ウォレットレス・オンボーディングで Web3 のメインストリーム化の障壁を克服する

Ara
Flow Japan
Published in
Mar 3, 2023

本記事はこちらの英語記事を日本語に翻訳したものです。

Web3 のアプリは、私たちのグローバルなコミュニティ全体で多大な価値を解き放ち、新しいエキサイティングな体験を生み出し、人々に所有と自己主権のための前例のない機会を提供します。では、なぜもっと多くのメインストリームのユーザーがブロックチェーン技術を受け入れていないのでしょうか?

Web2 から Web3 への移行では、ユーザーは打ちのめされることがあります。Web3 の価値が明らかになる前に、セルフカストディ・ウォレットのサインアップして、シードフレーズの記憶、暗号通貨の購入、トランザクションへの署名など、多くの難関を突破することをユーザーに求めることが多いです。また、アプリを使い始めると、特に高額な取引の場面では、しばしば不快なユーザー体験に遭遇します。Web3 アプリに関連する摩擦や学習曲線は、多くの新規ユーザーを離脱させてしまう可能性があります。

ウォレットレス・オンボーディングでユーザーの離脱を最小化する

開発者は、新規ユーザーが段階的に Web3 に参入できるようにすることで、オンボーディング体験をシンプルにできます ― このプロセスを私たちは「ウォレットレス・オンボーディング」と呼んでいます。アプリは、ユーザー体験から基盤となるブロックチェーンの存在を完全に排除でき、ユーザーのためにアプリ内の保管用のブロックチェーン・アカウントを作成・管理し、すぐにウォレットを作成しなくてもいいようにします。その代わり、アプリはユーザーの監視なしにすべてのブロックチェーンのやり取りを処理し、すべての収集されたアイテムはユーザーごとに管理されたアカウント内に保管されます。

アプリ・カストディは、Web3 を初めて利用するユーザーにとって効果的なオンボーディング体験となり、アプリの価値を前もって体験する機会を提供できます。しかし、ブロックチェーン技術の主要なメリットである、アプリを通じて購入・獲得したデジタルアイテムの真の所有と管理権を人々に完全に与えません。アプリは個人のアカウントとそこに保存されているアイテムを管理するため、これらのアイテムは事実上、アプリの体験の中に閉じ込められています。また、アプリがシャットダウンした場合、永久にアイテムにアクセスできなくなる可能性があります。

このような制限を回避するためには、アプリのアカウント内にあるデジタルアイテムの完全な所有を、ユーザーがいつでも選べるよう、シームレスなパスを定義する必要があります。開発者は、アプリの価値提案のコアとして、デジタル所有の価値をユーザーに示す体験を作ることで、このジャーニーを促進できます。ユーザーは、アプリを使う時間が長くなるにつれて、デジタルアイテムを自分で管理することで、本当の所有のメリットに触れる機会が増えていきます。

ユーザーが完全な所有を得る準備ができたら、セルフカストディ・ウォレットを作成し、アプリ内アカウントから新しいセルフカストディ・ウォレットにアイテムを送付する方法を学ぶことができます。しかし、これらのアイテムがセルフカストディ・ウォレットに移されると、ユーザーはアプリ内でこれらのアイテムを使い続けることができなくなり、アプリでの保管とセルフ・カストディのどちらかを選択する必要が出てきます。

ハイブリッド・カストディ ― アプリ・カストディとセルフ・カストディのいいとこどり

Flow では、Web3 アプリを使う人々にアプリ・カストディとセルフ・カストディ両方のメリットを提供できる新しいアプローチを採用します。私たちはこれを「ハイブリッド・カストディ」と呼んでいます。このモデルは、アカウントの抽象化、特にアカウントの委譲を使って、ブロックチェーンのアカウントが他のアカウントに制御されうる選択を可能にします。

実際には、ハイブリッド・カストディによって、ユーザーは元のアプリの内外で、自分のデジタルアイテムにシームレスに関われるようになります。例えば、Flow で NFT として発行されたカードデッキを購入したユーザーがゲームを始めた場合、ハイブリッド・カストディによって、ユーザーはゲーム内でカードを使い続けながら、同時にセルフカストディ・ウォレットにデッキを保持することが可能になります。また、アプリがユーザーに代わってトランザクションに署名する権限を与えることができ、移動のたびにトランザクションを承認する必要がなくなるため、ユーザー体験が大幅に向上します。同時に、所有者はカードデッキをエコシステム内の他のアプリに自由に持ち込むことができ、マーケットプレイスに出品することも可能です。

このアカウント委任モデルでは、アプリのアカウント(子アカウント)が、ユーザーのセルフカストディ・ウォレット(親アカウント)へのアクセスを委任します。子アカウントはこれまで通りアプリで使えますが、親アカウントも子アカウントの代理として使えるようになりました。

アプリ内でアプリ・カストディとセルフ・カストディの両方を有効にすることで、開発者は以下のような両方のメリットを提供できます:

  • セルフカストディ・ウォレットとアプリ内アカウントの両方において、ユーザーが資産を完全にコントロールできる一方、アプリは、トランザクション承認によってユーザー体験が中断されることなく、アプリのコンテキストで資産を使い続けられる。
  • ユーザーがセルフカストディ・ウォレットに保有する資産をアプリが可視化し、アプリ内で使うために一時的なアクセスを要求できる(それが合理的な場合)
  • アプリ内でシームレスに資産を使える力を維持しながら、ユーザーが Web3 アプリのエコシステム内の他の場所に資産を持ち込める。

ウォレットレス・オンボーディングとハイブリッド・カストディは、メインストリームのユーザーを Web3 から遠ざける摩擦のある体験に代わって、実行可能な代替案を提供します。私たちが協力して Flow エコシステムとそれ以外の領域でこのソリューションを実現すると、より多くの人々がブロックチェーンベースの体験の自律性と真の所有を発見できる助けとなり、私たち全員が最終的にその力を手にするでしょう。

Flow のウォレットレス・オンボーディングに興味がある方は、ぜひ一緒に議論し、構築しましょう。Discord の #developers チャンネルに参加するか、Twitter @chrsackermann にご連絡ください。

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Ara
Flow Japan

ソフトウェアエンジニア。生物学、民俗学、仏教、神道、メディアアート、博物学、フォント、ブロックチェーンなどに興味あり。