スタートアップのブランディングに必要な3つのフレームワーク

Ayako Shimatani
Fashion-Tech News
Published in
8 min readFeb 16, 2016

Google元マーケティング担当者Arielle Jackson は、SquareやCoverなど数々のスタートアップのブランディングを手助けしてきた。

彼女がブランドの目的、ポジションそしてパーソナリティを決定するための非常に有益なフレームワークを解説する。

ブランドとは

ブランド=ロゴだと思い込んでいる人も居るが、ブランドとは、人々があなたをどういうものだと思っているかという事だ。そして、必要な準備を早々に行えば、ブランドをよりコントロールする事が可能だ。

ブランドとは企業の理想のことだ。例えばVolvoと聞けば、人々は安全性を思い浮かべる。それは、Volvoが70年間も安全という単語を支配しようと努力してきたからだ。事実、Volvoは安全の概念そのものだ。シートベルトを発明し、その発明を独占するのではなく、他社の車も安全であるようにとその技術を明け渡した。Volvoのマーケティングメッセージである安全性は製品への信条や企業のコアな部分にも一貫している。

勿論、スタートアップが70年もかけてブランドを作り上げるのは無理だ。

そこで、今回は有名なマーケティングミックスの4PではなくPurpose、Position、Personalityの3つのPを紹介する。

Purpose(目的)

まずは目的を明確にする。目的とは、あなたがどのような形で世界を良くしてきたいか。それを言葉に表して、あなたの会社の皆が言えるようにするべきだ。

The big ideaLという方法を使い、目的を見出すのが良いと、Jackson。

上の図のCultural tensionとは世界で起きている事であなたの起業に関連があること、そしてもう一つの丸(Brands best self)は、ブランドの理想の姿。その2つが交わる部分が、The big ideaL=目的となる。

まずはあなたの会社にとってのCultural tensionをすべて書き出し、会社が製品やサービスを通してできる事を書き出す。そして、それぞれの丸について一言でまとめ、
2つをまとめて
「あなたの企業は、…が実現できれば世界はより良くなると考えています。」
の…を埋められるようにしましょう。”

ここで使われた言葉は、マーケティング・プラットフォームとなり得るためとても大切だ。

例えば、パーソナル・ケアブランドのDoveはリサーチの結果2004年、女性の4%しか自分を美しいと思っていなかったという情報を得た。
DoveのCultural tensionは多くの女性が美に自信を持っていない事だった。そしてDoveができる事は、効果がある優しい石鹸を提供する事だ。
それをまとめると、Doveの目的は、
「女性が自信の体に自信を持つ事ができれば、世界はより良くなる。」となった。

そして、Doveはその一言を中心にマーケティングを展開した。現在も継続しているReal Beauty キャンペーンには常にDoveの石鹸を想起させる白い衣類を着用した様々な体型や肌色の女性が出てくる。消費者は、Doveの石鹸から身体に自信を持つ幸せな女性を想起するようになった。

テクノロジー企業で例えれば、Jacksonが務めるeeroは自宅のWiFiを素早く、安定性を高くするホームWiFiシステム企業だ。

eeroにとってのcultural tensionとは、多くの人がWiFiを生活の大部分で利用しているにも関わらず、技術が時代遅れだという事だった。既存のWiFiルーターでは、長いバッファ時間や接続不能のデッド・ゾーン、時に押しにくいリセットボタンを押さなければいけない。ソフトウェア面でもハードウェア面でも改善が必要とされていた。

そこで、eeroはWiFiの不都合な点を解決し、人々が楽しくWiFiを使うようにする事ができる。
「もし人々が難なくWiFiを使う事ができれば、人々の生活はより良くなります。」と、Jackson。
eeroの目的は、
「テクノロジーが人々の生活をより良くする事ができれば、世界はより良くなる。」だ。

ここでWiFiを文章に含んでいないのは、今後10年先を考えての事だ。10年後にはWiFi以外の事業を行っている可能性もあるからだ。目的は10年先を考慮するべきだ。

Position

ポジショニングとは、既に知っている他社と比べて、顧客があなたをどのように見るかだ。あなたがどのように違ってユニークなのかを、顧客に伝えるのだ。

ポジショニングは1年半ほどを念頭に考える事だ。

そして、目的を決定する際は会社を中心に考えるが、ポジショニングを決定する際は製品が中心となる。ポジショニングは製品が何をもたらすのか、どのように他社と違って、良いものなのかを明確にする。

以下の空欄を埋める事が役に立つ。

(ニーズ/機会)である(ターゲット顧客)にとって、
(製品名)は(製品の利点)の(製品の種類)だ。
(ライバル社製品)と違い、(製品名)は(製品差別化の要因)だ。

これだけではよく分からないだろう。
Gmailの例を使うと

多くのE-mailを受信する、Googleユーザーにとって、
Gmailはメールを整理するのではなく検索できる無料のメールサービスだ。
他社のメールサービスと違い、Gmailは容量が1GBありメールを削除する必要がない。

このポジショニングが作成されたのは11年も前だ。現在、容量こそ変われども、ほぼ同じ事がいえるだろう。これは良いポジショニングの例だ。ポジショニングは1年半ごとに変化してもいいが、全く変わらなければいけないという訳でもない。

ポジショニングを考える際に忘れないでおきたいのが、製品の利点と差別化の要因の違いだ。製品の利点とは、あなたの顧客が他の人にその製品の良さ伝える時に言う事だと考えよう。差別化の要因とは、その利点を信ずるに足る理由の事だ。

例えば初期のGmailユーザーはAOLを使っている友人に、
「いつもメールを整理していて大変そうだけどGmailを使えば、整理しなくても検索できるよ。」と伝えるだろう。これは、製品の利点だ。
そしてその友人はGmailはGoogleの製品で、1GBの容量があるから、それを信用する。

ポジショニングは企業の内部の人々に製品について手短に説明するためにも有益だ。また、巧みな言葉で表現する事も大切だ。

パーソナリティ

目的とポジショニングを明確化すれば、最後は企業のパーソナリティを決定する。
パーソナリティは、あなたが”何を”言うか、ではなく”どのように”物を言うかだ。
それは話す時のあなたの声や、文章の書き方に現れるだろう。

もしパーティーで自分の会社に会ったとすれば、彼/彼女をどうやって説明するか?と考え、思いつく形容詞を並べてみよう。そしてその中から一番似合う3つを選ぶ。

eeroの3つの形容詞は、賢い、ゆったりとしている、話しかけやすいだった。
このようなパーソナリティの説明はコピーを書く際に役立つ。

まずはつまらない文章を考えて見る。それから、3つの形容詞を思い出し、まずその形容詞が全く当てはまらない文を書く。次に、その形容詞を当てはめすぎた文を書く。最後に、ちょうどよい具合にパーソナリティを混ぜた文章に変えてみる。

eeroの例を用いると、こうなる。

ブランディングには目的・ポジション・パーソナリティの深い考察が必要だ。

このフレームワークを使う事で、企業の今後10年間の目標や、今後1年半の市場での足がかり、そして企業のパーソナリティを明確化する事ができる。
Jacksonはこれを早期に行う事を勧めている。そして、起業が発展すれば、再度繰り返して行う事だ。

記事セレクト: Yujiro Numata
翻訳: Ayako Shimatani

--

--