“辞める人”のマインドセット

Ayako Shimatani
Fashion-Tech News
Published in
13 min readMar 10, 2016

Ellen Chisaはハーバードビジネススクールを中退し、旅行スタートアップのLolaに参加した。彼女は辞めるべきタイミングを知るという事は、人生にポジティブな影響を与えてくれたという。

本インタビューでChisaは、辞める時やNOというべきタイミングについてのアドバイスをシェアしてくれた。

Kickstarterを辞めるのは難しい決断だったとChisa。なぜなら、彼女はKickstarterの同僚、オフィス、仕事全てを愛していたからだ。それでも辞めた理由は、そこで仕事をする事が彼女のアイデンティティとなってしまったからだという。

彼女がKickstarterで仕事を始めたのは、人々が支援したいと思っている仕事を実際に支援する手伝いをしたいと思ったからだった。そして彼女は、よりパーソナルな形で新しいプロジェクトを発見できるUIを構築した。しかし、彼女はそこで、任務完了し、ここでこれ以上良い仕事はできないだろうと感じたという。

その上、彼女は作り上げてきたものを変えたくないと思ってしまったのだ。

「8ヶ月も1つのプロジェクトに携わっていると、直さなければいけない事を後戻りして変えようと思う気持ちが失われてしまう。そして、そう思った時、物事をフレッシュな目で見ていない事が分かったの。」

以上の2点が彼女がKickstarterを辞めるに至った要因だった。

その他にもいくつか、辞めようと思ったタイミングや理由、そしてその後どうしたらいいか彼女が学んだ事があるという。

修正不可能な時

一つの役割に入り込みすぎてしまうと、見えなくなってしまう部分が出てくる。そういう時、直感的に何かかおかしいと気づいていても、解決策に辿り着けなくなってしまう事になる。ChisaはMicrosoftで働いていた際、彼女の役割をどうすればより良くしていけるか常に考えていたが、結局、既存の構造の中で変化を起こそうとしているだけだったという。そして、その時、彼女はMicrosoftでの仕事を辞めるべきなのだと気付いた。

我慢が足りないと思わない事

感じている事を、忍耐が足りないせいだと安直に結論付けない事が大切だ。

辞めたい理由にはイライラ、複数、FOMO、嫉妬、不安…。様々な感情がある事だろう。自分自身に次の質問をし、どうしてそのような気持ちになっているのか解体してみると良い。

・新しい事を学んでいない状態か?それは会社のせいか、自分のせいか。
・同僚のやり方に反対しているか?もしそうであれば、説得する努力をしたか。
・ここのリーダーを信頼しているか。
・行き詰まった感じがするか?なぜ、そうなのか。
・適応し、学ぶほどこの職場で十分な時間があったか?正しい代弁者、メンターや先生、仲間を見つける事ができたか?
・はじめたばかりのウキウキした期間が終わって、本当の仕事が始まったせいではないか?

勿論、仕事を始めて8日後に辞める真っ当な理由がある場合もあるだろうが、最初の3ヶ月あるいは1年、その仕事が嫌いでも、その後自分の思った通りの仕事になるという事もあると、Chisa。

多くの新卒の新入社員にとって、1年目は大変だ。まず、椅子に1日中座っているという事に慣れてない上、繁忙期のサイクルなどにも慣れていない。幻滅してしまう事もあるだろう。そして新卒社員に限らず、新しい職場に対してそう感じる事は誰にでもある。もし、職場でアンハッピーだと感じ始めたら、詳細を詰め、それを変えるためにできる事がないかイノベーティブな解決策を考え、実行してみるべきだ。自分のやりたい仕事を紙に書き出してみて、それが今の会社にとって価値のあるものでなければ、新しい会社を探すべきだ。もし会社にとって価値のあるものであれば、ボスを説得する方法を考えることだ。

期日を決める

もし、いつか辞めたい(それが随分先でも)と思うなら、自身を振り返るためにもその期日を決めるべきだ。次のクォーターの始め、来年、または一定の年齢でもいい。それが自分が人生で正しい道筋に居るか、再確認する機会となる。

ChisaもHarvardでの最初の月に、翌年の3月のカレンダーに「良い友達のグループに恵まれていますか?」という質問を書いていたという。その時は、それだけが1年目に辞めない理由となると思ったと彼女は振り返る。そして、そうする事で、自身の決定に対して気持ちが楽になったという。

将来的に、強制力のあるスケジュールを事前に入れておく事は有効な方法だ。そうする事で、潜在意識の中でも質問や課題を常に再確認できるからだ。

あなたの人生はあなたのもの

多くの人は辞めるべき時でも、不本意な形で辞める事を心配している。例えば、自分がやりたい事を達成できずに辞めるまたは、周囲の人々をがっかりさせてしまったという気持ちがある中で辞めなければいけないとする。しかしそれでも、そこでの経験が無駄になる事はない。過去に達成できなかった事に捕われず、今後学びたい事について考えるべきなのだ。

