歩くポイントカード
今年の4月に入ってから、家にいる時間が長くなった。理由は言うまでもなく、新型コロナウイルスの影響により外出を自粛していたからだ。むしろ、大学の授業をはじめとしてサークル活動から友人との飲み会までほとんどのことがオンライン化を余儀なくされ、外に出る必要がなくなったからと言ったほうがあっているのかもしれない。一日中部屋にこもっていると、棚にしまわれることなく積み重なっている本や床に散乱した小物が目につく。前もって決めてある定位置にそれぞれの物を戻しながら、今年の初めに古い財布から新しい財布へお金やカードを移したときのことを思い出した。
新しく買ったのはCOMME des GARCONSの財布だった。私はめったに財布を変えないので、今でも新しい財布を鞄から取り出すときは、周囲に見せびらかして自慢したくなるほどに気分が高揚する。古い財布よりも新しい財布の方が小さかったため、移すときに大量のポイントカードを減らす必要があり、私は頭を抱えた。
私は、一部の人から「ポイントおばさん」、「歩くポイントカード」と呼ばれている。その名の通り、私はポイントへの執着が強い。人生における総ポイント獲得数を競う世界大会があったら、間違いなく優勝できるだろう。さすがに言い過ぎかもしれないが、それくらいにポイントに労力と時間をかけ、誰よりも愛してきた自信がある。ポイントはすばらしい。現在、私たちはお金をつかって多くの交換を成り立たせている。レストランでの食事にも、雑貨屋での小物の購入にも、テーマパークで遊ぶのにも、お金が必要だ。ポイントはそんなお金のやりとりにワクワクを与えてくれる。たとえば、100円につき1ポイントを付与してくれる店で1000円の決済をしたら、10ポイントが貯まる。たった10ポイントだと思うかもしれないが、それが少しずつ貯まっていくことを考えると、店からのささやかなプレゼントのようで嬉しい気持ちになる。
緊急事態宣言によって多くの店が休業を余儀なくされたとき、私はポイントの有効期限が気がかりで仕方なかった。ポイントは年度が終わる3月末に期限を迎えることが多いが、なかには6月に期限を迎えたり最終利用から1年後に失効してしまったりする場合もある。少しずつ貯めてきたポイントを使用することなく失効させてしまうのは惜しいと思いつつ、店が休業している以上どうしようもなかった。そうしたことを考えていると、これまでポイントが私の行動や選択に大きく影響を与えてきたことに気づいた。ポイントは私にとってお店選びの重要な基準だ。たとえば、横浜駅で買い物をする際、SOGOやPORTA、JOINUSなどの商業施設は利用するが、LUMINEはめったに利用しない。なぜなら、前者3施設はそれぞれ独自のポイント制度があるのに対し、LUMINEにはないからだ。また、店がキャッシュレス決済に対応しているかどうかも重要な基準になる。なぜなら、ほとんどのクレジットカードや電子マネーには、それぞれ決済金額に応じて一定のポイントが貯まる制度があるからだ。私はポイント制度がない店をミュート状態にし、ポイントが貯まる店にばかり足を運んできた。しかし、そう思っても、やっぱりポイントは魅力的だ。
新しい財布のポケットで窮屈そうに並んでいるポイントカードを見つめながら、決心したことがある。それは、これからもポイントにこだわり続けること。休業期間が終わったので、たくさんポイントを貯めに行くこと。そして、多くの店にポイント制度を普及させていくことだ。