プロジェクトマネージャーを嫌いになっても、プロジェクトは嫌いにならないでください

あの嫌いなPMもほんとはいい人かもしれない

プロジェクトマネージャー(PM)。誰もがやったことがない、先の見えないプロジェクトの円滑な進行管理に責任を持ち、プロジェクトを「まわす」人たち。

あなたがもし何かのプロジェクトに参加していて、そのプロジェクトにPMがいるなら、一度くらいは「タスク管理しかしないやつが何をえらそうに指示だししてるんだ」と思ったことがあるかもしれない。

たしかに、無能なPMに対してそういう気持ちを持っているのであれば、それはごもっともな主張だ。でも、そのPMは実は非常に優秀で、いや、むしろ優秀であるからこそ、嫌われている可能性がある。

そもそもPMって何をする人なのか

一般的にPMの仕事というと、例えば次のようなものがある。

・スケジュール管理
・ToDo管理
・ミーティングのアジェンダセッティング・ファシリテーション
・コミュニケーション方法の設計と導入
・品質管理
・コストマネジメント
・各自のスコープ(担当領域)管理
・プロジェクトメンバーのモチベーション管理
・調達関係(契約やRFP作成など)
・ステークホルダー管理
・リスク管理
etc

一対一対応ではないものの、プロジェクトマネジメントの知識体系であるPMBOK(Project Management Body Of Knowledge)の定義する10の知識エリアを意識しながら列挙してみた。

これらの役割をみるとわかるが、PMは、「プロジェクトの管理部門」としての性格を持つ。企業の管理部門(バックオフィスといわれる人=人事、経理、法務、総務など)を想像するとわかりやすい。プロジェクトメンバーを事業部門の人間だとするなら、その人々が円滑に働けるようにする、インフラを整えるひと、それがPMなのである。(※なお、品質管理などもするので、厳密には管理部門と同一なわけではない。このあたりのところは、管理部門を何をする人と捉えるかにもよる。)

PMは「管理する人」であって、「偉い人」ではない。「マネージャー」という言葉や、ある程度力のあるPMは経験値やキャリアのある人だという事情も手伝って、PMは偉い人だと思われるときがまれにあるが、これは全くの誤解だ。PMはあくまでプロジェクトの管理という意味でのマネジメントをする人なのであって、予算に対する成果の責任や人事のアサイン権は、プロジェクトオーナーと呼ばれるプロジェクトの責任者や、プロデューサーと呼ばれるプロジェクト全体をオーガナイズする人が別途持っていることが多い。

なぜPMは嫌われるのか

PMが嫌われる理由は、上記のような役割と密接に関係している。

例えば、PMはリスク管理も担当する。プロジェクトの定義に「有期性」(必ず終わりがある=ルーティンではないということ)があるが、この定義からして、プロジェクトを進めるうえでは「誰もいままでやったことがない」というタスクがどうしても頻発する。

こうした先の見えない状態は、プロジェクトのフェーズが進行するにつれてなくなっていく。これは不確実性のコーンといわれるが、この不確実性を自分のわかる範囲まで大きく見積もるのがPMの役割だ。

不確実性のコーンとPMの役割

一方のプロジェクトメンバーは、自分の「あるべきプロジェクトの姿」を追い求める。プロジェクトメンバーが見ようとする道が、一つか二つであるならば、PMは『各メンバーの数の分×二つ+自分で考えたリスクの数』だけ道をみなければいけない。

それだけのリスクをできるだけ正確に洗い出すためにも、PMはスケジュールやタスク管理、各自のスコープなど各種プロセスについて正確に把握する必要がある。また、リスク管理をするのはあくまでプロジェクトを成功させるためであり、リスクに対して品質がどうかかわってくるのかは当然知っておかなければならない。

ここまで書くと、そもそもPMは嫌われやすい性質をもっている、といえる。プロジェクトを常にモニタし、何かあったら「やばいですよ」と耳に痛いことをいってくる存在。気持ちのいい役割ではない。

すべてはプロジェクトのため

PMが従事するのは、プロジェクトである。優秀なPMは、プロジェクトの成功のためなら、多少嫌われてでもその職務を実行する。プロジェクトの目的が「チームメンバーが仲良くなること」であれば別だが、そんなことは稀だろう。

だから、優秀なPMは嫌われる。雰囲気を下手に大事にしすぎるあまり成果を出せないPMと、多少あたりが強くてもプロジェクトを成功に導くPM、あなたはどちらを選ぶだろうか。

元マッキンゼーの採用担当であった伊賀泰代さんの『採用基準』という本に、「リーダーシップをとれる人とは、性格の良い人、明るい人ではなく、自分の乗っている船が遭難した時の救難ボートの船頭をお願いできる人」という趣旨のことが書いてあるが、この考え方も、上記のようなPMのあるべき姿に通じるところがある。

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ちなみに、非常に優秀なPMは、嫌われることもなく、その役割を全うする。PMの職務の一つにはプロジェクトメンバーのモチベーション管理もあり、ほんとうにできるPMはそういうところもちゃんと配慮する。

また、基本的に、プロジェクトメンバーは自分の担当されているプロジェクトと並行して別の仕事もそれぞれ抱えているし、プロジェクトが終わった後のことを考えると、関係性は良好であるに越したことはない。

なれ合いにならずメリハリのある、プロフェッショナルとしてすがすがしい人間関係を築きたいものである。