イラストレーター・中村佑介さんインタビュー

Blue-中村佑介画集 価格:3,800円(税別) 飛鳥新社
ノスタルジックかつカラフルな作風で人気のイラストレーター、中村佑介さん。独特のファンタジックな設定の着想と緻密な描写が評価を受けている。国内外をとびまわる彼に、イラストの世界観における建築や原風景、創作の姿勢をうかがった。 (学芸カフェ2010年1月号より再構成/掲載)

— — — まずは、イラストの背景や物語性といった原風景についてうかがいます。下町もあれば高層ビルも出てきますが、こういった風景はどのように着想されるんでしょうか?

中村: 風景のイメージは、住んでいる街がベースになることが多いですね。学生の頃は、必然的に、大阪芸術大学があった貴志や富田林周辺の路地や下町の風景が多いです。イラストの背景にビルが多くなるのは、大阪の阿倍野に移ってからですね。

— — — 建物の描写が緻密ですよね。

中村: 父が建築家なので、その関係で、小中学生のころから遊びで製図を手伝ったりしていました。ですから、なんとなく「住める感じ」というか、たとえば床板の目地も意識していたり、構造なんかも考えていますね。もうひとついえば、そういう建物の細部もふくめたリアリティが、ファンタジックな動物が登場する設定といい対比になりますし。どこかにリアルな部分がないと、空想で終わってしまいますからね。

夜は短し歩けよ乙女』 森見登美彦 角川書店

— — — 動物といえば、身近なイヌやネコだけでなく、ゾウやペンギン、さらには、ペガサスや巨大化した昆虫や魚など、空想のものも色々とでてきます。絵のテーマに合わせて「選び分け」されているんでしょうか?

中村: なんとなく感覚的なものでしたが、いまそう聞かれて改めて考えてみると、選び分けているかもしれませんね。イヌやネコなんかだと小物あるいは小道具のような扱いで、たとえば巨大化した動物のように非現実的な設定や大きさのものは、存在感のある主役になっている気がします。「人間が入っている」とでもいいますか。

ワールドワールドワールド』 ASIAN KUNG-FU GENERATION

— — — 風景として乗り物も出てきますが、自動車はあまり出てきませんね。これも物語性に合わせているんでしょうか?

中村: いえ、実は、自動車の免許をもっていないからなんです(笑)。だから必然的に、車の物語はうかばない。電車が多くなりますね。やはり、自分の手が触れているものというか、自分の世界からしかイメージは出てこないですから。

— — — こどもの頃の環境と今のお仕事の関係は?

中村: 両親がデザイン関係の仕事をしている環境だったので、それが普通というか、漠然と「将来は絵を描く仕事をするんだろうな」と思っていました。早く仕事をしたかったですね。高校の時点では実力不足だと感じて、芸大まで進みました。

WEBきらら2010年1月号 小学館

— — — 空想好きでしたか?

中村: そうですね。外で遊ぶよりも、一人でキン肉マン消しゴムを2体並べて眺めたりして遊んでました(笑)。もちろん消しゴムは動かないですけど、頭の中では動いているんです。「これがこうだったら」みたいに空想して遊ぶんです。いまも、たとえば映画やテレビを観ていても不満というか、物足りないときがあって。日常生活でも「現実とちがって、こうだったら面白いのにな」とか色々考えますね。

— — — 今後のビジョンについて教えてください。

2010年1月26日から、東京では初めての個展を吉祥寺で開催します。グッズも作るので楽しみなんです。
2010年4月には、キャラクター・デザインを担当したアニメ『四畳半神話体系』もスタートします(原作:森見登美彦、監督:湯浅政明)。
将来的には、子どもをターゲットにしたアニメや絵本なんかにも興味がありますね。それこそ、10年先とかかもしれませんが。

(学芸カフェ2010年1月号より再構成/掲載)

(聞き手/牧尾晴喜)


中村佑介
1978年宝塚生まれ、イラストレーター。
ASIAN KUNG-FU GENERATIONや数多くのアーティストのCDジャケットや、赤川次郎、石田衣良、森見登美彦などの書籍カバーを数多く手がけている。エッセイ、S▲ILS(セイルズ)としてのバンド活動、インターネットラジオなど、表現の幅は広い。2009年8月、200ページ以上に及ぶ10年間のイラストの軌跡を収めた待望の初作品集『Blue』を飛鳥新社より発売。

(*プロフィールはインタビュー当時のものです。)