愛着がない街へ

Nuey Pitcha Suphantarida
exploring the power of place
4 min readDec 19, 2019

2016年、留学生としてタイから来て、日本はもうすぐ4年目。来年は卒業予定だ。これからどうするか、どこに行くのかをしみじみと考え始めた。まだ8,9ヶ月あるが、長くも短くもない。気づいた時にはまた新しいチャプターが始まっていそうだ。

最近、自分の日本で送った生活を振り返る機会があった。恵比寿で歩きながら、東京という街は私にとってどんなものなのかをぼんやりと考えた。恵比寿に初めて来たときは、2017年の頭だった。その時、タイのドラマの影響を受け、新宿にあった中古カメラ屋さんでニコンFEのフィルムカメラを買って、写真に興味を持ち始めたころだった。恵比寿は東京のどこにあるのかを気にせず、一人で東京都写真美術館の展示を見にきた。駅からすぐガーデンプレイスに向かった。Google Maps をずっとみながら、頭を上げないでぶらつかないように頑張った。やっと美術館についたら、片言の日本語でレセプションに伺った。

「Student Cardは discount ありますか?」

見に行きたかった展示の名前を指差して、お金を渡した。

展示会場に行き写真の世界に入ったら、緊張感はまだ残っていたが、少しずつリラックスできた。展示をまわり終わったら、一息休憩して、2階のバルコニーで1階のカフェにいる人達を眺めていた。帰り道はすぐ駅まで歩いていた。展示の内容は今は思い出せないが、美術館の窓に映る西日は未だに覚えている。恵比寿についてはこの美術館しか覚えておらず、ガーデンプレイスや恵比寿という街のことは認識していなかった。

View from above

それでも、日本に来たばかりの私にはこの美術館が個人のトップ美術館リストにすんなりと入った。

次に恵比寿に行ったときも、また東京都写真美術館の展示を見に行った。この時、親友を連れて行った。ちゃんとルートを覚えた私は自信があるふりをして、彼を安内した。この美術館の存在を知らなかった彼に私から紹介することで、「私も東京のいいところ知っている!」という誇りを持ち始めていた。そのあと、少しガーデンプレイスと恵比寿商店街の辺りを散歩することができた。渋谷のようにいろいろな店があったからこそ、情報量が圧倒されるほど多かった。結局レストランをGoogleで探したが決まらず、適当に中華屋さんに入って、一緒に夜ご飯を食べた。

2年後の今でも、恵比寿に行ったら必ず写真美術館による。そして、少しずつ勇気をもってその周りを散歩している。散歩しても、恵比寿はまだなじみがない場所だ。

私にとっての東京は、ホームでも観光地でもない、不思議な立場にあるところだ。街と言っても、とても広くて、まだ行けていない場所がたくさんある。そして恵比寿は、東京の他の場所のように、目的がないと接近しにくい街だ。会いたい人や行きたい展示がないと、めったに来ないところだ。東京に行くことになったら、待ち合わせがしやすい小田急線の新宿や渋谷などになってしまう。もしかしたら、写真について興味を持ち始めてなかったり、美術館について調べてなかったら、恵比寿と付き合う機会はなかったかもしれない。ただ通るだけの駅だったかもしれない。

東京にある場所へ接触するには、特定の場所でのかかわりからスタートすることが大事だと思う。その中で、人とも付き合って、だんだん思い出を作っていく。一人で東京を歩き回ることは楽しいが、だれかと行くことになったらもう一度寄りたいところになる。

ずっと美術館の話をしていたが、やっぱり私の記憶の中での恵比寿のサンセットが一番好きだ。写真美術館の前にあるアイスクリームショップの反対側のベンチに座って people watchingをした。 🌞

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Nuey Pitcha Suphantarida
exploring the power of place

2nd year student at Keio University, SFC. Thai-born. Currently in Japan