「木の国にっぽんを考える」東京大学で開催されたシンポジウムに参加してきました。
7月7日(木)の七夕に、東京大学農学部の教室で「木の国にっぽんを考える」シンポジウムが開催されました。

こちらのシンポジウムは、NPO法人「 日本に健全な森をつくり直す委員会」主催で、東京大学名誉教授で「バカの壁」の著者としても有名な解剖学者の養老孟司氏と「里山日本主義」「デフレの正体」などを著書とする地域エコノミスト藻谷浩介氏の対談本(まだ書店には並んでません)の発売を記念して企画されたもの。
養老孟司氏の基調講演を皮切りに、新国立競技場のデザインをされた隈研吾氏、集成材のトップ企業 銘建工業 中島浩一郎氏、化学物質に頼らない家具づくりをされているナチュラル・ハーモニー代表の河名秀郎氏、そして作業道作りの老舗 清光林業の岡橋清隆氏の4名から、それぞれの立場から「木の国にっぽん」にまつわる事例報告がありました。 今日はこのお話をちょっとしたいと思います。
森は「意識偏重」になっている現代人に「感覚」を取り戻す
養老先生の基調講演の題目は「庭(森)は手入れをするもんだ」でしたが、 人間は「感覚」よりも「意識」を優先するといったような題目を感じさせるような内容でく、、、 しかしながら、結果的にはとても納得性が高い内容で飽きることなく聴講することができました。
動物は「感覚(5感)」で入力をして、「動作」で出力をする。
「感覚」は「違い」を感じることのできるセンサー。
しかしながら、人間は、入力と出力の間に「意識」というフィルターがあり、この「意識」は全てを同じものとして見なそうとする(=抽象化)ものだから、「違い」を逆に感じにくくしてしまっているものでもある。
人間はAさん、Bさん、Cさん、Dさんをひとくくりに「人」として見るが、どの他の動物は同じに見れないので全て別物として捉えている。
意識は風の世界(都市)で育まれ、感覚は土の世界(自然)で育まれる。 情報過多になった現代では、特にこの「意識」フィルターが増幅増長し、「感覚」を失う人が増えていて、全て「意識」で判断をしてしまう人が当然ながら増えている。
だから、私は森に積極的に入って、木を見たり、昆虫と触れることで「感覚」を取り戻している。
(発言メモと記憶より)
ぼくが森や自然に積極的に入る潜在的な理由を明らかにしてくれた感じ。
「同じにする」とか「意識」とか、とても納得性が高く日常と照らし合わせながら聴いていました。
あの養老孟司氏までもが眼差しを向ける「木の国にっぽん」 改めて「今」だし「これから」なんだと強く認識することができました。
「現代の参勤交代制を作り、心のバランスを取り戻したい」 このようなアイデアも持たれていました。
木造建築のバリューが着実に上がってきている
こちらは隈研吾氏の事例報告より。
大学の建築学にはコンクリートと鉄の授業がほとんどで木がない。
資格に関してもそう、コンクリート・鉄は1級、木造をやるなら2級。
コンクリートと鉄の建築の方がラクで、木造の方が難易度が高く、全てを分かっていないといけない。
なのに、木造建築の方がバリューが低いのが日本の現状。
(発言メモと記憶より)
ぼくも昔、建築土木を学んでいたため、言われて直ぐに気付きましたが確かにそうなんですよね。
木造建築の方が圧倒的に難易度が高いのにバリューが低い。
国の方針でこうした状況になったので、仕方がないと言えば仕方がないのですが。消費者が捉えている「建築」に対しての先入観や価値観の修正が必要な気がしています。
それでも、隈研吾氏の様々な活躍により日本国内はもちろん、さらには世界レベルで木造建築のバリューが着実に上がっていることを確認することができたのはモチベーションの大きな材料になりました。
ここでは事例報告として上がったものを幾つかご紹介しますが「国立競技場の他にもこんなに手がけていたのか!」と驚きの連発でした。
皆さん周知の「新国立競技場」

タイのパイナップルケーキ屋「サニーヒルズ」

サニーヒルズと同じ「地獄組(*)」手法を用いた「太宰府天満宮のスターバックス」

(*)一度組んだら外れない組み方だからそう呼ぶらしい
軽井沢ニューアートウェディング「白樺と風通る苔の森チャペル」

雷門のすぐ横「浅草文化観光センター」

雲の上の町に佇む「雲の上のホテル」

ポートランド日本庭園

その実力は海外へも惜しみなく伝達されていることが良く分かりました。
ロンドンには80階建ての木造建築のビル(CLT建築)を建てる構想もあるようなので、木造建築のバリューは今後益々高まっていくでしょう。これは間違いありません。
最後に
本シンポジウムに参加して確認したこと。
1.森林活用はあの養老孟司先生も目を向けている分野である。
2.木造建築のバリューが上がってきていて、今後もそれは増えていく。
業界の名だたる方々が揃い非常に刺激的なイベントでした。
これで参加料は資料代が500円だけだからびっくり。
日中なのにそりゃ人も沢山来るわ。
ご存知の通り、林業、木材産業、建築業と、山から建築になるまでのプロセス中で、大なり小なり様々な形で関係を持ち従事されているプレーヤーが存在し、既存のルールも存在します。
そのため、日本の森林活用を正しい方向に進めていく(プロデューサー的な視点)ためには、一連の商流の細やかなな理解はもちろん、各ポジションからの視点・報告・活動のインプット、林野庁の考え・動きなど、正直、国土の7割が森林と話が大き過ぎるがゆえに、幅も奥行きもかなり拡げなければいかなければいけません。
そういう意味でも、今回、主催をされた「日本に健全な森をつくり直す委員会」のような力のあるNPO法人と行政・企業の連携を積極的に促していくことは、木の国にっぽんのブランディングに近づいていくためのグランドセオリーだと思う。
うまく関係を作って協力協業体制を整えていければ良いなあと考えています。
ナチュラル・ハーモニーの「新月伐採材」についての事例報告もここには書いていませんが非常に興味深かった。何故なら、ぼくが推奨している自伐型林業との相性も良さそうだからです。
これに関してはまた別途Mediumに書きますんでお楽しみに。
この分野へのモチベーションが「グググッ」とさらに湧いた1日でした。