iOSの広告ブロックによるコンテンツ革命の可能性

Ayako Shimatani
Fashion-Tech News
Published in
5 min readFeb 5, 2016

AppleがiOS9から広告ブロックアプリを許可した事により、E-commerceやその他のビジネスが”崩壊”する可能性が出てきた。

もし、広告ブロックがメインストリーム化すれば、インターネットの根本を大きく揺るがす事となるだろう。

それは恐ろしい響きだが、一方で、最先端をゆくブランドにとっては、非常にエキサイティングな事でもあるのだ。

いつかこんな日が来る事は誰もが予測していたのではないだろうか。また、消費者としても我々はデジタル広告の欠点をよく知っている。広告が多すぎるサイトはうざったい。だからこそ我々は皆知らないうちに”バナー盲者”になってしまっているのだ。2015年4月のSmart Insightsの報告によると全インターネット広告のCTRは0.06%、1000インプレッション中1クリック以下という燦々たる結果だ。

リマーケティング広告はROIこそ高いが、ほとんどバーチャルストーキングみたいなものだ。消費者から嫌厭されるものも仕方がない。広告ブロックが使えるようになってしまった今、これがどれほど広まるのかが課題だ。

多くの人々がオンラインの購入にシフトするにつれ、様々な企業がデジタル広告の恩恵にあやかってきた。2015年のデジタル広告費は$58.6 billionだ。その内小売が$12.9 billion(22%)を占める。テキスト広告、ディスプレイ広告、バナー、ポップアップ、ポップオーバー、動画、ネイティブ広告、リマーケティングなど様々な広告がインターネット業界の財源となっている。90%のインターネット収益は広告によるものだ。それが無くなるということは広告によるフリーのインターネットから、閉ざされた有料のインターネットに移行する事になる。

それでは、Appleはなぜ広告ブロックを導入したのだろうか?答えは、Googleへの対抗だ。Appleは自身のiAdプラットフォームを持っているが、収益は芳しくない。Googleは収益の大部分を広告から得ている。それを妨害すればAppleは競合を叩ける上、Appleユーザーは広告が無く素早いインターネット環境を楽しめるはずだ。

閉ざされたインターネットとはどのようなものになるだろうか。ニュース、情報、ライフスタイルサイトなどは有料化するかその他の方法でマまず、ネタイズしなければいけない。例えば、様々なサイトが合同で、一定額の購読費を支払う事により閲覧できるようにするかもしれない。

一方、今日のインターネットユーザーはストリーミング動画(e.g. Netflix)以外のコンテンツに金銭を支払う事に消極的だ。

しかし、広告ブロックの利用者が10%に達するだけでも業界への影響は甚大なものとなるだろう。多くのメディアサイトが閉鎖を余儀なくされ、常に情報に”ハングリー”な消費者たちにとって情報を提供してくれる場所がなくなってしまう事だろう。

だが、それこそが、ブランドにとって大きなチャンスに繋がる。

なぜなら、全てのブランドは既にメディアだからだ。ブランドは良質なコンテンツを作る財源もある。今、多くのブランドは非効率なデジタルチャネルに多額の費用を使っている。2014年のWall Street Journalの報告によるとwebトラフィックの36%は擬似クリックソフトによるものだという。つまり、1/3以上の広告費がボットなどの詐欺に費やされているのだ。この無駄な広告費の一部でも優良なコンテンツを作る事に使えば、大きな影響をもたらすだろう。

多くのブランドは既に顧客エンゲージメントを高めるために優良なエディトリアルコンテンツを提供している。彼らはさらに一歩進み、業界に関するニュースなどの一時資料を提供し、同時に興味深いライフスタイルコンテンツを提供するべきだ。ブランドが自身のニュース制作室を持つというのは大きな飛躍のようだが、ブランドがターゲット顧客向けの有益な情報を発信する事で大きな影響力を持つ事に繋がるだろう。

これに成功すればブランドは顧客の絶大な信頼を得る事ができる。そしてサイトへのトラフィックを高め、デジタル・実店舗双方においてコンバージョンを向上する事ができるだろう。そして収益の向上により更に良質なコンテンツの作成に回す事ができる。こうしてブランドの自給自足のサイクルが出来上がる。

広告ブロックは私たちをより正しい道に導いてくれるきっかけになるのかもしれない。

Ad block on iOS may lead to commerce content revolution, which brands shift their budgets to produce quality contents themselves rather than to spend them on wasteful advertising.

記事セレクト: Yujiro Numata
翻訳: Ayako Shimatani

--

--