子どもがアートを満喫する誕生日。パーティができる、イタリアの美術館

Kumiko Nakayama
フレーズクレーズ
5 min readApr 8, 2016

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イタリア・トスカーナより、有名観光地に隠れたちょっと面白いイタリアの裏話や、モノづくりの現場などについてレポートしていく連載です。
第三回目となる今回は、美術遺産の宝庫・圧倒的なミュージアム数を誇るフィレンツェでのこんなサービスをご紹介します。

世界遺産の芸術の街、フィレンツェ。ルネッサンス期に繁栄の頂点を迎え、初期にはジョットやマザッチョ、その後、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロやボッティチェッリなど、数多くの芸術家を輩出し続けてきました。ゆえに、ウフィッツィ美術館アカデミア美術館など有名なものから、最後の晩餐を展示する小さな礼拝堂まで入れると、美術を鑑賞できる場所は500カ所以上も存在するそう。美術好きの方は1週間フィレンツェにいてもまだまだ足りない、という話も、この数を聞くと納得できますね。

しかしその数あるミュージアムは、フィレンツェでは美術愛好家や観光客だけのものではありません。

ヴェッキオ宮殿・『500人大広間』で中世の衣装を着たガイドに説明を受ける子どもたち

イタリアの子どもたちにとって大きな楽しみのひとつは、盛大に行われる誕生日会。小さい頃は自宅で、幼稚園になると公園や公民館で、小学校になるとピッツェリア(ピザ屋)、プールなどでクラスメイト全員招待の誕生日会が行われます。その誕生日会が、なんとミュージアムでも開催できるのです。

今回私が参加したのは、サンタ・マリア・ノヴェッラ広場にあるMUSEO NOVECENTO

ミュージアムはその名のとおり、1900年代にフィレンツェで活動していた近代アーティストを中心とした作品が並びます。絵画はもちろん、彫刻、デザイン、オブジェ、映像など、その数は約300点。1966年のアルノ川の氾濫をきっかけにコンテンポラリーミュージアム設立への動きが始まり、フィレンツェ市やコレクターの協力のもと、半世紀を経て2014年にオープンしたばかりです。

誕生日会は8歳以上、土曜日の午後と日曜の午前中に可能で、時間になり皆が集合すると、チューターの方がやってきます。

ガイドは中庭からスタート

この日は小学2年生のグループで、「1900年代ってどんな時代?」から始まり、「現代にあって1900年代になかったものは?」、「それゆえに1900年代のアーティストはこのように表現力を磨いていったのよ」と、小さい子どもにも分かりやすいよう、興味を持たせながら話が進んでいきます。子どもたちも手を挙げて積極的に意見や質問を投げかけます。

そしていくつかの作品の前で、作品の説明と、作品に合わせたミニ・ワークショップが行われます。

「膨張するゴムの壁は続く(1933年)」では、切り目の入った紙にいろんな色のゴムを組み合わせて自分のゴムアートを作成。
「プルリモ・1962/63・7番・反対(1962–63年)」では、切り目の入った紙に好きなように色を塗り、それを差し込んで1枚の時と2枚の時との違いを見せる。

ほぼ1時間半のミュージアム見学とワークショップは終了。その後、ラボルームにて、お母さん方持ち寄りのパニーノやおやつでパーティ開始。

この日は誕生日が近い2人の合同誕生日パーティでした。8才の誕生日ケーキはリングケーキを2つ合わせて「8」の字に。

このように誕生日パーティができる施設は、フィレンツェではヴェッキオ宮殿ミュージアム捨て子養育院美術館自然史博物館スティッヴェルト博物館レオナルド・ダ・ヴィンチ博物館、隣町のフィエーゾレ市立考古学博物館など、数え切れないほどたくさんあります。贅沢な誕生日パーティと聞いてファミレスやファーストフード店が真っ先に思い浮かぶ私としては、イタリアの子どもがうらやましい限りです。

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Kumiko Nakayama
フレーズクレーズ

イタリア・トスカーナ州の田舎在住。イタリア語通訳・翻訳、コーディネイター、リサーチャー、ライター愛するトスカーナの小さな村やお祭り、体験型プログラムなどを紹介するサイトを運営:https://toscanajiyujizai.com。東海教育研究所より「イタリアの美しい村を歩く」出版(イタリアの最も美しい村協会推薦)