胃カメラ VS バリウム

Kotaro Nakada
getwellness
Published in
4 min readJan 5, 2019

こんにちは。みなさん人間ドック受けてますか?

人間ドックは闇雲に受ければいいものではなく、自分の年齢やリスクを見極めた上で適切に検査項目を選択することが重要です。間違っても「検査は一杯受けといたほうがいいっしょ!全部オプションつけておけば安心!」などと勘違いをしないようにしましょう。無駄な検査はリスクであり、検査前確率を無視した検査は統計学的にも害悪です。

人間ドックを「受ける」こと自体に意味があるのではなく、「正しく受けて、何らかのアクションを起こす」ことに意味があるということを意識するのが大切です。

さて今回のテーマは「胃カメラ VS バリウム」です。医者になってよく聞かれる質問で多いのが、「胃カメラとバリウムってどちらが良いの?」というもの。

結論から言うと、医者はほとんど「胃カメラ」の方を推奨します。特に消化器内科医や放射線科医は揃って「自分なら胃カメラを受ける。」と断言しています。僕自身も絶対、受けるなら胃カメラの方です。

医者が胃カメラを推奨する所以は、「バリウム検査では検出できないような平坦な粘膜病変などが見つかること」、「胃だけでなく食道病変も詳細に検出できること」、「被曝がないこと」などです。バリウムと内視鏡を比較した信頼できる研究はないようですが、検出できる病変の種類は圧倒的に胃カメラの方が広範であり、バリウムで異常があった場合結局胃カメラを受けることになるという事実もあります。

時代の流れとしても、昔のガイドラインでは内視鏡による死亡率減少効果が証明されていないことからバリウム推奨とされていましたが、現在のガイドラインでは同列で胃カメラの受診が推奨されています。

実際、2017年に発表された韓国の症例対照研究で、胃カメラ検診受診者は未受診者に比べて胃癌死亡率が47%減少することが示されています。

しかし現在のガイドラインでも未だに、胃カメラは「50歳以上で推奨、2–3年おきの受診推奨、咽頭麻酔によるショックや穿孔・出血リスクを強調」とやや慎重な姿勢が続いています。実際にバリウムを推奨している(or最初からセットに入ってる)病院が多いです。なぜでしょうか?僕は大きく3つの理由があると思っています。

1つめは「胃カメラは医者じゃないと出来ないけど、バリウムは放射線技師でもできるため、病院的にコストが抑えられる」というものです。確かにバリウムの方が行うのは簡単で負担も少なく、読影(画像を読むこと)は外注の放射線科専門医に後でお願いすれば良いので、コストや誤診リスクが低いというのはあるでしょう。

2つめは「胃カメラの方が見逃しリスクが高い」というもの。後になって症状が出たり、他の病院で病変が指摘された時に、あとで画像を振り返って見逃しが発覚するなどのリスクがあります。しかし今後はAIによる内視鏡画像の病変検出(画像認識技術)の進歩により、見逃し症例が減っていくことが期待されます。(胃カメラに限らずですが、)専門医によるダブルチェックを行うことも有益と思われます。

3つめは「医療資源は限られており、国民全員が胃カメラを受けてしまうと医者が足りない」という社会的事情が考えられます。都内だとあまり感じませんが、地方にいくと内視鏡を行える医師の数が限られているという事情もあるのかもしれません。

確かに胃カメラにも当然リスクがありますしコストもかかるため、闇雲に若い人も含めて全員受けよう!とは思いません。しかし、少なくとも食道癌や胃癌のリスク因子がある人、特に35歳以上の人についてはやはり胃カメラを受けてしまうメリットが大きいと思います。

ちなみにリスクがある人とは、「習慣的にお酒を飲む人」「タバコを吸う人」「お酒を飲んで顔が赤くなる人」「塩分摂取量が多い人」「逆流性食道炎がある人」「家族に食道癌や胃癌罹患者がいる人」「ピロリ菌検査が陽性だった人(除菌の有無によらない)」などです。

折角受けるなら、バリウムよりは胃カメラかな。というのが個人的(、そして信頼する先輩医師たちの)意見です。

「いきなり胃カメラはちょっとハードル高い。。」と思う方は、まずピロリ菌検査を受けてみましょう。その時に病気があるか?だけでなく、自分が今後病気を発症するリスクを知るということも非常に重要です。

さて、まとめ。

・まずピロリ菌検査を受けてみましょう(陽性なら除菌しましょう)。

・35歳以上でリスクの高い人はバリウムより胃カメラでの検査をお勧めします。

・リスクに関わらず、歳をとったら定期的に胃カメラ飲みましょう。

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Kotaro Nakada
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Born in 1991. Medical doctor majoring in preventive medicine. CEO at Wellness inc. Our mission is to create 'the future of medicine'.