臭う渋谷

Gaku Makino
exploring the power of place
4 min readDec 19, 2018

最近の渋谷(ここでは渋谷駅周辺を指す)が臭う、らしい。今の渋谷が臭うのかということについて、本文では考察する。

とある日の246

ことの発端は、とあるサンドウィッチ屋の店主との会話だった。彼女は70才代の女性で、渋谷にて40年以上その店を営んでいる。彼女曰く、彼女の40年以上の渋谷ライフの中でも、今の渋谷は特別臭っているらしい。

「あなたたち、渋谷の臭いが気にならない?」目を見開いた彼女は、僕に聞いてきた。「うーん、臭うような臭わないような。」と答え、渋谷の臭いを思い出そうとした。だが、思い浮かんでくるのは渋谷のトイレの臭いのことばかり。これまで、渋谷自体の臭いなど意識したこともなかった。そして、僕が渋谷に来るようになったのは、ここ3年ほどの話だ。それ以上前の渋谷を僕は知らない。40年以上渋谷にいる彼女の”最近”がここ10年程のことだとしたら、僕の渋谷暦3年では比べられる歴史がないので、彼女の違和感を理解できないかもしれない。

彼女によると、臭いの原因はいくつか考えられるらしい。一つ目は、渋谷の地理的な構造である。渋谷は、渋谷駅を中心とした、すり鉢状の地形になっている。そのため、センター街などの繁華街を中心に、水はけが悪くなっている。それが原因で、渋谷中の臭い(の元となる水)が駅を中心に集まってきてしまうようだ。

そして、彼女が渋谷の臭いの原因として、一番気にしているのが、二つ目の原因とされる巨大なビルの存在である。彼女曰く、渋谷が臭くなるのは、深夜から朝方にかけての、人々が活動をしていない時間だという。朝方、開店準備をしていた彼女は、その臭いが気になってしょうがなくなった。そして、渋谷区に臭いの元を電話で尋ねたという。しかし、渋谷区は「それは都の管轄だから、都に連絡してください。」と指示し、彼女はたらい回しにされ、臭いの元は結局わからなかった。そして、全く予想もしない文脈から、彼女は臭いの原因を特定することになる。ある日、彼女は水道管の工事のために、水道屋を呼んだ。工事を終えた水道屋と彼女が世間話をしている時、渋谷の下水処理事情について水道屋が話した。そこでわかったのが、「臭いの原因は巨大ビルの汚水槽システムにある。」ということだった。巨大なビルの汚水槽システムは、電力の節約のためトイレなどを使わない夜は稼働しない。つまり、溜められた汚水が流されていかれずに、悪臭が下水管を通して、深夜から朝方にかけて地上に出てくるのだ。それを知った彼女は、再度東京都に連絡し、ビルの汚水システムを深夜にも稼働するように申請したという。それから、東京都がビルに汚水システムを稼働するように注意したり、下水の流れを良くするための下水の掃除をするようになったりしたという。それでも、1ヶ月ほど経つと、ビルが汚水システムを稼働しなくなってくるので、臭いがする度に、彼女が東京都に連絡するという繰り返しになっている。

とある雨の日の渋谷(桜丘)

彼女がこの問題を発見し、解決しようとしたのは、彼女の特殊な状況も影響している。彼女の店は、個人飲食店であり、朝早くから店を開く(上述したように、朝は渋谷が臭いやすい)。朝早く渋谷を歩いている時に、店の前が臭かったら、誰もサンドウィッチを買おうとはしない。商売の責任が自分にある個人店であることと、朝からお客さんがくることが彼女に行動力を与えたのかもしれない。逆にこれらの条件が揃わない場所では、この臭い問題は注目されずに、ほったらかしのままになってしまうのだろう。2020年にはオリンピックを控える、渋谷。日本で一番ポピュラーな街、僕も頻繁に使う街なので、綺麗な渋谷であって欲しい。

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