多様性の中にあるクロスカルチャーと学習進化の5段階モデル

kaneshin
Eureka Engineering
Published in
13 min readDec 25, 2019

この記事は eureka Advent Calendar 2019 25日目の記事です。

昨日は Jun Ernesto Okumura の『YouTubeの推薦アルゴリズムの変遷を追う〜深層学習から強化学習まで〜』でした。

推薦アルゴリズムの領域となる技術面の知識は、これからエンジニアリングに関わる人が知っておくことにより技術の幅が広がるファンダメンタルな知識となると思っているので、数式は理解しなくとも概念として機械学習・深層学習は学んでおいて損はないと領域だと思っています。ぜひ一読してみてください。

改めてこんにちは、エウレカCTOの kaneshin です。推薦アルゴリズムに負けじと自己紹介をするならば、大学では最適化問題の非線形分野を研究していました。

最近は趣味で家の湿度や温度を一覧するために、Nature Remo と連携したダッシュボードを作っているのですが、コードを書くよりは Terraform を書くことがメインになっています。エウレカの仕事では CTO としての動きや所謂 VPoE の考えを持った上でエンジニア組織の継続的に成長できる環境の構築をしていくことをメインとして2019年を過ごしました。

そんな2019年も間もなく終わりを迎え、本日は Advent Calendar 最終日となるクリスマス🎄です。毎年のようにアンカーをつとめている最終日の eureka Advent Calendar ですが、今年は初日に振り返ったなかのひとつ『グローバル化』をテーマにしていこうと思います。

エンジニア組織のグローバル化

2019年は『これから3年後、5年後にも生き残れるエンジニア組織にする』ためにはどのような振る舞いをしていくべきなのかを考えることが増えた年になったと感じます。昨今、どの企業でも外国籍のエンジニアを採用することによって企業の人材のグローバル化が進んでいることや、事業としても日本にとどまらないで海外に事業進出をする企業もどんどん増えてきたと感じています。

経済産業省『世界の構造変化と日本の対応』より

エウレカでもご多分に漏れずグローバル化が進んでおり、エンジニア組織の約2割が外国人エンジニアとなりました。仕事でも英語を使う機会が増えましたし、日本人メンバーも英語の勉強をする機会が増えているので、組織としては自己学習のもと個々人が変化(=成長)する土壌ができているのだと感じます。そんなエウレカのエンジニア組織で得られた知見を本日は紹介しようと思います。

多様性とインクルージョン

グローバル化に伴って、多様性 (Diversity) という言葉をよく聞くようになったと思います。多様性とは多種多様な人材が集まっている状態で、人材の多様性を認めていることです。多様性を認めたコミュニティが必ずしも機能している状態にあるとは限りませんし、機能する必要性がないコミュニティの場合もあります。しかし、コミュニティを企業組織として考えたとき、多様性のもと相互理解をして機能しなければ生産的な活動をすることはできません。そのため、お互いにその多様性を認め合い機能することのできているインクルージョン (Inclusion) の状態にすることは、多様性と両立していくこととして重要です。

Diversity & Inclusion
  • 多様性 (Diversity):多様な人材が集まっている状態
  • インクルージョン (Inclusion):多様な人材が集まり、お互いに理解をして機能している状態

それでは、多様性とインクルージョンの違いを踏まえて両立していくために、お互いに理解した状態へ持っていく組織にするためには何を考えるべきなのかを次に紹介します。

クロスカルチャーマネジメントとその先へ

グローバル化が進んでいるから英語を話すことができればそれで良いのか?答えは No です。英語は会話をするためのツールでしかなく、コミュニケーションをするための一端でしかありません。

クロスカルチャーを意識する

日本では『クロスカルチャー』という言葉はあまり知られていないと感じます。しかし、『グローバル化』という言葉はよく使われており、ここがグローバライゼーションのギャップを生んでいると思っています。

多種多様な人材に富む海外のグローバルカンパニーでは『クロスカルチャー』という言葉とその定義は国際的に活躍するためには最低限知っておくべき知識となっていますが、日本では『クロスカルチャー』ではなく、『英語を話せることが国際的に活躍できる人材=グローバル人材』として広く知れ渡っています。

クロスカルチャーとは何なのか?

『クロスカルチャー』は、異文化理解が近い表現になります。自国の文化を理解してから他国の文化も理解し、自国と他国の文化の相互・比較・交差をして調和をしていくことです。

下記のようにマナーとして伝わっているのもクロスカルチャーの一例です。

  • ピースをしてもよい・してはならない(日本では写真を撮るときにピースをする)
  • 食事中に音を立てて良い・立ててはならない(日本ではお蕎麦をたべるときにすすって食べる)
  • 挨拶、お辞儀、握手、席の座り方

このような例は枚挙にいとまがありません。英語がいくら話せても、挨拶や握手など、相手との最初のコミュニケーションができていないとビジネスでは大きな問題に発展することもありません。クロスカルチャーを理解していないと、そもそも海外では信頼されることがないのです。

お互いの文化を交差させて考える

お互いの文化の異なるところや同じところを意識するところからクロスカルチャーマネジメント (Cross-cultural management) はスタートします。

クロスカルチャーの組織では、各々がとある事柄に対して同じ事柄として理解する仕組みが非常に重要です。それを阻害するひとつの要因として、日本語はハイコンテキスト文化(高文脈文化)であり、クロスカルチャーマネジメントを実行するにあたって日本人が一番大変だと感じるのがこのハイコンテキスト文化だと思っています。Wikipedia の例を借りると:

例えば、電話をかける場合においても

日本語「Aさんいらっしゃいますか?」
上記日本語を英語に直訳「Is Mr. A there?」

英語「May I speak to Mr. A?」
上記英語を日本語に直訳「私はAさんと話したいのですが、話せますか?」

日本語の場合、Mr. Aの存在確認だけを行っており、その結果、話者はMr. Aと何をしたいのかが表現に入っておらず、聞き手が「電話の主はMr. Aと電話で話したがっている」ということを推測する必要がある。

日本人は小学校から国語の授業で作者の気持ちを見出すといった試験が多いですが、小論文のように意見や理由を記述する授業は少なかった印象があります。しかし、海外では小論文のように自身の意見を論理思考を持った上で論述するクラスがあり、それを学んで来ているからこそローコンテキスト文化として抜け漏れのない論理展開が必要になります。

日本人はハイコンテキストの文化に浸かっているので、ローコンテキスト文化を理解していくことがまず第一歩として必要なクロスカルチャーとなります。もちろん、日本に来た外国人もハイコンテキスト文化を理解しなければならないです。

(話は変わりますが、「日本人の英語が通じない」と言われるのもこのコンテキストの違いが発端だと思っています。)

文化とは?ヘールト・ホフステード文化の多様性

ヘールト・ホフステードというオランダの社会心理学者・異文化心理学・異文化マネジメントの第一人者が文化の違いを『ある集団のメンバーと、他の集団のメンバーとを区別する、集団的な心のプログラミング』というものを定義しました。

人間の行動をプログラミングする3つのレベル

文化とは、真ん中のレベルで、集団として『国、職業、組織、チーム、家族』などにあたり、文化とは個人とは切り離された集団的現象として、その属した集団のプログラミングから文化を学習していることになります。

ホフステードはこの集団における文化の違いを以下の6つの次元で相対的に比較できる『ホフステードの6次元モデル』を提唱しました。

文化を理解する6つの次元

  1. 権力格差(大きい 対 小さい)
  2. 個人主義 対 集団主義
  3. 男性性(タフ) 対 女性性(やさしい)
  4. 不確実性の回避度(高い 対 低い)
  5. 長期志向 対 短期志向
  6. 人生の楽しみ方 (充⾜的 対 抑制的)

無意識のうちに埋め込まれた価値観の違いを視覚化し、国籍を超えたビジネスやマネジメントをしていく際の指針とされています。

学習進化の5段階モデル

それでは、文化とは何かをヘールト・ホフステードの心のピラミッドから体系的に理解してからどのように活かすかを意識していく必要があります。そのときに、人間がスキルを高めていく時に遷移していく5段階のモデルが能力を高めていくときの学習進化となります。

  • 第1段階「無意識的無能」:何も知らない
  • 第2段階「意識的無能」:意識してもできない
  • 第3段階「意識的有能」:意識すればできる
  • 第4段階「無意識的有能」:意識しなくてもできる
  • 第5段階「無意識的有能に対して意識的有能」:他人に秘訣を教えることができる

このプロセスはどの分野にも応用できます。短期〜長期でスキルを身に着けたいと思ったとき、まずはどんな状況下であっても『第2段階「意識的無能」』に持っていく必要があります。まずは認識をすることで、自分の中で思いつくことができるからです。思いついてできなくてもよく、まずは第一歩が進めたという進捗につながります。

https://speakerdeck.com/sogitani1107/shi-shi-togei-yu-toping-jia-falseguan-xi

学習進化の5段階モデルは Engineering Manager の Advent Calendar で紹介した、評価基準の鉄則とも合致します。第5段階の「無意識的有能に対して意識的有能」は他者に自分が持っている知識やスキルを伝承することができることは成果を出していることと同義だからです。

クロスカルチャーマネジメントと学習進化の5段階モデル

クロスカルチャーという用語を知り、まず第2段階の『意識的無能』で良いので文化が違うことを前提として、自分の振る舞いを変えて行く必要があります。

「ここは日本だから」といって、日本に合わせてもらうのはもちろん良いですが、クロスカルチャーマネジメントのもとでは自身もしっかりと相手を尊重していくことが、コミュニケーションの活性化を最大化できると思いますし、拙い外国語でも通じあうことができます。

外国語を勉強するよりも、クロスカルチャーを理解するほうがコミュニケーションがとてもスムーズになるので、外国語とあわせてクロスカルチャーもぜひ学んでみてください。

おわりに

エンジニア組織として事業を成長させるためにやるべきことは大量にあります。それこそ猫の手も借りたいくらいです。そんなときに組織のことを二の次にして事業成長をすることがベストなのか、それとも3年後を見据えたエンジニア組織にするための土壌づくりをするべきなのか。

もちろん答えはないですが、エウレカに在籍する多様なエンジニアがどんな状況でも成長できる環境をオフィスの状態に限らないでつくっていくことが、ひいては事業成長にもつながってくると信じています。

さいごに、エウレカでは自身の技術スキルを磨きつつ、事業に対して真摯に向き合いたい方や事業成長に向かい続ける組織を構築していきたい方を積極採用中です。まずはお話しを聞いてみたい場合、カジュアルな面談もしていますので、ぜひ気軽にお声がけください。

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Hi, I’m kaneshin. I’m currently working as a software engineer based in Tokyo, Japan.