Facebook時代の到来

Ayako Shimatani
Fashion-Tech News
Published in
9 min readOct 20, 2015

私は、Facebookほど過小評価されている企業はないと思う。$245 billion規模の企業に関してそのように言うのはおかしいかもしれないが、テクノロジーバブルの真っ只中でFacebookがかつてのMyspaceのように突如終わってしまうかもしれないと思っている人は多い。

私はFacebookの時代はまさに、始まったばかりだと思っている。

PCとインターネット時代

消費者向けテクノロジーの世界ではこれまでに3つの時代があった。PC、インターネットそしてモバイルの時代だ。

PCとインターネット時代ではお互いが、相互関係にある。

PC時代におけるMicrosoftの優位性は彼らのミッションステートメントにも表れている。「全ての家庭の、全てのデスクにMicrosoftのコンピューターを。」というものだ。そして彼らはその実現に成功した。

さらに彼らは、Microsoft搭載のコンピューターを普及させ、第三のソフトウェア開発、SI、OEMによるエコシステムを形成した。

Windowsは真の意味での、プラットフォームだ。MicrosoftはWindowsによりたくさん稼いだが、それはWindowsにより形成したエコシステム全体の比率としては、たったの1/4だ。

そして、消費者向けのインターネットもそのエコシステムの一部となった。90年代から00年代にかけて家庭でダイアルアップ接続、そしてその後、ブロードバンドインターネットが普及した。これにより、PC時代の次に訪れるGoogleの時代の舞台が出来上がった。インターネットが広がれば広がるほど、インターネット上の情報量が増え、Googleの力と影響力が強まった。

しかし、Googleにとって2つの制約があった。1つめはPCの台数、2つめはユーザーとPCの関わり方だ。PCユーザーは意図があってPCを利用する。Googleのサーチエンジン広告はユーザーの意図を理解できるからこそ、効果的なのだ。これは一見、制約ではないように思われるが、数年前から2つの変化が起こった。

Androidとモバイル時代

3つ目の時代は、モバイルの時代だ。モバイルのユーザー数は数十億単位だ。Googleはモバイル時代の到来を予期し他社より早く動き出していた。2005年にAndroidを買収し、ライバルをBlackberryからiPhoneにシフトしたのだ。そして、素晴らしい事に、GoogleはAppleと競合しているOEM企業が利用できるようにAndroidを無料で配布し、Microsoftが作り上げたエコシステムよりも巨大なエコシステムを形成するに至った。

Bill GurleyもGoogleをこのように評価している

AdWordsで大きな”城”を築きあげたGoogleはその城を侵略できないようにするための城壁を作りたいのだろう。Googleにはすでに良い城壁があるから、どうやって城壁を拡大するかという問題になる。Googleにとっての脅威はGoogleとユーザーの間に立ち、ユーザーが使う検索エンジンの選択を揺るがすものだ。

つまり、Android, Chrome, Chrome OSは厳密にはビジネスの視点から見れば、「商品」とはいえない。それらはGoogleにとって利益をもたらす経済的な”城”にはなりえないからだ。むしろそれらはとても高価な城壁だ。Googleはそれらを無料で配布する事により消費者とGoogleの間に立ちはだかるものを取り除きたかったのだ。そういった立ちはだかるものはたいがい変動費のかからないソフトウェアだから、このGoogleの戦略はとても有効だ。そして、Googleはその城壁により城を守るだけでなく、誰も近寄れないくらいに周囲を焼き尽くしている。

ただこの戦略によりGoogleは一つ痛手を負った。このAndroidの戦略では、Google自体を含む誰も、Microsoftの時のような膨大な利益を得る事ができないのだ。

モバイル市場

Facebook時代の話に入る前に指摘しておきたいのがモバイル市場についてだ。モバイル市場はこれまでのどの市場と比較しても、非常に大きい市場を形成している。PC市場と比較してみるとその大きさがわかりやすい。

まず、PCが全ての家庭の全てのデスク上にあるとすれば、モバイルは世界の人口の大部分のポケットの中にある。モバイルユーザの数は、PCと比較して、3倍から4倍と言われており、さらに、その数は拡大し続けている。

次に、これまでは、”何か目的がある時にだけPCを利用していた”が、今や、”モバイルを利用している時以外の時間が、何かの目的がある時”なのだ。そしてそんな、我々の生活の中”空き時間”は思いの外多い。そんな日常の”空き時間”を埋めるために、最高の製品がやってきた。友人や家族と繋がり、コミュニケーションをとる事ができるツールだ。アリストテレスも「人間とは社会的動物だ」と言っていたように、多くの人間は自由時間に他の人間と関わりたいと思っている。Facebookの普及はモバイルを利用する何十億のも人類にとって自然なものだった。

