詩人/小説家・ 最果タヒさんインタビュー

死んでしまう系のぼくらに』 最果タヒ(著) リトル・モア 2014年8月
詩の創作においてネット世代の新次元の表現を追求するとともに、詩を使ったシューティングゲームなど、旧来の現代詩の概念を打ち破るような試みでも注目を集める最果タヒさん。彼女に、創作に対する思いについてお話をうかがった。 (学芸カフェ2015年2月号より再構成/掲載)

— — — -詩集『死んでしまう系のぼくらに』は、これまで詩にあまり触れていなかった方々からも大きな共感が寄せられ、話題ですね。抽象的なことではなく、いま私たちが住んでいる世界の詩なので、読んでいてハッとさせられます。

最果:そう思ってくれると一番うれしいです。読んでくださった方が、レンズのように、私の書いたものを通じて、自分の生活を見てくれているんだと最近は感じます。書くときはあまり考え過ぎずに書くことを大事にしています。言葉に凝るとか、世界観に凝る、というようなことは、私はあまり楽しんでやることができなくて。ですので、詩に使われる言葉は、日常で使う言葉がほとんどになっています。

— — — -『死んでしまう系のぼくらに』には、縦書きの詩もあれば横書きの詩もあります。どういった違いがありますか?

最果:横書きの詩はネットで書いていたものがほとんどです。ほぼ毎日、「花束の詩」とか「図書館の詩」というふうに、なにか一つの物に対して短い詩を書く、ということをやっていました。そのときの作品になります。ネットに書いていた頃からなのですが、それらの作品は、詩が先でタイトルが最後に来るというレイアウトにしてあります。詩に慣れていない方でも「これは、なんの詩だろう?」と考えながら読むことができたり、逆に、詩単体で味わう人は、最後に身近な物がタイトルとして現れることで、ふと、その詩が自分に近づいてきたように思えたり。人によっていろんな楽しみ方ができるように、なっていると思います。小説とかだとタイトルって結構大事なんですけど、詩は短くてすぐに読めてしまうので。なるべく軽い気持ちで雰囲気を残すことを一番大事にしつつ、タグ付するような気持ちでタイトルを決めています。

— — — -最近はtwitterやFacebookなどの反応や反響によって、詩のつくり方が変わった部分はありますか?

最果:twitterで書くと、「いいね」やリツイートされる数で、露骨に反応が分かるんです。しかも、書いた直後に。私は自分の作品にあまり愛着がないので、割と人の意見に流されるタイプです。だから、基本的に褒められた詩が「いい出来だったんだ」と思っています。反対に、自信があった詩に反応があまりないときには、「言葉に没頭しすぎて読む人を置き去りにしたかな」と後々おもったりもして。ただ、反応がたくさんあったからといっても、それがただ「分かり易すぎた」ということもあり、その辺りの見極めは難しいです。ポップさはチープさと隣り合わせなので、そのあたりは気をつけていきたいです。

小説 『星か獣になる季節 (単行本)』 最果タヒ(著)
筑摩書房 (2015/2/18)

— — — -今月(インタビュー掲載時・2015年2月)には、小説が2冊刊行されますね。『星か獣になる季節』のほうからうかがいます。早稲田文学で掲載された小説と、その後日談となる外伝中編(書き下ろし)が収録されています。どういったことを意識されましたか?

最果:編集者さんが、もともと、私の横書きの詩をとくに気にいってくださっていたんです。それで、「横書きの小説」を書いてみてくださいって依頼されました。横書きというルールのお題だけあってどうしようかなっていうときに、ふと、小説の設定が思い浮かびました。また、詩でもそうですが「ぼく」っていう言葉が語感的に使いやすいんで、一人称で、横書きなら手紙として書いてみようと。アイドル好きの男の子二人の友情物語です。二人が応援していた地下アイドルが殺人容疑で逮捕されたところからお話は始まります。彼らはそのアイドルを救うために奔走していく、といったストーリーです。

書いてみると、横書きの小説は、縦書きとは目の動きが違うからなのか、流すように速く読めるので、文章の勢いに乗ってよかったかなと思います。

小説 『かわいいだけじゃない私たちの、かわいいだけの平凡。』 最果タヒ(著)
講談社 (2015/2/25)

— — — -『かわいいだけじゃない私たちの、かわいいだけの平凡。』のほうについて。インターネットの力で魔法少女に変身する女子高生のお話で、青春小説とのこと。以前に別冊少年マガジンで連載していた小説『魔法少女WEB』を改稿・改題されたとのことですが、90%改稿とうかがいました。連載から書籍化に際して、苦労もありましたか?