また、同じ経験についていつまでもネガティブな形で振り返る事はないだろう。時間が経つにつれ、それは失敗ではなく、キャリアステージにおいてそういう時もあったのだと振り返る事ができるようになる。

ChisaはMicrosoftでの経験についてはじめは、最悪な気持ちだったが、そのうち、苦い思い出となり、後々には良い思い出、そして最終的には良い経験を得た素晴らしい経験だったと思えるようになったと語る。

ノーと言えるようになる事

イエスばっかり言っていると、自分の好きな事をする時間がなくなってしまう。何かをする時には、必ず他の何かを犠牲にしなければいけないのだ。特に仕事に関しては、日々の雑務に追われてしまうようになる可能性は高い。方向性を明確にし、同僚を説得し、その方向に向かう事に時間を割かなければ人々は成長を止めてしまうだろう。

80%で我慢する

そこで、Chisaのルールはこうだ。80%の力で仕事をする事。そして、これにはノーと言える力が必要だという。それでこそ、一番大事な時に、イエスと言える事ができるのだとChisaは話す。

ある時は、彼女が長年憧れていたエンジニアが突然、彼女が主催するディナーに招くために人を紹介してくれないかとメールをしてきたそうだ。彼女はそのエンジニアの仕事を手伝い、最終的に彼女自身も多くの有名企業の製品マネジャーが集うディナーに招待してもらい、製品マネジメントに関する大きな記事を執筆する事ができたという。もし、彼女が100%仕事で手一杯であれば、そのエンジニアを手伝う時間もなくこのような機会に恵まれる事はなかっただろう。

また、彼女は80%ルールのおかげで執筆を始める事ができたという。彼女はある土曜日の朝、ふと、購読しているニュースレターをすべてリストにして発行したらどうか?というアイディアを思いついたそうだ。そして、そのリストの閲覧者数が公開から数日で100人を超えた事にとても驚いたそうだ。彼女はそこから、何か他の事についても書いてみる事にしたという。彼女にとって、記事の執筆は彼女のキャリアに大きな変化をもたらした。このアイディアは、もし彼女が常に仕事で一杯一杯になっていたら生まれなかっただろう。

ノーと言う事で自信に繋げる

80%ルールは、彼女がMicrosoftに勤めていた際に始めた事だという。彼女はMicrosoftで働いていた際、あまりにも自由時間が多いため、料理を習い、ジムに通い始め、友人と時間を過ごし、趣味を充実させたという。最初は無理矢理自由時間を与えられていると感じていたが、そこから生まれたものは素晴らしかったと、Chisa。

そもそも、彼女は自由時間があればずっとNetflixばかり見て何もしないだろうと思っていたそうだが、そうでなかったことで、自信がついたという。

現在は、そこまでの自由時間は無いが、80%ルールがあることで、彼女はクリエイティブで居続けることができているのだ。

ノーと言わなければ、多くの仕事を抱え込み、次にどうするかを考える力が失われてしまうかもしれない。

ノーと言う事で自分の強みが分かる

さらに、自分が魅力的だと感じないものに対しては、ノーと言う事で一定のパターンが見えてくるという。例えば、Chisaにとってのパターンは彼女は巨大なイベントや大人数のパーティーが好きではないという事だった。

Chisaはノーと言う事で、自身の強みや能力、嫌いなことを理解することができたのだ。そして、彼女はイエスと言いたいことしかやらないという。例えば、執筆だ。多くの人は書くことにストレスを感じるかもしれないが、彼女は書くことで、エネルギーを充電できるのだという。

これからはもっとノーと言おう、と思っているなら記録に残しておくと良いと、Chisaは話す。どういったイベントにはノーと言いたくなるか?他の人のどのような要求に対してノーと言うか?それはなぜか?こういった事を書き留めていく事で自己分析ができる。逆にどういったことにはイエスというか?それはなぜ?これを知れば、どういった仕事や関係性が自分に合っているのか見つけることができる。もちろん、新しいことに挑戦して成長し続けることは大切だが、振り返りが必要な時にこの方法は効果的だ。

自分の”理想的な運命”を作る

彼女には”理想的な運命”[Ideal Fate] — 毎日朝起きてこれからやる事に対してワクワクしている人生 — というコンセプトがあるという。そして、それは具体的にどういった人生なのか、その1日ではどのように過ごすのか、詳細に書き出してみると良いとChisaは勧める。書き出す事は、深層心理で物事を処理するのに役立つからだ。

彼女にとっての理想的な運命の1日はこうだ。目覚まし無しで起きて、書き物をする時間があり、他の人と働く時間とひとりで、自分のアイディアで働く時間がそれぞれある。そして、4時以降は生産性が低くなる上に、彼女は個人的な時間も確保したいため、それまでには仕事を終える。

