「前から気になってたんだけどさ、月読尊ってなんであまり古典で語られてないんだろうね」
胸元まであった長い髪をバッサリと切った。
おそらく30センチ以上は短くなったと思う。美容師さん曰く、2年半分ぐらいの長さだそうだ。考え事をしている時に髪をいじる癖があるわたしは、ちょっと手持ち無沙汰になった。
わたしの最近の関心は、もっぱら「佳き人」になることである。
365日のコンプレックスライフというタイトルをつけて、卒業プロジェクトをしていたのも、佳き人になりたいという思いが強かったからだ。
佳き人というのは、辞書で意味をひくと「美しい人」だという。和英辞典をひくと「Good man」だ。そうだ、わたしはそんな人になって自分を誇りたい。
2016年12月中旬、twitterを眺めていると衝撃的なニュースが目に入ってきた。
「スペースワールド閉園へ」
北九州市八幡東区にある遊園地、スペースワールドが2017年12月いっぱいで閉園することが発表された。かなり衝撃的なニュースにデマなのではないかと思うほどだった。当然、僕の友人も驚きのコメントを寄せていた。信じられない、悲しい、寂しいなど、やはりどれも名残惜しさを感じるコメントばかりであった。
赤いソファーの上で眠る、幼い私の写真。そして、その横に祖母の丁寧な字で添えられた、日付と「お店のお気に入りのソファーでお昼寝」というコメント。それは、祖母が、私が遊びに行くたびに写真を撮っては、少しずつ作っていってくれた、私のアルバムだ。赤ちゃんの頃から小学校低学年くらいまでの写真が順番に並べられ、それらは4冊分になって、今でも福井の祖母の家で保管されている。仕事をしていて忙しかった母は、アルバムを作る手間を惜しんだため、祖母の作ったアルバムが唯一、私の成長記録の役割を果たしていた。そんな事情もあって、自分のアルバムがあること自体が嬉しかった私は、小さい頃はよく、「私のアルバム見せてあげる」と、作ってくれた祖母本人に見せびらかしたり…
ベンチには不思議な引力がある。あの不思議な魅力はなんだろう。疲れている時の一休みはもちろん、疲れていなくてもベンチを見かけるととりあえず座るか、と引き寄せられる。友達と話しているひとも、一人で歩いているひとも、仕事帰りのひとも、誰もが吸い込まれてしまう。きっと、毎日友人とお弁当を食べたなあとか、恋人と…