ラーメン屋さん

ぶらり散歩 高座渋谷編

Yusuke Haga
exploring the power of place
4 min readSep 16, 2016

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私は特に用事もないのに、途中下車をしてそのまちを歩いてみるということをときどきする。自分にとって親しみのないまちを歩き、観察するのは新鮮な刺激が多く楽しい。
今回は、高座渋谷駅で途中下車したときの話をしようと思う。

高座渋谷駅の周囲(だいたい駅から徒歩10分圏内)を歩き回った感想は、暮らしやすそうなのどかなまちだなという印象をもった。例えば、駅に隣接しているビルには、スーパーやスーパー銭湯があり、少し歩けばファッションセンターしまむらやニトリ、イオンなどもある。普通に生活するぶんには何不自由ない。住宅街のなかには子どもが遊べるちょっとした公園もあった。カラオケ施設やパチンコ屋を見かけなかったからなのか、静かで治安の良さそうな印象ももった。

さぁ、ここからがこの話の本題だ。これだけ、歩くとやはりお腹が減る。

こういった途中下車をして、そのまちを散歩して、そしてそのまちにあるお店でごはんを食べるというのもこの散歩の楽しみのひとつだ。今回は、歩いているときに気になったラーメン屋「麺処52」に入ってみることにした。
店内には所狭しとサインが並んでいた。これだけ多くの著名人が訪れているということは、さぞかし美味しいラーメンなんだろうと期待が自然と高まった。

麺処52の店内

お店はどうやらご夫婦で営まれているようだった。旦那さんがラーメンをつくり、奥さんがそれをだすというその様子にどこかホッコリした気分になった。

はじめて入ったお店では、必ず「その店のオススメ」や「人気ナンバーワン」といったものを注文するようにしている。そういった料理にその店のアイデンティティーが凝縮されているような気がするからだ。
ここでは、「ラーメン」を頼んだ。家系ラーメンという感じで美味しかった。店内を眺めながら、ラーメンをすすっていると違和感を感じた。

ラーメン屋に入ると必ず何か料理を注文して、食べるというのが普通だと思っていたし、そういった光景しか今まで目にしてこなかった。しかし、この店内では、セルフサービスの水を慣れた手つきで手に取り、店主やラーメンを食べている客と談笑しているという光景がみられた。しかも1人だけかと思いきや、私がラーメンを食べている20分程度の間に3人もいたのだから驚きだ。
このラーメン屋が食事をするだけの場所ではない状況が違和感の原因だったのだ。

しかしながら、この状況に違和感をはじめは感じたものの、すぐにその会話をしている音や風景、その状況が心地よく感じた。きっとそこにいわゆる「昔ながら」の人のつながりやまちのなかにお店が溶け込んでいる感じからどこか懐かしさを感じられたからだろうと思う。

こんなにも、人が気軽に訪れ、会話をし去っていける雰囲気づくりに一役かっているのはおそらくこの店のつくりなのではないかと考えた。多くのお店では出入り口はひとつである。しかしながら、ここ「麺処52」はみっつの出入り口があるという特徴がある。この出入り口の多さが、店の様子をより外から見えやすくし、店内と店外の垣根を低くしているのだと思う。

麺処52の店構え

こんなにも、まちの人が集う場所の機能もあわせもったラーメン屋、いやまちの人との距離感を考えると親しみを込めて「ラーメン屋さん」と出会ったのははじめてだ。商店街ではしばしば、買い物中のおばちゃんがそこのお店のものを買わなくても集い、語らっているという場面をみかけたことはあるが、ラーメン屋でははじめてだった。

普段親しみのないまちに行くと思いがけない出会いがときどきあったりする。海外に行って、自分の住んでいる場所や文化、食事など大きな部分の変化を感じるということはよく話に聞く。海外に行かずとも、少し離れたまちを観察することで、小さい違いかもしれないが、自分の住んでいるまちの良さを再発見する手がかりになったり、人々の多様性を感じられたりする。それがたまらない。また、たまには途中下車をして、まちを散歩してみようと思う。

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