詳細を書き出し、彼女は自分でスケジュールを組める仕事が自分には必要だという事が分かった。理想的な運命をビジュアル化するのは難しい人も居るだろう。これには練習が必要なのだという。

ヒートマップを作る

自分が何を求めているか明確にするためには、ヒートマップを作成する事をChisaは勧める。

まず2色のポストイットとマーカーペン1本を用意する。

そして1色目に自分の頭に浮かぶ物を書き出してみる。例えば、Chisaは書いてみたい事についてのアイディアや、アーティストにとって出処が少ない事に対する不満、または彼女の人生において最近変化した事について書きだした。重要なのは自分が書きだす事に勝手な偏見を持たない事だ。自分の頭に浮かぶ物を次々に書いていこう。

その次に、そのポストイットをカテゴリーごとに分けていく。例えば健康に関するカテゴリーには、身体についての心配事や、運動目標について書いたポストイットをまとめる。または、技術スキルのカテゴリーには勉強中の新しいプログラミング言語についてのポストイットを含める。次に、2色目のポストイットで、それぞれのカテゴリーをより大きなテーマで分ける。こうする事で、2つか3つの大きなテーマがある事に気付くだろう。こうして、注目が必要なテーマについてマクロな視点を持つ事ができる。

彼女がこのワークを行った際は、彼女の仕事が製品マネジメントであったにも関わらず、書き出した多くの内容が執筆や講演に関わる目標だった事に気づいたという。Chisaはこうして、自分にとって何が一番重要なのかという事に気付けたのだ。

Chisaはマッピングした結果から、個人的なゴールと、仕事のゴールを1つずつ選び、3、4ヶ月おきに次のステップに進む事を勧めている。例えばChisaは、講演でのスピーキングを向上するために、講演が上手な人たちに会いに行き、彼らから学んだ。また、彼女はマッピングにより、批判に対しての恐れが、彼女が自由に執筆し、講演するという目標を達成する事を阻んでいる事に気づく事ができたという。

他人の知恵を借りる

そのフィールドで尊敬している人に話を聞く事も重要だと、Chisa。

大先輩に聞かずとも、自分より少し上の人に聞くだけでも驚くべき回答を得られる事があるという。彼女はグロースマーケティングをより上手にできるようになりたかったため、数名のグロースマーケターにインタビューをした。また、読むべき本についてのアドバイスももらったという。

現在の役割からできるだけ多くの事を学ぶ

更に、Chisaは現在勤めている会社が何に優れているのか知り、そこでなるべく沢山の事を学ぶべきだという。彼女がより真剣に執筆を始めたのも、Kickstarterでは文章が上手な人は賞賛されており、文章を書く事に優れた人が多く居る環境の影響があったそうだ。また、コミュニティーマネジャーからも多くを学んだという。現在の環境から学ぶ事は難しいことではない。何を学びたいかを考え、誰がそれを助けてくれるかを考える事だ。

行動を促す

彼女はKickstarter時代に仕事を通して出会ったDay Oneというアプリを使い、毎日午後1時に今考えている事について書き連ねるという。彼女はこのアプリにより、文章を書く事を習慣付け、続ける事ができたのだそうだ。

重要なのは定期的に行動に結びつく動機があるという事だ。

更に、多くの人が良いアイディアが生まれるまで書かないのに対して、Chisaは書き始める事で考えを繋ぎ合わせ、そこで新しいアイディアを生みだす事ができた。

この方法はライターだけでなく、どのような事にも応用できる。何か継続したいと思っている事があれば、定期的に予定を作り、雨の日も雪の日も言い訳せずに実行するべきだ。

後悔の捉え方を変える

何かの機会に恵まれた時、行動を起こさなかった事を後悔するか?常に自分に聞き続けるべきだ。

「70歳になって、それをしなかった事に対してどう感じるかしら?」とChisa。

Chisaは執筆をするか迷う時にも、誰かがこの記事を2年前に書いていたら、それは自分にとって有益だったか?と自分に質問するのだそうだ。また、次にやりたい事や学びたい事、行きたい方向性を決める際にもこの方法を使うという。しかも、Chisaは自分が羨ましい、嫉妬してしまうと思う事について書き出すのだそうだ。どういった人に嫉妬してしまうのか。それはなぜか、仕事?経験?羨ましい記事は?その共通点は何か?

彼女は羨望や妬みをポジティブな行動につなげるのだ。自分を嫉妬させるような事を他の誰かができるという事は、自分が同じ事できない訳がないのだ。

小さな目標を作り、それを少しずつ達成していけば、大きな目標を叶える事ができる。自分の大きな夢の中で、細かくできる目標は何かを明確にし、次々と達成していく。最終的には随分と進歩し、夢に近づけている事に自分でも気づくだろう。

Content curation: Yujiro Numata
Translation: Ayako Shimatani

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