リモート環境下でも入社オンボーディングを効率的に運用できるよう取り組んだお話

Ikepyong
Eureka Engineering
Published in
17 min readDec 24, 2020

この記事は「Eureka Advent Calendar 2020」の24日目の記事です。
情報システム部門のCorporate Engineerとして、フルリモート下でもスムーズかつ効率的に入社オンボーディングを行えるようにオペレーション改善に勤しんだ日々のお話をします。

はじめに

こんにちは、株式会社エウレカのCorporate Engineerとして働いているIkepyonです。
普段は主に社内オペレーションの改善や自動化について取り組んでおり、最近だとGoogle Workspace(旧称:Gsuite)からOktaへIdPを移行しようとチームとして動いたりしています。

今年は3月からCOVID-19の影響で、エウレカでも原則リモートワーク期間やリモートワーク推奨期間が続きました。
それに伴い、オフィスでのWorkingを前提とした入社オンボーディングでは対応しきれない課題が出てきました。今回はその課題をどうやって解決したのかについてお話したいと思います。

また、今回の内容は改善方法の概要について記載しているため、実装方法の詳細については割愛させて頂いています。

今回の記事の内容でよく出てくるツール群の一覧と社内用語を予めここに提示しておきます。

ツール名

  • Confluence : 社内wikiとして利用しているツールです。
  • Slack:社内コミュニケーションツールとして利用しています。
  • Zapier:今回肝になる自動化をNoCodeでできるツールです。
  • Jamf Pro:Appleデバイス 向けのエンタープライズモビリティ管理(EMM)ソリューションです。エウレカではMac製品の管理に利用しています。

社内用語

  • Welcome to eureka:入社オンボーディングのこと
  • Team:エウレカの組織は職能ごとのTeamで編成されています(例:iOS Team, Android Teamなど)

そもそも

今回私がお話しする「入社オンボーディング」とは、社内では通称「Welcome to eureka」という名で運用を行なっております。
新しく入ったメンバーが早期から実力を発揮できるように社内ポリシーや社内ツールについての設定や理解をしてもらう工程が対象範囲となります。
例えば、弊社でコミュニケーションツールとして利用しているSlackの社内ルールや使用方法のレクチャーや、メインビジネスツールであるGoogle Workspace(旧称:Gsuite)の利用方法などになります。セキュリティポリシーなども対象です。

また、弊社の入社オンボーディングは必ず同じチームメンバーの誰かしらがサポートをする体制をとっており、「Welcome to eureka」自体はConfluenceという社内向けwiki内で管理を行なっていました。

こちらがこれまでのオンボーディングプロセスの概要になります。

Onboarding process by March 2020

そしてこちらがWelcome to eurekaの中のTODOをタスク分解したものになります。

“Welcome to eureka” Task Details

リモート環境下での課題

実際にリモートワーク環境になった際に現れた課題がどんなものだったのかというと、下記の3つの課題に振り分けられました。

  1. PCのセットアップから社内オンボーディングまでのプロセスがわからん問題(入社メンバー視点)
  2. オンボーディングのタスクをリアルタイムで確認しにくい問題(サポートメンバー視点)
  3. 質問などがしにくいよね&何に困ってるかわからないよね問題(入社メンバー&サポートメンバー視点)

それでは、1つずつ課題を深掘りしていきましょう。

【課題1】PCのセットアップから社内オンボーディングまでのプロセスがわからん問題

課題その1「PCのセットアップから社内オンボーディングまでのプロセスがわからん問題」です。これは、入社メンバー視点の問題になります。

そもそもの項目で「Welcome to eureka」はConfluence内で管理を行なっていると述べましたが、このConfluence、社外からはVPN経由でないとアクセスできないのです。つまり、リモート環境下各メンバーがPCを手に入れた段階ではアクセスできない状態なのです。
つまり、リモート環境下各メンバーが自宅のインターネットからではアクセスできない状態となるのです。

もうこの時点で面倒臭そうですよね…。

これまでの社内オンボーディングは必ずOfficeで行われていたので特に問題にはならなかったのですが、リモート環境下では、かなりの問題となりました。
一旦は、VPN(Virtual Private Network)設定のマニュアルをPCと一緒に送付し、VPN設定を行なった上でConfluenceにアクセスしてもらい、Welcome to eurekaを行なってもらうという方針を取りました。

しかし、この場合、入社メンバーは社内コミュニケーションツールとして利用しているSlackにはまだ入れないため(SlackのセットアップマニュアルもConfluenceにあるため)、VPN設定などの不具合対応は都度メールで行なっていました。

普段メールをそこまで利用していない我々にとって、これはとても辛かったですし、入社メンバーも慣れない環境のなかこう言ったプロセスを入社直前に経るのは辛そうでした(実際に入社後ヒアリングしたらやっぱりストレスだったらしい)。

