に沿っているかの判断もします。もう一つはプロダクトのゴールです。KPIをユーザー数で見ているならば、どちらを取ったらユーザー数が増えるのか、と考えます。そして最後は自分が一ユーザーとしてどちらが好きか、ですね。ユーザー目線でぶれないのが大事です。

出典:プロダクトマネージャーに必要な資質って何ですか? 元グーグルのPM対談 | HRナビ by リクルート

組織、プロダクトにおけるミッションやビジョンは何であるのかをしっかり持つこと。
持つだけでなく、しっかりとメンバーに発信していくことが、組織として意思決定をするにあたってとても重要なのだと気付かされる言葉でした。

最後に

今回は「OODAループ」というフレームワークから僕なりの解釈を挟み、
プロダクトマネージャーとして「意思決定」を行う上で重要なことについてまとめました。

もう一度おさらいをします。

  1. 全ての意思決定は観察から始まる。そのために組織内外の情報を常に観察しておく
  2. 自分自身の意思決定のバイアスを言語化する。その上で対策もしっかり明示しておく
  3. 組織のミッション・ビジョンを自分の判断軸に落とし込む。皆が同じ価値観で判断できるよう、しつこいくらい発信をする

こうして見ると日々の細かなプロダクト改善だけでなく、プロダクトに対する思いや未来を想う姿勢が何より重要であることを感じています。
どうすれば数字が上がるかだけでなく、プロダクトが目指す未来は何か、それがどうやったら達成できるのかを考え続けていくことが、我々が意思決定する上で何より大事なことなのかもしれません。

プロダクトマネージャーをやっていると常にキツイ意思決定の連続かと思いますが、
少しでも皆さまのお役に立ち、プロダクトの成長を後押しする内容になれば幸いです!

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