3.病の名

届かなかった祈り

2016年2月21日11:06集中治療室(ICU)

今日も娘の目は重く閉じたままで意識はない。小さな体には無数の点滴やカテーテルが挿入されている。寝たきりで投薬が続いているので娘の体がむくんできた。娘を見るだけで心が締め付けられてどうにかなりそうだ。

2016年2月21日11:47神社での祈り

家族で病院近くの神社にお参りに行った。何度も何度も娘の無事を願った。瞼の裏には元気な頃の娘の笑顔が浮かんでいた。あの笑顔をもう一度見たい。

2016年2月21日11:47集中治療室(ICU)

看護師の吸引処置中に娘がわずかだが顔を歪めた。意識を無くしたあの日以来、初めて娘が出来た意思表示だった。その後も吸引処置中は両手足をわずかに動かしたりと娘の意思表示が時折見れた。


2016年2月22日16:00MRI(核磁気共鳴画像法)検査

発症から3日目の夕方、MRI検査を行った。娘はまだ自発呼吸が出来ないので、主治医による手動の人工呼吸器を使用しながらの検査だった。機械式の人工呼吸器から手動の人工呼吸器に切り替える処置を見るだけでも気が気じゃなかった。主治医の一挙手一投足に娘の命はかかっている。

手動の人口呼吸器対応によるMRI検査は何とか無事に終わった。後は検査結果を待つのみ。不穏な空気を断ち切るように僕は祈り続けていた。

『きっと大丈夫。大丈夫。』と僕は妻に言っていた。妻に言いながら自分自身にもそう言い聞かせていた。

2016年2月22日18:00MRI(核磁気共鳴画像法)検査結果

主治医の先生からMRI検査の結果を説明してもらった。診断結果は痙攣重積型(二相性)急性脳症(AESD)との事だった。今までは脳症の疑いだったが、これで確定してしまった。発症初日より貪るようにインターネットで脳症について調べていた僕は、インフルエンザ脳症ガイドラインを読んでいて、そうだろうなとは思っていた。思っていたけど現実を突きつけられると受け入れきれない。先生の言葉を信じたくなかった。何かの間違いだと思いたかった。


このような悲劇が他の子供に起きて欲しくはないが、もしあなたの子供がインフルエンザにかかり、その後、痙攣を起こしたとしたら必ずこのインフルエンザ脳症ガイドラインを熟読して欲しい。医師の治療は完全にこのガイドラインに則っていた。発症例が少ないのでノーエビデンスの治療法も多いが、このガイドラインの治療法が今出来得る最大の治療法だからだ。

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