Kumiko Nakayama
Feb 8, 2017 · 7 min read

イタリア・トスカーナより、イタリアの裏話やモノづくりの現場などについてレポートしていきます。今回は、店舗空間の装飾やファッションモデルなどに作品を提供し、「ORIGAMI」の新しいあり方を生み出す日本人女性のお話です。

日本のアニメ・漫画の人気は、イタリアでも昔から凄いですが、近年は、料理や伝統文化への関心も高まっています。寿司などのほか、ラーメン、日本庭園、禅、着物……そして折り紙も。海外在住の日本人なら、友人・知人から、また、子供がいれば幼稚園や学校で「折り紙教室をして!」と頼まれる人も少なくないでしょう。

折り紙アーティストの鈴木久美さんも、そんなママの1人。手芸などハンドメイドは趣味だったものの、折り紙に関しては日本人が一般的に知っているレベルでした。しかし、お子さんが通う幼稚園での折り紙教室から始まり、2011年に地元イベントで東日本大震災向け募金を呼びかけ、募金をしてくれた方に折り鶴を渡していたこともきっかけとなり、他の学校や図書館などからも折り紙教室の依頼が来るようになったそうです。

カレンザーノ市立図書館・CiViCa での折り紙教室は大人も子供も参加できる(photo : Origamare)

折り紙教室の依頼は地元の学校や図書館だけにとどまらず、トスカーナ各地・近郊他州の学校や、シエナ国立資料館、そしてフィレンツェ市内の大手紙メーカー・FABRIANOのショップでの大人向け折り紙講座など、年々広がりを見せています。

鈴木さんの自宅工房は女性の心をくすぐる作品がいっぱい。

フィレンツェの隣町・セスト・フィオレンティーノ市にある鈴木さんの自宅兼工房を取材させていただきました。工房には、いわゆる「日本の折り紙」といったイメージの作品はほとんどありません。紙質の異なるいろんな種類の花、ピアスやネックレスなど、「これが折り紙?」という、折り紙の旧来のイメージを覆すものが、センスの良いインテリアに溶け込んでいます。近年は折り紙教室の他にも、ショップのウィンドウや内装に使う装飾物としての折り紙製作も行っているのだとか。

(左)セスト・フィオレンティーノ市の本屋さん・Liblab。(右)カレンザーノ市のホテル・La Selva。ロビーをはじめ、客室3室に鈴木さんの作品が使用されています。

初めてのウィンドウ・ディスプレイは、折り紙教室を行っていた地元の本屋さん。それを見た近所の眼鏡屋さんのウィンドウ・ディスプレイや、さらには隣町・カレンザーノ市のホテルロビーと客室の装飾も手がけました。

そして、シニョーリア広場とレプッブリカ広場にほど近い、フィレンツェ歴史的地区ど真ん中にあるメンズ・セレクトショップのリニューアル・オープンでも、鈴木さんの作品が店内を彩ることに。

1894年創業の祖父の生地屋から誕生したエレディ・キアリーニ。自社ブランドと高級ブランドのアイテムをセンス良くセレクトしたショップは、フィレンツェ市内に3店舗あります。(photo : Origamare)

きっかけは、同じフィレンツェ歴史的地区にあるFABRIANOショップ。温室をイメージした新店舗に折り紙で花や蝶を飾りたいという建築家の要望を叶えるため、オーナー家族の1人がFABRIANOショップに問合せ、ちょうど折り紙講座を担当していた鈴木さんに白羽の矢が立ちました。

2015年3月オープンのエレディ・キアリーニ新店舗の内装テーマは「温室」。楽譜の紙で折られた百合、桜、蝶が天井から吊るされている。(photo : Origamare)

提供した折り紙は全部で120点。グレーのヴォールト式天井に金属フレームの一見無機質な空間も、観葉植物と自然を表現した折り紙で自然の息吹を感じる空間に生まれ変わりました。

ほかに折り紙作品の提供で面白い案件としては、下着業界紙でのアクセサリー製作。こちらは、上述の本屋さんやフィレンツェ大学・建築科のつながりで、出版業界からオファーがきたものだそうです。「先方からのご要望は、下着を覆わないもの、白一色の紙、という2つだけで、あとは任せた!という状況でした」。

斬新な折り紙のアクセサリーは、10ページに渡る特集で使用された。(photo : Origamare

縁が縁を呼び、それをきっかけとして、活動の幅を広げてきた鈴木さん。たった5年で、1人の日本人ママが折り紙アーティスト=オリガミスタと呼ばれるまでに変貌を遂げたわけですが、これからイタリアで、どんな折り紙をしたいのかを聞いてみました。

折り紙のバラのブーケと帽子、指輪を制作(photo : Origamare)

「今一番やってみたいのがウェディング。ハンドクラフトのイベントで折り紙の箱で作ったボンボニエーレ(イタリアの結婚式で参列者に配られる、コンフェッティという砂糖菓子を入れた引き出物)を出したんですが、そのバラの折り紙を見て、出展者仲間が自分の結婚式にこれでブーケを作りたいって言ってくれて。今はブーケやボンボニエーレだけでなく、チャペルや披露宴会場のインテリアやテーブルに飾るものを、全て折り紙でコーディネイトできないかと、いろいろ試作中。ウェディング関連の会社や展示会などとやりとりをするところです」。

幾何学模様の立体折り紙で作った額縁やペーパーフラワーなど、居間や工房に飾られた折り紙作品を見て、「もはや日本の折り紙じゃないですね」と言うと、「日本の伝統の折り紙をイタリアで伝えつつ、新しいことにもどんどんチャレンジしていきたい。たとえばこんな、室内インテリアに使える、おしゃれでシックな折り紙。将来はイタリア発の独自のORIGAMIを、日本に逆輸入できたらいいな」。

自宅工房で製作中の鈴木さん(Photo: Momoko Kawata)

鈴木さんのヨーロピアンスタイルのORIGAMIが、日本の空間を彩る日もそう遠くはないと私も期待しています。



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Kumiko Nakayama

Written by

イタリア・トスカーナ州の田舎在住。イタリア語通訳・翻訳、コーディネイター、リサーチャー、ライターとして、イタリアに関わるいろんな事で活動中。 愛するトスカーナの小さな村やお祭り、体験型プログラムなどを紹介するサイトを運営:http://toscanajiyujizai.deca.jp

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