余白とフットボール

Gaku Makino
exploring the power of place
4 min readJun 19, 2019

サッカー(フットボール)は余白(スペース)が命のスポーツである。サッカーの経験や知識のない人はなにそれ?と思うかもしれないが、サッカーと余白は密接な関係にある。

僕自身、小中高でサッカーを10年プレイしてきて、20歳を超えた今でもサッカーゲーム(FIFA)を楽しんでいる。「スペース!スペース!」と何回言われて、言ってきたことか。選手から見ても、試合全体で見ても、サッカーに余白は欠かせない。

まず、試合全体の観点から、サッカーの余白について語っていく。

「オフサイド」という言葉を聞いたことがあるだろうか。これは、攻撃の際に使えるスペースを制限するために生まれたルールだ。下の図を見て欲しい。オフサイドがない時代、キーパーとディフェンスの間(黄色のゾーン)のスペースに選手をおいておけば、そこにボールを出すことで簡単に点が取れた。下の図のように、オフサイドがなければ、簡単にゴールが決まってしまう。

赤い点線がオフサイドライン、パスが出た時に黄色いエリアにいるとオフサイドになってしまう

次に、攻守におけるスペースの重要さを語ろう。

守備の時は、相手にスペースを与えないことが大切だ。なぜなら、ボールを持つ相手にスペースを与えてしまうと、ドリブルでもパスでもシュートでも自由な選択肢を相手に与えてしまうからだ。そのために、守備で重要視するのは、「コンパクトにして、相手にスペースを与えないこと」だ。「コンパクト」とは、味方の選手との距離を近くして、さらにボールを持つ相手との距離も近くすることである。下の図で見れば一目瞭然だが、左の図より右の図の方が守備の陣形がコンパクトになっていて、相手にスペースを与えていない。結果として、可能だったシュートコースやドリブルできる範囲も狭まり、攻撃の自由を奪っている。

守備をコンパクトにすることで、相手の攻めの自由を奪う

では、攻撃の際はどうするか。守備とは反対に、「スペースを作ること」が重要になる。味方との距離をできるだけとり、コート全体を使えるようにする。そして、使えるスペースがない場合、自分たちで作るということだ。スペースを作る方法は様々あるが、ここでは誰かが囮として走ることを挙げる。下の図のように、スペースを作って活用することで、効果的に攻撃をすることができる。

スペースを潰してくる守備に対して、いかにスペースを作るかが攻撃のポイント

理論的に語ってきたため、実戦ではここまで綺麗にいかないが、このように戦術的に見ると、サッカーは常に余白をせめぎあっているスポーツだと言える。

最後に戦術の話から離れて、サッカー選手の見た目の余白の話をする。日本人の選手は例外だが、サッカー選手の見た目を想像して欲しい。欧州のトップ選手の多くはタトゥーを入れる。ベッカム、メッシ、ネイマールと多くの選手がタトゥーで肌の余白を埋めてきたのはなぜか。もちろんそこにメッセージを込めている場合もあり得る。だが、それよりも相手を威嚇するためにタトゥーを入れているのではないだろうか。マフィアやマオリ族もそうであるように、肌の余白をタトゥーで埋めると圧力があり、強そうに見える。勝負師として、試合前から相手にいかにプレッシャーをかけるかは非常に重要だ。無意識の行動かもしれないが、怪物や闘将などと言われる選手は皆タトゥーが入っていることからも、この説は馬鹿にできないはずだ。

”闘将” セルヒオ・ラモス 公式Twitterより

ここまで、様々な観点から余白とサッカーを繋げて考えてきた。スペースの鬩ぎ合いは絶えず行われ、ボールが相手に渡るだけで、自分が大事にしていたスペースの意味が一瞬で変わる。味方と相手の位置が常に変化し、ボールの位置も常に動き続ける。立場や環境に応じて、余白の意味が変わっていくのはサッカーだけではなく、普段の生活にも同じことが言えるのかもしれない。サッカーと余白という観点が、僕たちの日常を見つめる、新しい視座を与えてくれている。

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