どこでもいい切り取り線

今日が楽しみでしょうがなかった。でも久しぶりに会うから、お互いぎこちなくなってたらどうしよう…。それぞれ個別で会ったりしているけれど、五人で集まるのは約1年ぶりなのだ。同じキャンパスにいても、一人は滅多に学校に来ないし、研究会はみんな違う分野だし、顔を合わせることはない。久しぶりの再会にちょっぴり不安はあったけれど、それでもやっぱりみんなで集まるのが楽しみで朝からウキウキ気分だった。

13時にカホが浴衣を持って家に来た。こないだぶり~夏休み前半戦も終了だね!と近況報告をしながら、マシンガントークはしばらく続いた。16時になって、ようやく待ち合わせの時間を気にし始めて、急いでお母さんに着付けてもらってから二人で家を出た。駅でナオキと合流して、18時の待ち合わせに遅れるねとのんきに話しながら三人で浜松町へ向かう。電車の中で、あとの二人に合流したらどんな感じになるんだろうと、ワイワイ話していたらいつの間にか浜松町に着いていた。駅から待ち合わせ場所まで8分、三人で歩きながら話していると、後ろから聞き馴染みのある声が聞こえてきた。後ろを振り返ると、ケラケラ笑ってるマロとヒサがいた。さっきまで再会のぎこちなさを心配していたのに、そんなものはすっかりどこかへ消えていて、とにかく久々に集まれたことの喜びが爆発し、ノンストップ状態で永遠と話していた。


「なあ、俺らガチで一回うたってみねえ?」

2年前、私が大学に入学してすぐのとき、入ったばかりのアカペラサークルで、同期の二人の男の子(ナオキとヒサ)にバンドを組もうと誘われた。入学したてのウキウキ気分もあって、もちろん二つ返事でOK。数日後、もう一人男の子(マロ)と女の子(カホ)を誘って、五人バンドができた。始めたときは、ただただ声を重ねて歌うのが楽しくて、たくさんの時間を一緒に過ごしながら歌った。しかし、初心者同士が声を重ねて一曲を奏でるのは簡単ではなく、試行錯誤しながら様々なことについて話し合った。議論が喧嘩に発展することも多々あり、練習時間の空気感が最悪なときも多くあったが、カチッと五人の声が合わさって心地よいハーモニーになった瞬間がたまらなく楽しくてしょうがない。その一瞬の出来事にみんな虜になっていたからこそ、没頭して2年間一緒に過ごしながら歌っていられたのだと思う。しかし、3年生になるにつれて環境が変化したり、サークル外の活動が忙しくなったことから、自然と五人で歌うことがなくなってしまった。ぽっかり何かがなくなってしまったような気がしたが、それぞれ個別で会う機会があったので、完全に解散をしてしまったようには感じなかった。

時々、スマホのアルバムを遡って、あの時期に切り取られた写真を一枚一枚見返す。この五人で撮った写真は、ブレていたり顔がキレイに写ってないものだったり、どれも写りが微妙なものばかりだ。いわゆる、キレイな写真ではないけれど、それでいい。その瞬間が、心地よくて楽しい時間だったからこそ、キレイに写ってなくても、お気に入りの写真達なのだ。そんな写真は、いつ振り返ってもあの時の記憶が蘇り、ふふっと嬉しくなってしまう。こんな仲間に出会えて、あんな時間を過ごせた私はしあわせ者だ。


「俺、自撮りうまくなったから撮るよ!」

「え~顔がゆがんでるからもっとちゃんと撮ってよ~笑」

納涼船で揺られて、狭い通路に横並びで立ちながら、風の音に負けないよう大声で話してた。このいい時間を写真に収めたくて、自撮りをするのに必死だ。撮った写真は、やっぱりどれも下手くそでブレブレだったけど、そんなことさえも嬉しかった。結局のところ、あのときどの瞬間を切り取っても、きっとどれも素敵な写真になったのかもしれない。見切れてるビールの写真も、暗すぎて見えない写真でさえも、どれも大好きな思い出だ。

納涼船で一番お気に入りの写真
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