Facebook時代

Googleの広告が、目的があって利用するというPCの利用のされ方にぴったりだったため、Googleは直接的に売上やリードにつながるダイレクト・レスポンス広告を独占するようになったが、実は、ダイレクト・レスポンス広告は広告全体の10%〜15%だ。よっぽど多くの広告費が、ブランド広告に使われている。

ブランド広告とは、顧客になりうる人々にブランドに親しみを持ってもらうために行われる広告だ。例えばUnileverはAxeやDoveの広告に膨大な広告費をつぎ込んでいるが、それはデオドラント製品をe-commerceで販売するためではなく、スーパーで急いでいるような時に、親しみのあるAxeやDoveの製品を買ってもらえるようにするためだ。そして顧客がブランドを気に入った場合、顧客は何年もその製品を継続的に購入してくれる。それにより顧客生涯価値が高まる。だからこそ、消費財、通信会社や自動車会社は多くの広告費をブランド広告につぎ込む。

ブランド広告とは不思議なものだ。なんせ、その効果が実感できる唯一の時が、広告費に投資していない際に売り上げが低迷した時なのだ。
ブランド広告の根本は、顧客になりうる人々が何も考えていない時に注意を引き、無意識的にブランドに親しみを持ってもらう事だ。これまで、ブランド広告を行うために適したメディアはTVぐらいだった。TVの視聴者はたいがい、リラックスして何も考えていない状態だ。だが、TVにも弊害がある。まず、広告をスキップできる録画機能、そして、Netflixのような定額サービスだ。加えて、甚大だったのが”他者と繋がれる”モバイルの登場だ。

モバイル上で他者と繋がるために、人々はInstagramやメッセンジャーアプリなどのFacebook以外のツールも利用する。そこでFacebookはInstagramとWhatsappを買収した。Googleは検索エンジン界を制覇し、AdwordsのコンセプトをOvertureから借り、Applied Semanticsを買収しAdSenseを作り、YoutubeもAndroidも買収している。Googleは素晴らしい買収歴を持つ企業だ。

Googleは、企業の要となるものを確立し、それを拡大するためのものを他から取得するというモデルを作り上げた。Facebookも、このGoogleのモデルを踏襲しているのだ。

なぜFaceboookが過小評価されているか

企業の可能性は市場の大きさにより評価されるものだが、Facebookの市場はユーザー数やユーザーの滞在時間において、PC上のインターネット市場の倍を超える。更に、Facebookはブランド広告からも収入を得る事ができる。Facebookがブランド広告に最適な広告プラットフォームだからだ。Facebookは適切な商品を適切なマーケットに適切なタイミングで用意しているのだ。

Facebookはほとんどの人が利用しており、アジアにおいては友人や家族と繋がるためでなく仕事上でのつながりや、ビジネスページ、そしてe-commerceもFacebookを介して行われる。Facebookは今やインターネットにとって必要不可欠なものとなっているのだ。Emailが好きではなくてもみんながEmailアドレスを持っているように、Facebookも同様なのだ。好きではなくても使っているということは、それほど、そのものの影響力があるという事になる。そしてFacebookにはInstagram, MessengerそしてWhatsAppもある。

Facebookは完全に市場を支配したわけではない。Snapchatや、Googleがある。それでもFacebookチームの統率の取れた実行力からも、Facebookがこの市場の大部分を支配し続ける可能性は濃厚だ。

Facebookとプラットフォーム

FacebookがOculus Riftを買収したというのは興味深いニュースだ。

私は、広告とプラットフォームは両立が困難だと思っている。広告会社は人の注目を集めなければいけないが、プラットフォームは、いわば、他のものにスポットライトをあてるためのステージだ。だからこそ、Googleはプラットフォームの会社ではない。

しかし、プラットフォームはIT業界において最も重要だ。みんなができるならばプラットフォームを支配したいと考えている。Windowsは理想的だ。Microsoftは何十億も稼ぎ、同時に他の人たちも稼ぐことができた。AppleはMicrosoftより儲かっているかもしれないが、そのエコシステム内で利益をシェアする事ができていない。Googleはプラットフォームを持っているにも関わらず、少なくとも直接的にはそれで稼いではいない。そんな中で、Facebookが自身のプラットフォームを手に入れたのだ。

現在はモバイル時代。しかし次の時代、Facebookの時代はすぐそこに迫っている。

記事セレクト: Yujiro Numata
翻訳: Ayako Shimatani

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