Google Earthがタイル技術を逆輸入!

Taichi Furuhashi
Furuhashi(mapconcierge)Lab.
7 min readDec 31, 2021
Google Earth(ウェブ用)のタイルオーバレイ設定で地理院地図を表示

Google Maps のプロトタイプを作成し、その後 Google に買収された Where 2 TechnologiesRasmussen兄を中心に、2005年2月にこの世に登場したのがウェブブラウザで快適に表示範囲・縮尺を変更できる Google Maps でした。当時は AJAX の代表格としても扱われ、同時期にGoogleに買収された Keyhole チームと合流してその後の Google Maps/Earth の発展に寄与したことは知られていますが、その過程の中で生み出されたのが ウェブメルカトル(EPSG:3857, EPSG:900913)と呼ばれるGoogleオリジナルの投影法(単位はm)と、全球画像をピラミッド構造化したXYZタイルと呼ばれるタイルシステムです。高速にデータ配信と地図閲覧が行える Google Maps XYZタイルシステムの普及後、ウェブ地図業界ではデファクトスタンダードとなり、OpenStreetMap や Bing Maps、Mapbox、Apple Maps そして地理院地図など主要なウェブ地図サービスではほぼほぼ Google XYZ タイルが採用されている状況です。その後、XYZタイルは画像(ラスタ)だけではなく、ベクタデータも扱えるように Mapbox が MVT(Mapbox Vector Tile)として拡張し、地理情報系オープンソース(FOSS4G)の世界ではベクトルタイル技術が日々進化を続けている、そんな2021年の状況でした。

# Google Earth はXYZタイルではなかった

一方で、Keyhole Earth Viewer を源とする Google Earth は EPSG:4326 の緯度経度座標系を前提に構成されたデータであり、タイル技術は使われていたものの、厳密には Google Maps のタイルとの互換性がないため、 EPSG:4326 座標系 に合わせたレンダリングを行って Google Earth 用タイルサーバーを別に運用しているのです。

とはいえ、Google Maps/Earth が世に出て15年が過ぎ、世の中の殆どのウェブ地図コンテンツが Google Maps の XYZタイルを採用している中で、同じ Google のジオ・プロダクトである Google Earth は XYZタイルの読み込みができない状況が続いていました。

# そして2021年、Google Earth にタイルオーバーレイ機能実装!

とは言いつつも、Google Earthも地道に進化は続いており、スタンドアロンツールとしてインストールが必要な Google Earth Pro で GeoJSON ファイルのインポートが一部可能(2021年現在ラインフィーチャのみ)となるなど、近年のFOSS4Gツールとの相互連携が意識され始めているなかで、Google Earth(ウェブ用)の プロジェクト機能についにXYZ画像タイルの読み込みが標準機能として搭載されました!

使い方は簡単で、Google Earth(ウェブ用)を用いてストーリーテリングを行うプロジェクト(Projects)機能から「新しいプロジェクト」を作成し、「アイテムを追加」ボタンから「タイルオーバーレイ」を選ぶと、細かなXYZ画像タイルURL等の設定が行なえます。

プロジェクト機能からタイルオーバーレイの追加メニュー

オーバーレイURLにはXYZタイルのURLを書きますが、例えば地理院地図の標準地図タイルURL であるhttps://cyberjapandata.gsi.go.jp/xyz/std/{z}/{x}/{y}.png をそのまま貼り付けても読み込まれません。

Google Earth では https://cyberjapandata.gsi.go.jp/xyz/std/$[level]/$[x]/$[y].png のように、Zoomレベル、タイルX座標、タイルY座標の変数表記をそれぞれ $[level]$[x]$[y] と記す必要があります。

これで、地理院地図や OpenAerialMap などの外部XYZタイルデータを読み込むことができました。

以下は、青山学院大学の相模原キャンパス上空をドローン空撮して作成したオルソモザイク画像タイルです。配信は OpenAerialMap プラットフォームを利用しています

青山学院大学相模原キャンパス上空をドローンで空撮したタイル画像を読み込み

# Googleへの要望(提出済)

まだ機能が実装されたばかりで、いろいろやりたいことを考えると、機能拡張の余地が十分あるとは思いますが、素直にGoogleが作り出した XYZ画像タイルの仕様を、Google自身が自社プロダクトに逆輸入したこの状況は、地理空間情報の相互運用性(Interoperability)を考える上で非常に重要であり、Googleの英断を評価したいと思います。

一方でより具体的な機能拡張の要望などもいちユーザーとしてリクエストしましたが、備忘録も兼ねてメモしておきます。

  • {z}/{x}/{y}.png 表記でも読み込めるようになってほしい
  • ストーリーテリングのシーンごとに、データの表示/非表示を制御させてほしい
  • MVTベクトルタイルへの対応もしてほしい

流石に他社プロトコルであるMVTの採用は難しいと思いますが、仕様が Open なものであれば、企業の枠を超えてぜひ相互にデータを組み合わせることができるようにしてほしいのがユーザー側から言えるメッセージです。

# Google Earth Pro でXYZタイルデータを読み込む方法

最後に、Google Earth Pro でもXYZ画像タイルを読めないのか?という方々に、ちょっとしたTIPSを紹介します。

昔から Google App Engine を用いた XYZ画像タイル → KML SuperOverlay 配信をする Google Earth Map Overlays というサービスがあります。このKMLファイルを読み込むと、簡単に OpenStreetMap などのウェブ地図タイル画像を Google Earth Pro に読み込むことができる便利なKMLとなっています。

Google Earth の背景地図を自分の好きなものに切り替えたい!そんな願いを叶えてくれる標準機能が Google Earth に搭載された 2021年、オープンソースの世界で一般化したGeoJSONファイルを読み込む機能が搭載された 2020年、Google が徐々に意識し始めてきたオープンソースな世界との連携が2022年に更に広がることを楽しみにしております。

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Taichi Furuhashi
Furuhashi(mapconcierge)Lab.

@mapconcierge, Professor of Aoyama Gakuin Univ., President of CrisisMappersJapan / DRONEBIRD / JapanFlyingLabs / MAPconcierge Inc.