最果:連載で小説を書いたのは、これがはじめてだったんですが、なかなか難しかったです。毎月区切って書くことで、普通に書くのと書き方が変わっていくというか。あとあと知ったんですが、連載小説は、まとめて最後まで書いてしまって、それから連載用に区切っていくという人も多いみたいです。ただ、漫画雑誌に載せていただいていたので、なんというか、他の連載漫画の「来月はどうなるか?!」という熱気とともに書くことができたのは楽しかったです。

— — — -今回の小説2冊と詩集の装丁は佐々木俊さんです。タイポグラフィも凝っている感じでステキです。特別なイメージを伝えたりされたんでしょうか?

最果:佐々木さんのことはとても尊敬していて、単純にファンなので、私も出来上がりがただ楽しみなだけなんです。ですので、私から特別なリクエストはしていません。詩集『死んでしまう系のぼくらに』のときは、詩集っぽくしないでほしいとだけお願いしました。でも今回は、原稿をお渡ししてお願いしますとだけ。

じつは佐々木さんのことはTumblrで知って、すごい人だなと思って声をかけました。全然知り合いじゃなかったんです。でも、今ではお願いしてよかったとすごく思います。

— — — -これまでに詩をあまり読んだことがないような人にも届くような、新しいこともいろいろとされています。最果さんの詩のテキストを打っていくシューティングゲーム、『詩ューティング』をはじめ、詩を書いている最中を録画したgifアニメ『詩っぴつ中』なんかも、かなり斬新ですよね。

最果:『詩ューティング』は詩を撃つシューティングゲームで、詩が敵として攻め込んでくる様子と、私の詩の攻撃的な作風をかけあわせた作品です。ゲームオーバーになると「私はこの詩にやられました」という言葉とともに、スコアをtwitterでつぶやけるようにしています。また、雑誌『WebDesigning』での連載『詩句ハック』では、毎回、詩で何か珍しいことをして、それを紹介しています。『詩っぴつ中』などは、連載上の企画ですね。企画が肝になるので、面白いアイデアを頑張って考えています。

詩ューティング』のキャプチャ画像1
詩ューティング』のキャプチャ画像2

— — — -最果さんは詩人でもあり小説家でもあります。

最果:詩を書いてるから「詩人」と言われて、小説を書いてるから「小説家」って言われますが、それは他人がジャンル分けのために使う言葉であって、私自身は肩書きにこだわりがないです。言葉を書いてるというだけなので、筆名があれば十分だと思います。ただ、詩と小説を書くときに、意識は少し変えています。詩は言葉の密度が重要ですが、小説でそれをやりつづけると読む人が疲れてしまいます。小説には物語があり、それをまずは伝えなくちゃいけない。でも、情報として伝えるのではなく、「人」「心」として伝えなくちゃいけない。言葉の密度を自在に変えていく必要があると思っています。

— — — -子どもの頃から、文章を書くことや、新しいことで人を驚かせたりしていましたか?

最果:何かを書くのは昔から好きでした。小さい頃に母が絵本の読み聞かせをすごくしてくれていましたが、それ以外では特に本は読んでいなかったんです。本を読まないのに書くのが好きっていうのはどういうことかと、親は思っていたみたいです(笑)。他人に興味がほとんどなくて、一人でいるのが好きだったので、人を驚かせたいとは思っていませんでした。マイペースだったので、勝手に驚かれるタイプでしたけど。小さな頃、発明家になりたいって思っていましたけど、特別に新しいことがしたいとは考えていませんでした。今でも、新しいこと、というよりは面白いことをしたい、って気分かもしれません。

— — — -今後、どんなふうに詩をつくっていきたいですか?

最果:あまり、どんな詩を、とかは考えないんです。できたものが、今の作品、ぐらいの感覚です。ネットなど、たくさんの人に読んでもらう場で詩を書くのは楽しいので、それは続けていきます。楽しく書いているのが続いている状態なので、この状態が続くようにしたいなあと思っています。

(学芸カフェ2015年2月号より再構成/掲載)

(聞き手/牧尾晴喜)


最果タヒ
1986年、神戸生まれ。詩人/小説家
第44回現代詩手帖賞、第13回中原中也賞受賞。
詩集に『グッドモーニング』(思潮社)、『空が分裂する』(講談社)。
2009年4月に初の短編小説「スパークした」を『群像』に発表。「スパークした」は2009年の『年刊日本SF傑作選』に収録された。
近作の詩集『死んでしまう系のぼくらに』が大きな評判を呼び、多くのファンを獲得している。
今、最も注目されている若手詩人のひとり。

(*プロフィールはインタビュー当時のものです。)

雑誌『WebDesigning』での連載『詩句ハック』の企画で、SUZURIにて新刊についての詩をデザインしたTシャツやトートバックが発売中!(デザイン:佐々木俊)


建築・デザイン系専門の翻訳会社がお届けするウェブマガジン

『フレーズクレーズ』トップページの記事一覧へ