ユニコーンバブルは起きているのか?

Ayako Shimatani
Fashion-Tech News
Published in
7 min readOct 5, 2015

ユニコーンという言葉は、2013年の11月にAileen Leeが最初に使用した単語だ。Leeはユニコーンを、「$1 billion以上の企業価値のある、2003年以降に設立されたUSのソフトウェア企業」と定義した。

その後定義は変わり、今やユニコーンは世界のスタートアップを含み、非上場企業に限定される。最も変化が大きかったのはユニコーンに該当する企業数で、Leeが定義した時点で39社だったユニコーン企業は、フォーチュンのリストに100社も掲載されている。多くの人がユニコーンはシマウマ(エキゾチックで興味深いが、珍しくない)のようになってしまったと話す。Andressen Horowitzによるとこれは、投資家たちが株式公開ではなく、後期のグロース投資にシフトしているからだという。グロースラウンドとは、$40 million以下のラウンドであり、準株式上場の段階といわれている。

IPOから後期ラウンド投資へのシフト

Bill Gurleyは、一部の人は従来ならば、これらのユニコーン企業は既に上場していると言っているが、私は起業家にとっても、投資家にとってもこれは危険な考えだと思う。企業の多くは、この段階では上場するべきでない。高額の非公開ラウンドと、株式上場では全く訳が違うからだ。この2つの違いをよく理解する事で、現状の非公開ラウンド傾向のリスクも理解する事ができるだろう。

Gurleyは、非上場企業においての客観的な精査の欠如を懸念している。ユニコーンは自身の業界内での財務的位置付けを見誤りやすいという。

The Wall Street Journalは一部の企業が独自の財務用語を使用している事を指摘した。そういった企業は「収益」の代わりに「予約数」や、「年間定期収入」など本来の収益を上回る数字を提示し、業績を賞賛する。

こういった事は、非上場企業として法律に違反する事はない。上場企業がそういったGAAP外の単語を使用する事も可能だが、それらの意味や、本来の会計用語とどのように違うのか明確に説明する事が必要とされる。

懐疑派はこういったやり方は、tech企業の慢心の現れで、結果的に自身を貶める事になるだろうと言っている。こういった曖昧な独自の会計用語を信じた投資家たちが企業価値のインフレを起こし、結果的に、未熟な企業に失敗を許さない環境を作ってしまっているという。

Gurleyはいずれ、そういったユニコーンの”死”が訪れるだろうと、話していたが、ユニコーンの死とは、バブルの崩壊を意味するのだろうか。

そもそも、バブルなど最初から存在しているのだろうか。

Chris Dixonはホームランを目指したスイング(この場合においては10倍のリターンを期待する)は、更なるストライク(投資の失敗)に繋がる、と述べている。

Dixonによると、ベーブ・ルース(米国野球界のホームラン王)効果は様々な種類の投資で起きる現象だが、特に、VCにおいて顕著であるそうだ。

「ベンチャー投資に対するリターンはとてつもなく偏っている。その偏りをよく理解しているVCは良いVCだ。悪いVCは、その傾向を理解せず、すべての企業は平等で、一部の企業がたまたま失敗や成功をすると思い込んでいる。実情ではその傾向はまちまちなのに…」

興味深いのは、”素晴らしい”VCというのは、”良い”VCよりも頻繁に損をしている事だ。ベストなVCはベーブ・ルース効果をよく理解していて、大きなスイングで、大きなヒットを打つか、はたまた大きく空振りする。三振を恐れていては、満塁ホームランは打てない。とDixon。

Dixonの投稿はVCに関してのものだが、ベーブ・ルース効果はユニコーン企業について考える際にも有効だ。それぞれのユニコーン企業の価値を比較すると、Thielが話していたような偏りが見られる。

ユニコーン100社企業価値

グラフの曲線はパワー・カーブだ。ユニコーン企業ですら、VCのリターン予測と同じ傾向を表す。

つまりそれは、上位10社程度以外の企業は業界に大した影響を及ぼす事がないという事だ。

なぜならば、

・XiaomiとUberだけでユニコーン企業全体の価値22%を占める

・上位10社が全体の価値49% を占める

・上位20社が全体の価値65%を占める

上位企業に起こる事は、スタートアップのエコシステムを左右する大きな出来事だが、その他の企業に関する事は、そうでもない。例えば、トップ10の中でも一番不安定だと思われるDropboxが突然のダウン・ラウンドや評価額よりも安い金額で買収されれば、大変なことだが、最近突然CEOが変わったEvernoteに同じ事が起きてもそこまで影響はない。

逆に、トップのユニコーン企業が株式公開に踏み切り、彼らの企業価値を立証することができれば、他の多くのユニコーン企業も追随し、株式公開を行うだろう。フォーチュンのリストにランクインしているユニコーン企業100社は合計で$100 bilion程の資金調達をしており、それは、トップ10企業のうちのいずれかの3社を合計した企業価値と同額だ。

資金調達額の曲線は、Uberを除けば、パワー・カーブではなく、線形カーブとなる。

投資額(企業価値順)

投資額と利益は比例しないのだ。

巨大なユニコーン企業は、本物のビジネスモデルで利益を得ている本物の企業だ。利益は遅かれども、SaaSや広告といった彼らのビジネスモデルを考えれば十分に期待できる。また、重要なのは、1999年のように、公衆市場での過大評価がないという事だ。

ハイプ・サイクル

もっとも、テクノロジーのハイプ・サイクルにおいて1999年が一番の流行期であったかは疑わしいが、今やテクノロジー業界は安定期に突入しようとし、新たな産業の創成に繋がろうとしている所だ。これは大変価値がある事だ。革新的な市場創造をしたUberやAirbnbといったユニコーンの企業価値の高さにも納得がいく。

低金利といったマクロ経済的要因ももちろん一理あるが、ユニコーン企業の多さは、この業界への進出のチャンスを逃したくないと思う企業が多いからではないだろうか。一方で、先ほど挙げたUberやAirbnbなどの市場創造をした企業は、勝者が全てを独り占めするべきだという姿勢であり、良いユニコーン企業の数を限定させている一因だろう。

つまりは、ユニコーン企業の二分化が、このバブル議論を混乱させている。ほとんどのユニコーン企業は過大評価されているが、ユニコーン企業総合としては過小評価されているのかもしれない。勝者が全てを独り占めするという姿勢はマーケットだけでなく個々のスタートアップにも当てはまるものなのだろう。

記事セレクト: Yujiro Numata
翻訳: Ayako Shimatani

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