切り離して、拾い集める

Marina Yoshizawa
exploring the power of place
4 min readOct 19, 2017

わたしはこの間の夏休みに、はじめてのひとり旅と称してカンボジアに繰り出した。思いつきで飛び出した旅だった。そんな『ひとり旅』で、わたしは毎晩日記を書いていた。(実はサボってしまった日もあったが)

旅を終えて1ヶ月経った今、その日記を見返してみた。

9.11 9.12(時差は2時間)

飛行機の中。深夜便に乗ってる。眠れない。映画は1本観て飽きちゃった。眠れないのはワクワクしているせいなのか、それとも緊張と不安のせいなのか。よくわからないし、多分両方だろう。そんなことよりも、本当に飛び出してきちゃったことに驚いている。

きっかけとか理由とか、色々考えてみたけれど、衝動としか言いようがないのかもしれない。なぜかわからないけど、今しかない、今行かなきゃって思ったから。計画もほとんど立ててないし、どうなるかわからなくて不安もあるけれど、やっぱりワクワクしてしょうがない。この旅がいいものになりますように。

9.12

今日を終えて、なんだかやっと海外に来たんだという実感が湧いて来た。今日一日中ずっと一人で行動したけど、やっぱり綺麗な景色とか、素敵な時間は人と共有したいと思った。ひとりで心ゆくまで楽しめるのはいいけれど、やっぱり感動した時とか心が動いた瞬間は人と分かち合いたい。今まで当たり前のように誰かと一緒に出かけて、色々な経験をしてきたけれど、そこでその誰かと共有した時間や感情は、実は本当に尊いものなのかもしれない。

9.13

朝一でアンコールワットに朝日を見に行った。たまたま同じ宿で他にも行く人がいて、その人たちと一緒に朝日を見た。本当に綺麗だった。昨日はずっとひとりだったから、今日、みんなと一緒に感動を共有できたことが本当にうれしかった。夕方はトンレサップ湖で夕日を見た。これも、出会った人たちと一緒にボートに乗って見に行った。昨日とは違ってよく晴れていたから、すごく綺麗に見えた。けれどきっとそれだけではなくて、心が動いた瞬間を一緒に共有できる人がいたから、もっと心に響いたんだろう。今日見た景色は、多分ずっと忘れない。

9.15

今日は朝からプレアビヒアに行った。天気が悪くて景色はみえなかった。今は、宿に帰って来てぼーっとしてる。やっとひとりで何もしない時間ができた気がする。この旅を通して、普段は気づかなかったことをたくさん発見した。いつもと全く違う環境に身を置くことで、今まで気づかなかった自分の側面を見つけることができるのかもしれない。今回ひとりで旅をしたことで、今までの自分がどこか臆病だったって気づいた。旅に出ると一皮むけるとよく言うけれど、わたしも今までの臆病だった自分から少し変わることができた気がする。

旅は、カンボジアの観光地であるシェムリアップに4泊5日で滞在するというスケジュールだった。衝動に任せて飛び出してきてしまったのは、今思えば、心のどこかで日常を切り離せるどこかに飛んで行ってしまいたいと思っていたからなのかもしれない。

旅を終えて1ヶ月経った今改めて、わたしは自分の気持ちに素直になることに臆病だったと感じている。何も考えずに、自分の気持ちに素直になってはじめの一歩を踏み出してみたら、今まで重荷になっていた何かが切り離されたかのように、足取りが軽くなった。

早朝のアンコールワット
トンレサップ湖。ボートから見えた夕日。

旅の途中、ふとした瞬間に、たくさんの昔の旅の思い出が蘇ってきた。忘れかけていた家族旅行の思い出から、修学旅行、大学生になってからの旅行まで。今までの旅には、必ず隣に誰かがいてくれた。

ひとりは嫌いではない。むしろ好きだ。けれど、やっぱり本当は誰かと一緒にいる方が好きなのだと思う。今回ひとり旅をすることで、誰かと一緒に感動を共有できる喜びに気づくことができた。ひとりでも大丈夫、と飛び出してきたけれど、旅先で考えていたのは周りにいてくれる人たちのことだった。わたしの周りにはたくさんの人たちがいてくれていること、そしてその人たちと出会えたこと、共に時間を過ごせたことの尊さが、ひとりになってやっとわかった。

色々なものを切り離して飛び出してきた旅だった。けれど、時が経つにつれて切り取られたものを拾い集めた旅でもあった。でもこんなのはきっとほんの一部で、知らぬ間に引かれている切り取り線はまだまだあるに違いない。さて、次はどこに行こうか。

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