Saks Fifth Avenue 再起をかけた店舗リニューアルへ

Ayako Shimatani
Fashion-Tech News
Published in
6 min readDec 8, 2015

百貨店は危機的状況にある。オンラインやアウトレットモールでも高級品が購入できる今、人々が買い物する場所や方法が変わってしまったのだ。

長きにわたりアメリカのファッションと高級品をリードしてきた創業91年のSaksは、Fifth Avenueの旗艦店のリノベーションを3年に渡り、$250millionかけて行う事を決定した。

Marilyn MonroeからElvis Presleyが愛し、GivenchyやEstee Lauderを米国に持ち込んだSaksだが、近年その親会社はBritish American Tobaccoから南部百貨店チェーンのProffitt’sそして2008年の金融危機を経て、2013年にはカナダのHudson’s Bayに$2.4billionで買収された。

Saksの売上はライバルのNeiman MarcusやNordstromに押されている。その上、百貨店業界自体が低迷しているのだ。クリスマス前にもかかわらず、来店客数と売上が芳しくない同業界の市場価値は先週(11月14日時点)、$5billion減の評価を受けた。

はじめSaks再建計画にはHarrods再興に関わったMarigay McKeeが任命されたが、Hudson’s Bayの役員らとの折り合いが悪かった事から、代わりに20年近くSaksとHudson’s Bayに勤めてきたMarc Metrickがその責任者となった。

そのMetrickがまずとりかかるのが旗艦店のリノベーションだ。実店舗での豪華かつ甘美な体験はオンラインでは真似できない事だからだ。

Metrickは、問題はコスメカウンターのある1階が混雑しており、顧客が上層階に向かわない事、そしてシューズのフロアに所在する8階のカフェががらがらだという事だという。

Saksはシースルーエレベーターとそれを囲う螺旋階段を設置し、1階はバッグやその他アクセサリーのフロア、そしてこれまで倉庫として使用していた地下1階をジュエリーのフロアに、そして、8階のカフェをパリのレストランL’Avenueに改装する。

一方、この計画に批判の声が上がっている。多くの人が上層階に向かわないのは何か他の原因があるからであり、果たして、地下で高価なジュエリーを買いたい人がいるだろうか?Saksは自身の顧客をよく知るべきだ。と、百貨店事情に詳しいMichael Lisicky。

しかしSaksの顧客が誰なのか、というのは難しい質問だ。

高級品消費者たちは今、特定の店へのこだわりがなく、好きなブランドのものを様々な場所で購入し、ハイブランドと安価なブランドをミックスして好む傾向にある。更に、忙しい消費者たちは効率を求め、多くの人々が高級品の購入にNet-a-Porterやブランドの公式通販といったECを利用している。

高級品のオンライン売上は現在4%であり、急速に成長中だ。

Saksやその他の百貨店もe-commerceに力を入れているが、今後どうなるか分からない。

地方百貨店は閉店が相次ぎ、残ったSaks, Neiman MarcusやMacy’sといった全国展開している百貨店同士の競争も激化している。

現在、Saksはファッション面の改革に乗り出している。BalmainやBalenciagaといったハイエンドブランドの取り扱いをはじめ、店舗ごとの価格帯設定をやめ、ハイ&ローブランドを同じフロアに展開し始めた。また、デザイナーブランドの余剰在庫を割引価格で販売するSaks Off 5th事業を開始。Saks Off 5thは好調だが、一方で、今後成長し続ければSaks自体の売上に影響を及ぼすおそれがある。

また、Neiman MarcusとNordstromが2018年にManhattanに店舗を出店するという。新たなライバルの登場にSaksはManhattanの金融街Brookfield Placeやメンズ向けストアをダウンタウンに出店し、MiamiやHouston、HawaiiやCanadaへと店舗を拡大する事で対抗する。

Hudson’s Bayグループ他社の売上が昨年と比較して5%〜15% 程度成長している中、Saksの売上は昨年と変わらずだった。

Saksは明らかに変化を必要としているといえるだろう。

売上は芳しくないが、Saksの不動産資産の価値は膨大だ。Saksの持つ不動産の価値は合計で$7 billionにも上ると試算されている。Hudson’s BayはFifth Avenueの土地を抵当に入れ、借金を返済や現金投資に回した。売上が低迷する中、多くの百貨店が同様の不動産資産の活用を模索しているという。

「旗艦店のリノベーションを行うというSaksの決定は正しいが、将来的にもオンラインや割引価格で商品を買う顧客はやはりオンライン、そして割引価格での買い物を続けるだろう。」

コンサルティング会社Bain&CompanyのFederica Levatoは百貨店業界の明るくない未来を予測している。

Established in 1924, the 91 years old department store Saks Fifth Avenue will undergo three years long renovation in order to compete its online and offline rivals and make a comeback.

記事セレクト: Yujiro Numata
翻訳: Ayako Shimatani

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