自作キーボードキットの話

GALACTIC1969
GALACTIC1969
6 min readApr 22, 2020

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自作キーボードキットにはじめて手を出したのは去年で、Mint60を購入した。そして、COVID-19により在宅勤務がメインになったことをきっかけに、7skb(choc ver)を購入した。2つのキーボードを作成・利用してみて色々と違いがわかったので、記録として残しておく。

自作キーボードとは

自作キーボードとは、フレーム・基盤・キースイッチ・キーキャップ・その他もろもろを買い揃えて一から作っていくものである。自作キーボードのコアとなるものはフレーム・基盤で、これによりキーボードの見た目、物理配列(キーマップは別)が決まる。一般的に世に出回っている自作キーボードキットは、フレーム・基盤・必要最低限の付属品がパッケージになったものであり、キーボードを完成させるにはこれに加えて好みのキースイッチ、キーキャップを買う必要がある。色々と買うものは多いが、見た目、配列、押し心地などを全て個別に選んで作れるのが自作キーボードの良いところである。

2020/04/23追記
一番のメリットを書き忘れていた。自作キーボードの良いところは、既製品では少ない左右分離型のキーボードの選択肢が多いことである。左右分離型は肩が開いた状態でキーをタイプできるため、肩こり対策になる。今回紹介する2つのキーボードもどちらの左右分離型である。

ちなみに既製品のJIS配列の左右分離型キーボードにアーキサイト社製のBarroco MD600 という製品がある(既製品/JIS配列/左右分離のカテゴリだと恐らく唯一の存在)。これはすでにディスコンになっていて、入手経路は中古市場に限られる。私はJIS配列派なのでMD600は非常に気になっているのだが、Mercariを監視しているところ出品後だいたい数時間で購入されており、競争率はかなり高そうである。
追記終わり

様々なハードル

自作キーボードはとても良いものだが、万人におすすめできるものではない。

価格

材料費で2万、工具を含めると3万程度を考えておいたほうが良いだろう。また、人件費も含めるのなら、2人日程度。初めて作るのであればもっとかかるかもしれない。キーボードの中でも高級品であるHHKBが2~3万であるのを考えると、これは結構高い。しかも既製品であれば自身の工数はかからない。買うだけである。

作成難度

個人の技量・キットにより異なるが、簡単ではない。作業の大半ははんだ付けなのだが、キーの数 * 4 + 48は必要になる。例えば、63キーのキーボードであれば300箇所だ。しかもミリ単位の精度が求められ、ずれたり、半田の量が少なかったりすると特定のキーが反応しないことがある。キットによっては前の手順に戻るために接着済みのはんだを吸い取らなければならないこともあるので、基本的には次の工程に進む前に都度通電の確認をしておくと良い。テスターで確認するか、直接PCにつないでキー入力を確認する。キースイッチの実装前でも2cmくらいのUの字に曲げたハンダを基盤のスイッチの足にハマる箇所に当てれば通電しているかどうかが確認できる。ちなみに、ハンダ吸い取り機は手動で数千円、電動で2万する。

はんだ付け以外の作業としては、ネジ締め、キーキャップの差し込み程度なのでちょっとしたプラモデルのようなものである。物理的な作業ではないものとしてファームの書き込みはあるが、PCの作業に慣れていればこれもそれほど難易度は高くない。

「自作キーボードは沼」とはよく言われているが、これは2つの意味があると思っている。一つは、ポジティブな沼。自作キーボードの魅力にどんどんハマり、次々と自作キーボードを購入していく流れだ。このタイプの場合は好きにすればいい。もう一つは、ネガティブな沼。作成途中のキーボードが上手く動作しない時、トラブルシューティング、ハンダ吸い取り機などの追加工具に時間・金が取られていく。安くない買い物なだけに、途中で投げ出すわけにはいかないのだ。とはいえ、人生で何度使うかわからない電動のハンダ吸い取り機をHHKBと大して変わらない価格で買うのはかなり精神的に来るだろう。

2つ購入してわかった差

長い長い前置きが終わったところで、2つ購入してわかった差を書いていく。前置きでもう書くのに疲れたので、ここからは箇条書きである。

Mint60

  • 😄: キースイッチ、キーキャップも込みのスターターパックを販売しており、はじめて作る人は何を買えばいいか迷う必要がないので楽
  • 😄: ビルドガイドがかなり丁寧に書かれており、そこまで迷わない
  • 😐 : LEDテープの有り無しで作成難度が結構変わる。LEDテープ有りの場合は、キースイッチの足をできる限り短く切ったり、はんだの角が立たないようにはんだ付けをする必要があり、作成難度があがる。足が出たりはんだの角がたつと、LEDと干渉しショートしてしまうため危険。(自分はこれでかなり苦戦し、結局絶縁テープを挟むことにした)
  • 😐: キーボードは複数のアクリル板の層でできており、LEDテープやダイオードが収まる層が空洞になっているので、typeしたときに少しアクリル板が軋む
  • 😐: キーストロークが深く、台形型のCherryMXのキースイッチ・キーキャップはMacBook系のキーボードになれた自分にはあまり合わなかった。また、キーの位置が高く、パームレストが欲しくなる
  • 😄: 見た目がかわいい

7skb(choc)

  • 😐: ビルドガイドは結構省略してあり、少し戸惑うところがあった。初めて作る人は迷ってしまうかも
  • 😄: Mint60のようなパーツの干渉を気にするケースはほぼなく、作成中に困ったことはほぼなかった。ただ、ダイオードがかなり小さく、さらに正しい向きで実装する必要があり、少し気を使う
  • 😄: 打鍵感が素晴らしい。Mint60と同じく複数の板から成り立っているが、LEDテープやダイオードが収まる層は空洞になっておらず、パーツの部分だけが切り抜かれた板になっている。そのため、キーボードが一枚のしっかりとした板になっていて、typeした時の軋みを全く感じない
  • 😄: ロープロファイルのキースイッチはMacBookに慣れたユーザでもかなり扱いやすい。キーボードの高さも抑えられているので、パームレストなしでも十分に使える
  • 😐: 現状ロープロファイルのキーキャップの選択肢がかなり少ない(とはいえ、自分は無刻印にしたのであまり気にならない)

というわけで色々書いたが、結局は7skbの打鍵感が最高だったということをただ書きたい記事である。もう一個かって無線バージョンも作るか…。

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