フィレンツェ「エンツォ・パッツァーリ・アート公園」、300本の糸杉の正体とは?

イタリア・トスカーナより、イタリアの裏話やモノづくりの現場などについてレポートしていきます。今回のテーマは、近代芸術家エンツォ・パッツァーリが自身のギャラリーとして作ったアート公園。そこにある300本の糸杉の秘密に迫ります。
グーグル・アースから見たパッツァ―リ公園

フィレンツェ南東の端にあるロヴェッツァーノ地区は、以前私が住んでいた場所の近く。この地区をグーグル・アースで見ると、ニヤリと笑う人の顔が浮かび上がってきます。その場所の名は、エンツォ・パッツァ―リ・アート公園、その横を電車でもよく通りますが、初めて聞く公園です。いったいそこに何があるのか?この「顔」は一体何なのか?を探るために、行ってみました。

公園の入り口に設置されたトスカーナ州の州章である「ペガサス」。オリジナルはトスカーナ州庁にあります。

この公園を作ったのは、近代芸術家のエンツォ・パッツァーリ。広大な23,900㎡の土地にはたくさんの糸杉が植えられており、その隙間を縫うように、200以上もの彼の作品が展示されています。私のように今まで彼の名前を知らなくても、フィレンツェやその近郊のロータリー・広場などに設置されているものは、市民にとってはお馴染みの作品ばかり!

「3人のピノッキオ」は、フィレンツェ南のロータリーにも設置されています。

元々は1990年より自身の庭で作品を展示し、オープンギャラリーとしていたパッツァーリですが、2001年にこの土地を見つけ「アート公園」を作り始めたそうです。ここに展示されている彼の作品は、全てが購入可能だとか。

糸杉の数は、なんと300本。作品群を取り囲む輪郭でもあり、内側はまるで迷路のようでもあり、隙間から見える作品は迷路の中で見つけた宝物のようにも感じられます。地面を歩いているだけでは決して分かりませんが、糸杉は、ただそのためだけに植えられたものではないのです。

入口で渡される、公園の地図。そう、彼の作品のテーマとして幾度となく用いられている「三位一体」、これらの糸杉がこの巨大アートを形作っていたのでした。この地図を頼りに「ここが口、ここが鼻」と歩いてみることができましたが、グーグルマップやこの地図がなければ、ただいっぱい糸杉がある、と思うだけだったでしょう。

イベント時に撮影した「三位一体」(写真提供:Enzo Pazzagli Art Park

「これを作った時はね、まだ糸杉は1m50cm。彼と娘さんがデザインを見ながら、1つ1つ印をつけていったんだよ」と教えてくれたのは、彼の元で10年以上働くモロッコ人のサラさん。2004年の植林から13年経った今では、糸杉は最長16mにも成長しました。

2004年の植林当時の写真(写真提供:Enzo Pazzagli Art Park

そしてこの糸杉、5年・10年の期間で養育者を募集しており、現在300本のうち約20%に養育者がついているそうです。自身が養育者になるもよし、親しい人へ捧げてもよし、家族代々で継いでいくもよし……この養育費のおかげで、糸杉は手入れされ、これからもこの巨大アートを支えていくことができるのです。

糸杉の成長と共にアートも成長する、まさに命ある作品の「三位一体」。その成長をもっともっと見守りたかったのはパッツァーリ自身であるはずですが、私たちが公園を訪れた10日前に84才でこの世を去ったことを、サラさんから伝えられました。

糸杉の養育者は、アート公園とこの地の自然保持を願ったパッツァーリの遺志を継ぎ、これから先もこの作品の成長を見守ることになります。そんな養育者に支えられたこの「三位一体」のこれからを、パッツァーリもきっと空から見守っていることでしょう。



One clap, two clap, three clap, forty?

By clapping more or less, you can signal to us which stories really stand out.