エンジニアのキャリアに責任を持つためのスタンスとスキルの評価指針
この記事は Engineering Manager Advent Calendar 2019 9日目の記事です。
こんにちは、こんばんは。CTO の kaneshin です。エウレカで CTO に就任してから3年が経過し、エンジニア組織や技術戦略について日々精錬と精進をしていかなければというのを毎日のように思いを馳せています。年末年始にはテクノロジーやマネジメント関連の積読の消化が捗りそうです。
さて、そんなエウレカのエンジニア組織について2019年の振り返りをした記事を初日の eureka Advent Calendar 2019 に書いています。
この記事中の終わりにキャリアについて言及しています。
個々人のエンジニアもそれにあわせて成長できるような組織にしていかなければ、3〜5年後も生き残っていけないなと考えています。このご時世、エンジニアのキャリアはあってないようなものなので、その状況でも『エウレカにいたからこそ成長できた』と感じられるエンジニア組織を構築していきたいと思います。
手に職があるエンジニアは食い逸れることはそうそう無いと思いますが、スキルを伸ばし拡げ続けるという観点で成長しなければ、身につけたスキルだけで食い続けなければならないです。
そうならないよう、エンジニアリングマネージャーは継続的な専門スキルが身につけられるようなキャリアの指針をエンジニアと話しをしていく必要があると思っています。
ところでキャリアって何?
世の中には CTO, VPoE, Tech Lead, Architect, Data Scientist, Engineering Manager, Project Manager, Product Manager, etc… という様々な職種(ロール)があります。
わかりやすく伝えようとすれば、それらのロールをキャリアとして伝えると思います。ただし、『あなたは〇〇がキャリアとして向いています』と伝えたとしても、自分と相手とではその職種の守備範囲の認識が違う可能性があります。そのため、『A, B, C があなたは得意なので、〇〇がキャリアとして向いている。〇〇の責務は D, E, F がある』のように具体的な Responsiblity に着目して伝えていくのが良いでしょう。
キャリアなんてあってないようなもの
さて、引用文の中に『このご時世、キャリアなんてあってないようなもの』ということも記載しています。キャリアという用語は上で述べたようにとても曖昧で認識齟齬が発生しやすい用語です。
キャリアとしてロールを伝えるよりは職責の範囲(=スキル)を共通認識するためにフィードバックをするのと、そのスキルが所属する会社や事業に依存しないファンダメンタルなスキルを持ち、継続的に発揮ができるスキルになっているかが重要です。そのため、『キャリアなんてあってないようなもの』の次に『どこの会社や事業に移っても仕事をこなすことができるスキル』を有してもらい、その結果としてキャリアを形成していってもらえればと思っています。
スキルの評価をキャリアの指針とする
それでは実際にスキルを身につけることからキャリアにつなげる考えをどのようなアプローチで理解をし、そこから理解をしてもらうことが大事になります。
これらを語るときに『一過性と継続性』を軸にして会話をすることがよくあります。
スキルの評価基準の鉄則
評価は『何をやったか』ではなくて『継続的に行動している(行動できる)ことに対して、どのような成果出したのか』を評価のポイントとしてしっかりとフィードバックを行うことが大事です。
スキルの再現性
一過性の行動については、スキルや行動特性の評価としては継続性が見られないので基本評価には値しません。再現性として、次の機会で似たような事象のプロジェクトや問題が発生したときに、同等かそれ以上のスキルが発揮可能かが評価に値する動きになります。
継続的な行動ができていない場合、継続的な行動や再現性を持つことを促すフィードバックをすることで成長機会を見つけることができます。
そして、その継続的な行動がどのようにロールモデルとなる職責に影響してくるのかを説明し、キャリアを想像できるように伝える。それがエンジニアリングマネージャーとしてキャリアの指針となれるひとつの動きです。
一過性だが成果を出している
これは会社によっていろいろな評価の仕方があると思います。成果についてはしっかりと褒め称えるべき事柄でフィードバックをしっかりとすべきです。しかし、スキルや行動特性の評価に結びつくとは限りません。
既に有しているスキルを組み合わせることや、駆使することによって新しくスキルが身につくこともありますが、そうではなく持っているスキルをただ発揮しただけでは今までに見に付けたスキルや行動特性を使っているだけに過ぎません。これを評価してしまうと、本当の意味で成長できる機会を失わせてしまうことになるので、その人のキャリアを潰しかねません。
だからといって、評価しないのもまた違います。
会社の表彰制度や賞与、その他の労うための制度を会社は兼ね備えているはずなので、そちらでしっかりと成果を評価していくことが大事です。
スキルはファンダメンタルな知識を身につける
評価について、どの会社にいっても発揮できるスキルであるべきだと考えています。それは、どのような設計であったりフレームワーク、強いて言えばプログラミング言語が変わったとしても発揮できるスキルです。
プログラミング言語の構文を学ぶことは難しくはありません。しかし、言語の思想であったり、構文の由来、はたまたコンピュータはなぜ動くのかといったことを理解しておくことによって、別のプログラミング言語に切り替わったとしても使いこなすことができます。しかし、そのプログラミング言語の書き方を曖昧にしておくことやスキャッフォールディング (Scaffolding) に頼りきりになっていると、裏側の仕組みがわからないままの知識になってしまいます。(理解をしていればスキャッフォールディングは使い倒しましょう)
キャリア形成は長期的な目線で逆算する
長期的にスキルや行動特性を評価するときに会話に含めたほうがよいことは、今やっているスキルアップが自身のキャリアにどのように作用してくるのかを伝えることです。これを伝えることができなければキャリア迷子のように、雲をつかむようなフィードバックになってしまいます。
すなわち、評価された・されていないスキルが次の半期にどのように繋がってくるのか。はたまた繋がらないのか。そして、それがどのように1〜3年後に作用するのかを前期のフィードバックを踏まえて会話をすることが大事です。キャリアがフワついている人はたくさんいますが、そのキャリアを形成していくのもエンジニアリングマネージャーの仕事のひとつなため、キャリアの指針となるフィードバックをしていくことが大事です。
おわりに
『キャリアなんてあってないようなものだ』は面接のときによく僕が話しているので、聞いたことがある人は結構な人数の人が聞いている可能性があります。
あってないようなものであるからこそ、エウレカではそのキャリアについて真摯に向きあい組織の成長にあわせて自身も成長できるようなエンジニア組織にしていければと思っています。
ここで書いていることは自身もすべて出来ているわけではないです。出来ていたら聖人君子なので、出来ていなくてもこのスタンスを持って会話し続ければと思っています。
さいごに、去年も似たような記事を書いているので、どうやらキャリアばかり考えているんじゃないかと思ってしまう。それほど大事なことだと思っているからこそです。