Task 1

【課題2】オンボーディングのタスクをリアルタイムで確認しにくい問題

次に、「オンボーディングのタスクをリアルタイムで確認しにくい問題」です。これはサポートメンバー視点での課題になります。

まずは、今までのWelcome to eurekaがどういったものだったのかをお見せします。

Previous versions of “Welcome to eureka” in Confluence

Confluence上に入社メンバー用のWelcome to eurekaというスペースがあり、これを見ながら入社メンバーは各ツールの使い方や社内ポリシーなどの理解を深めてもらうという流れでした。
各項目にチェックを入れていき、全てにチェックがついたら終わりになります。

今までであれば、社内にサポートメンバーが隣にいて進捗を確認できていたのですが、リモート環境下では対面でのコミュニケーションではなくSlack上でのコミュニケーションになるため、逐一状況を把握するのが結構面倒になっていました。
また、Welcome to eurekaを行わずにTeamのオンボーディングを行うTeamもちらほらと散見されました。

【課題3】質問などがしにくいよね&何に困ってるかわからないよね問題

そして、「質問などがしにくいよね&何に困ってるかわからないよね問題」になります。これは、入社メンバーとサポートメンバー相互の課題になります。

課題2に関連される課題でもあるのですが、サポートメンバー視点では、リアルタイムで状況を把握できないのでどこで躓いているか、どこで困っているかが把握できない。かたや入社メンバー視点では、サポートメンバーに気軽に質問できなかったという声があげれました。

3月中旬から4月中旬にかけて一時的な対応を行った上で、これらの課題を発見しました。
これらの課題に対して、4月中旬から4月末までに後述する解決法を検討し実装していくことになるのでした。

Welcome to eurekaをslackで実施してもらうようにした

さて、課題に対してどのように改善を行っていくのかを検討しました。
入社メンバーから色々ヒアリングした上で、まずSlackでWelcome to eurekaを行おうというのはGoalとしてありましたが、どのようにして行ってもらうかについては下記2つの方法を検討し、それぞれメリット・デメリットを比較してみました。

SlackのWorkflowの機能を利用する

メリット

  • Slack内で実装が完結する。
  • 実装とメンテナンスが簡単&誰でもできる
  • ボタンをポチポチ押しながらオンボーディングが進められるように実装できる

デメリット

  • 自由度がまだ低い

ZapierでBotを作り、そのBotをSlack内で動かす

メリット

  • 実装とメンテナンスが簡単&誰でもできる
  • 自由度が高い

デメリット

  • ボタンをポチポチ押しながらオンボーディングを進められるようにできない

SlackのWorkflow案を採用

両方の案を比較してみて、最初はSlackのWorkflow案を採用してみました。

Slack Workflow Implementation Test 1
Slack Workflow Implementation Test 2

こんな感じにボタンをポチポチ押しながら進められるので、感触としてはとてもよかったです。
しかし、ここで問題が見つかります…。

Scene where the problem was discovered

はい。SlackのWorkflowで実装する場合、Workflowを動かすチャンネルを指定しないといけませんでした。つまり、「どのチャンネルでも動かせるようにする」ということができなかったのです。

これはとても痛かった…。

もし、このままWorkflowで実装する場合は、入社メンバーそれぞれのスペース(専用チャンネル)内でWelcome to eurekaを行ってもらうことが難しくなり、共用のスペース(チャンネル)で運用する方法になってしまいます。

Ideals and Reality

結果、ポチポチ押せるボタンは魅力的でしたがSlackのWorkflowを利用する案は棄却され、Zapierでの実装をテストしてみることにしました。

I was like “Okay, let’s stop using Workflow.”

次にZapierでの実装案を採用

ということで、ZapierでBotを作成してみました。
見え方としてはこんな感じです。

「welcome to eurekaをはじめる」とSlack内で投稿したら、それをトリガーにBotがTODOを案内してくれるという仕様です。

Zapier Implementation Test 1

この場合、入社メンバーはトリガーになる投稿をしなければならないというのがデメリットではあるのですが、後述する実装方法で各メンバー用のスペース(チャンネル)内でBotを起動することができるので、この方法を採用としました。

This state can be achieved

実装方法の詳細については割愛させて頂きますが、入社オンボーディング用のSlack Channelの命名規則をwelcome-firstname-lastnameにするというルールを決めた上で、Zapierのフィルタリング機能を使用してwelcome-から始まるチャンネルにのみBotが起動するように設定をしました。

Filtering channel names

そして、トリガーとなるワードのフィルタリングも設定しました。

Filtering triggered posts

そしてそのワードが投稿されたら、どのような文章をBotに投稿させるかを決めます。
その投稿内容が終わったら次のトリガーとなるワードを投稿してもらう必要があるため、どんな投稿をすればいいかも記述しておきます。

