Takehisa Sibata
6 min readJan 31, 2019

合理的配慮とは?ー仕事で評価されやすい職場を目指してー

1.そのマナーは本当に重要?

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190111-00010000-nkcollege-bus_all&fbclid=IwAR09aUcJ1nyEps-ZjNygKwBHaayQIesghO5j6vHPWF6QSr8ZQYEHZ2zOtBs

以前、友人とペットボトルのお茶を飲む学生を落とすことの是非について議論したことがある。その友人は、

「お茶飲んで会議に集中できるなら良いのでは?形式的マナーを守ることを重視過ぎて疲れた社会になっているのでは?」

と議論を提起した。友人の意見では、形式的マナーを守りすぎることで、日本人は生産性を落としているのではないか?とのことであった。

筆者は、ADHDを持っているため。会議や仕事中に眠くなることがあるため、ガムを噛んでいたところ、職場でガムを噛むことについて上司に対して失礼だ、と注意された。

では、他国ではどうなのだろうか?アメリカのケースを考えてみよう。

アメリカのADHDを抱える発達障害者のマニュアルでは、「集中力が欠落しやすい場合は、仕事中や会議中にガムを噛むべき」と書いてあった。ガムによって集中力を保持し、本来の仕事である議論することやメモを取ることに集中出来るのであれば、ガムを噛むべきだ、とのことであった。また、アメリカの大学では、ペットボトルでコーヒーを飲むことができても、本来の授業の目的であるディスカッションやプレゼンテーションについては厳しく評価される。つまり、形式的なマナーを守ることよりも、いかにその場の目的に合わせて生産的な行動をしたかが評価される。

むろん、会社や社会では許されないことがあることを否定するつもりはない。ただ、形式的なマナーの多さが、本来果たすべき業務にまで支障を及ぼすとすれば、それは「本当に必要なマナーなのか?」と考えて今回、あえて問題提起してみた。

2. 仕事よりも空気を読むこと、マナー、立ち振る舞いに疲れる発達障害者

発達障害者は以下のことに苦しむとされる。

・上司の敬語が極度に苦手

・雑談ができない、もしくは興味のある話題を一方的に話してしまう

・レクリエーションに参加することが苦手

・飲み会が怖い

・お局様や会社のドンにみんな気を使っているに気づかず、いじめられた

などなど、仕事の本業以外の面で躓いてしまうケースも多い。デザイナーやプログラミングのスキルがある方でも、こうしたことに躓いて辞めてしまうケースもしばしば話題に上る。

アスペルガー症候群を抱える方にとっては、ソーシャルスキルを身につけることが非常に難しい方も多くいる。人に関心がないにも関わらず、職場では雑談を強いられること、その雑談では職場の人間関係に気を配らなくてはならず疲れてしまう。ソーシャルスキルを身につけることで、本人が得意なことを身につけるよりも優先されてしまう、という視点も忘れてはならない。

また、ADHDを抱える人は、マルチタスクが苦手。例えば、報告書を書いて、上司とそのまた上司に報告をするという作業の中にも、報告書を書いて内容を話すという部分の他に、空気を読むこと上司との人間関係に気を使うことという実は隠れたタスクが求められる。職場では、実は、人間関係、気遣い、目配り等本業の仕事そのもの以外にも並行して処理することが求められる。そのために、マルチタスクが苦手な方が、色々抱えてしまい疲れてしまうというケース、もよく聞かれる。

3.合理的配慮の方法①ーツールの活用という考え方

http://at2ed.jp/download/job.pdf

こちらは、「テクノロージを活用した発達障害のある人の就労マニュアル」である。

このマニュアルの興味深い点は、本人がソーシャルスキルを身につけることよりも、IT機器等の活用で、発達障害者が抱えるハードルを克服して行くという視点で作成されている。

・相手を怒らせてしまう → 会議の暗黙のルールを明文化し共有化する。

・突然の予定変更でパニックになる → Webカレンダーをチームで共有し、変更がある際 にリマインドする。

・服装のTPOが分からない → テレビ電話で確認してもらう、制服を職場に置く

・満員電車が辛い → フレックスタイムの活用、サングラス等の活用

この方法の良い点は、本人が自分で努力することよりも、ツールを使うことで本人の負担を軽くするため非常に良い。このマニュアルは、是非とも、当事者の方、支援者の方双方にもおすすめなので読んでいただきたい。

4. 合理的配慮の方法②ー職場環境を変える

ある発達障害を抱えるITエンジニアの経験談を読んでいただきたい

以前、日系企業に入ったところ人間関係や空気を読むという面でつまづいたこと、マルチタスクができず苦労したこと、そうしたことが積み重なり短期間で辞めた。その後、外資系のIT企業に入社したところ、非常に評価された。例えば、10分程度遅刻してしまう癖があるがその点は、スキルが高いため許された。また、同僚はインド人なので、暗黙の了解が通用せず、「完成した」という言葉でも日本人とインド人では違う。日本人の場合において「完成した」という意味は、完全に出来上がったものを指すのに対して、インド人の場合は「大体出来た」「見通しがたった」程度でも「完成した」という言葉を使う。暗黙の了解が通じないため、言い合いになるが、かえって居心地が良い。また、化粧をせずとも評価される。ファッションは自由である。そのため楽だ。

この方の場合は、空気が読めず、マルチタスクが出来ないことで躓いた。自由な面もあり、議論が好きな面もある。発達障害の特性の場合、社風が変わるだけで、障害が障害ではない側面がある。

http://self.hatenablog.com/entry/2015/03/23/064600

外資系は、人間関係がドライなため、ドライだという理由で職場適応をしやすいという考え方もできる。仕事の領域も明確に決められているため、その領域に専念していれば良いから楽だ、とする声も多くある。

また、このエピソードの重要な面は、社風が実は、発達障害者の社会適応において極めて重要である、ということも示す。二社目の会社は、本人の自由な発想、積極的な態度を「空気を読めない人」ではなく、「積極的な人」と捉えた点が重要である。社風一つでも「障害」ではなく「個性」に変わることがあるのだ。

「社風」にあった会社に入る、これが「合理的配慮」を達成する一つの手段であろう。

終わりに

ギフテッドワークスでは、プログラミングやデザインのスキルを身につけて就職することを目標としている。ギフリクの松浦さんは、外資系企業やベンチャー系企業で働いた経験から、外資系やベンチャー企業を勧めている。スキルさえ評価してくれる会社であれば、発達障害者の方には居心地が良い、と考えている。

スキルを身につけて、入れる会社の選択肢を増やすこと、そして「合理的配慮」が達成しやすい職場に入れることを目標として就労支援を行なっている。