What the bot will post

例だと、入社メンバーがwelcomeから始まるチャンネルで「エウレカへ来たよ!」と投稿したら、上記の内容をBotが投稿してくれるというものです。

実際にどのようにBotが投稿するかというとこちらです。

What the bot posted

このようにして、Welcome to eurekaの案内をBotにしてもらい入社メンバーと1on1でBotが対応する仕組みを実現しました。

新たなる課題登場と解決

新たなる課題

SlackでWelcome to eurekaを行ってもらうことにより、課題の1〜3については大まかに解決をしました。

しかし

しかしです。

オペレーションを線でつないでいくと、次の課題が出てくるのです。

じゃあ、Slackにログインするまではどうするん??」

はい、そうですよね。
いい質問です。

普段は主に社内オペレーションの改善や自動化について取り組んでおり、最近だとGoogle Workspace(旧称:Gsuite)からOktaへIdPを移行しようとチームとして動いたりしています。

はじめに軽く上記の通り述べましたが、IdPの移行過程の最中にあるためSlackにログインするためにはGoogle WorkspaceへのログインとOktaへのログイン作業が必要となります。

つまり、下記のようにWelcome to eureka以前のTODOが現れてきます。

Appearance of tasks before “Welcome to eureka”.

Jamf Proのセルフサービスを利用して解決

では、Google WorkspaceとOkta、そしてSlackのセットアップをどのように入社メンバーに実施してもらうようにしたかをここで記述をしていきたいと思います。

結論から言うと、Jamf ProというMDMツールのセルフサービス(自社用App Storeのようなもの)という機能を利用することにしました。

Jamf ProというツールはApple製品(macOSやiOS)を一元管理することができ、PCがJamf Proに登録されていることによって、このセルフサービス機能が利用することができます。

導入時のあれこれは、こちらからご覧頂けると幸いです
ぼっち情シスがJamf Proを導入してみた件

セルフサービスというものは、簡単にいうと会社用に自由にカスタマイズできる会社専用のApp Storeです。

添付の写真が弊社が利用しているセルフサービスになります。
この中に、各ツールのセットアップマニュアルを用意しておくことにしました。

Eureka-spec version of Jamf Pro self-service

実際の解決法

まず、入社メンバーにはPCと共にアカウントパスワードポリシーが記載された用紙とSlackログインまでの手順(下記添付ファイル)を記載した用紙を自宅へ送付します。

Instructions for sending with PC

入社メンバーは順番通りにマニュアルをダウンロードし、アカウントのセットアップを行うことになります。
ダウンロードしたマニュアルを開くとどうなるかを一例として添付します。

Sample manuals available for download from Jamf Pro

Slackのマニュアルには入社メンバー用のオンボーディングチャンネルに入るまでの手順が記載されています。

整理と結果

リモート環境下のオンボーディングの全体の手順を整理し、フローでまとめましたものが下記になります。

Onboarding flow in a remote environment

全体として工数多くなっている様に見えますが、改善後のWelcome to eurekaの終了タイミングが1日分短縮される様になりました。

リモート環境下のWelcome to eurekaに変更後入社したメンバーのWelcome to eurekaが終わるまでの時間がおよそ5〜6時間だったのに対し、以前のWelcome to eurekaは大体10〜12時間程、時間を要していました。

Previous Onboarding Flow

Welcome to eureka実施後のアンケート結果によれば、オンボーディングについてわかりにくかったと答えた入社メンバーは0になりました。

Questionnaire Results

Welcome to eurekaのよかったところについては下記の様な声を頂ける様になりました。

チュートリアル内容について、ただリンクを提示するだけではなく必ず平文での説明があることが、事前に概要を把握できたり後から見返したりしやすい点で非常に良かったと思います。 また、チャンネルとして残ることで後から見返したくなった場合もすぐにチュートリアルの内容を参照できる点も良いと思いました。

ゲームみたいにクリアしていく感じがおもしろかったです。励ましの言葉も入っていて頑張れました。

BOTが教えてくれるので、お仕事している人の邪魔にならずにできるのがよかった。

BOTさんとのコミュニケーションをとりながら進めることができました。

また、アンケート内で改善した方がいいと思ったことを必ず記載してもらう設定にしたことによって、下記の様に改善ポイントの洗い出しも容易になりました。

Welcome to eurekaが終わった後も、グーグルカレンダーなどの手順書がすぐに見れるように1つのファイルなどにまとまっていると便利だと思う。

一部重複したり古かったりした内容があったので、そこを綺麗にしてもらえるともっとわかりやすくなる

まとめ

入社オンボーディングをリモート環境下でも効果的に行える様に改善したことによって今までよりも効率的に、さらにスムーズに入社オンボーディングを行える様になりました。

結果として、入社翌日からはTeam内のオンボーディングに移ることができ、実際の業務へシフトすることが可能となったので成果として大きかったです。

まだまだ改善の余地はあるので、引き続きアップデートを行っていきたいと思います。

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