Takehisa Sibata
8 min readFeb 26, 2019

発達障害の子どもを抱える親からの悩みー真に必要なサポートとは?

1.あるお母さんからの悩み

「今は、発達障害の支援が本当に充実してきたと思うの。幼稚園、小学校の放課後等デイサービスとか増えてきて、早期発見・早期療育がだいぶできるようになってきたと思う。

けれども、本当に必要なのは、早期の支援。いくら障害への支援が進んだととしても最終的には子どもには自立して欲しい。進路を切り開いて欲しい。中学校で高校選択、高校では文理選択、進学先選択というように進路選択がある。

発達障害の人って、本当に進路選択ひとつで大変なことになる気がするのに、フォローが弱くて不安でしょうがない」

そんな相談を実はよく受ける。子どもたちが自立できるのだろうかという不安に苛まれている。発達障害の場合、仕事の向き不向き、勉強の向き不向きの凹凸が大きい上に、自分が得意だと思っていること第三者から見た得意なことがずれていることも多い。

そのために、障害特性に合った適切な支援が受けられるどうか、という不安を抱えている。

その上、親御さんに追い討ちをかけるデータとしては、引きこもりやニートに占める発達障害の割合が高いとする調査結果もある。引きこもりの4人に1人が発達障害、という調査結果である。親たちの自立への不安はますますかき立てられる。

https://diamond.jp/articles/-/13017

実際に、発達障害を抱える親御さんがギフテッドワークスに見学に来るケースもある。

2.既存の日本の教育の弱いところ

学校教育では、テストの成績が良いと親も学校の先生も褒める傾向がある、

そして、

「いい高校に行き、いい大学に行けば、就職先があるだろう」

という神話がその傾向に拍車をかける。ところが発達障害の場合、学校では良い成績を取っていても社会性の面が弱いことや、非言語性のLD(不器用など)などからアルバイトや働くという面でつまづいてしまう人が非情に多い。また新卒一括採用というスタイルが、余計に、自分の特性にあった適職という面を考える機会を逸してしまう。

高校入試、大学入試と数学や英語等の5教科のテストの点数の比重が非情に高く、その成績が良い人が順番にランクが高いと言われる学校に進学する現状があることから、体育や家庭科等の実技教科、工芸や美術等の特技という部分を見落とすリスクが子育てにあるようだ。また、体育や実技教科が苦手だったり、社会性の面でつまづいていたりしても5教科の成績が良ければ見過ごされてしまう傾向もある。

逆に言えば、5教科の成績が悪い場合、自己肯定感が持てないケースがある。例えば、芸術、体育、音楽等実技教科に秀でていても、5教科ができないと学校では、不適応を起こしてしまう。

3.脳科学から見た教育法

「発達障害と呼ばないで」や「アスペルガー症候群」などの著書を執筆している岡田さんは、以下のように脳の特性を分類している。

(1)視空間優位

(2)聴覚言語優位

(3)視覚言語優位

この3つである。

(1)視空間優位

まず、視空間優位は、空間認識が得意であり、体験から学ぶことが得意な特性である。有名な人物としてはスティーブ・ジョブズが挙げられると書いてある。このタイプは、見てそのまま覚えることが得意とされる。例えば、大工作業を見よう見まねで覚える、と言った能力に長けている。ただ、その反面として、言語的な知性に弱いとされる。言語性IQと動作性IQでは、動作性IQが優位である。視空間優位でADHDがある場合には、感情的に行動を起こしやすいという傾向も指摘される。

私がお世話になっているカウンセラーは、それぞれの認識を人類史の視点で考えている。視空間優位は、狩猟採集に適応したタイプであると分析している。狩猟採集には高い運動能力、空間把握能力、瞬時に判断して行く力が重要である。視空間優位にADHDが多い一因としては、瞬時に行動し動く力や音を聞いてすぐ動く力などは、現代社会では座って勉強したりオフィスワークが主流であるため、かえって邪魔になってしまう。

視空間優位の場合は、例えば、モノづくりの職人に弟子入りし、見よう見まねで覚えることや体験から学ぶ、といったことが得意である。職人にも多いとされる。ただ、学校の勉強のように机に座って授業を聞く、本を読むと言ったことは比較的苦手な傾向が強いともされる。このタイプは、社会に出てからは仕事が出来る、手先が器用、といった形で褒められることがある反面、学校の勉強ではつまづく傾向がある。体験から学ぶ環境やモノづくりを学習することを小さい頃からして行く必要がある。

(2)聴覚言語優位

聴覚言語優位は、聴覚で聞いた言語からの理解が高い認知特性である。代表的な人物として岡田氏はバラク・オバマ前大統領を挙げている。人口比では一番多い。会話言語に強く、聞き取り能力に長けている。共感性や情緒反応が豊かである。講義形式の授業には向く、とされる。断ることについては苦手であり、対人コミュニケーションが得意。

また、私がお世話になったカウンセラーの仮説では、聴覚言語優位とは定型発達者とは何かを読み解く鍵となる、という考え方を採用している。人間の歴史は数万年だが文字言語をや農耕を使うようになったは数千年程度、である。多くの時期を洞窟の中で共同生活をしていた。洞窟の中の共同生活では、暗闇もしくは薄明かりの中、家事を営む必要がある。相手の顔が完全に見えなくても気配や雰囲気、音から相手の気持ちを察する力、協調性が育まれたとされる。文字はない上に、薄明かりでは絵やイラストでのコミュニケーションも厳しいため、口頭でコミュニケーションを取る上に、口頭で複数の指示を理解する必要がある。そのため、ワーキングメモリーの発達や空気を読むスキル、想像力が育まれたと考えている。たまたま、人類の歴史で最も長い期間、洞窟での共同生活が長かったからこそ、聴覚言語優位が人口の多数を占めた、という考え方もできる。

学校に適応しやすい。また、交渉能力、相談にのること教えることも得意であり、対人関係の仕事が向く、とされる。

(3)視覚言語優位

視覚言語優位は、記号や文字、論理を扱うことに長けたタイプの認知特性である。岡田氏は代表例として小柴昌俊氏を挙げている。文章言語や数字、記号を扱うことが得意であり、抽象概念に強い、とされる。分析は得意であり、法則化や図式化して処理することが得意である。ただその反面、曖昧なニュアンスの理解や空気を読むことが苦手、理屈は得意だが現実の問題を解決することは不得手な傾向にある。また、手先は不器用で運動が苦手な佳子もある。

私がお世話になったカウンセラーは、視覚言語については、文字や記号が使われるようになった後、文字や記号に人類が適応して行く過程で生じた認知形態であると考えている。文字や記号は、一度に処理出来る情報量が多く、多くの情報を暗記したり、処理したり、分析したりすることには長けているとしている。ただし、聴覚言語優位の方が持つ、空気を読む能力やワーキングメモリーの面が弱くなる傾向があると分析していた。視覚言語優位の傾向がある方にアスペルガー症候群など発達障害と診断を受ける方が多いのは、歴史的には少数派であり、人類が文字を持つ過程で生まれた新しいタイプだからではないか?と考えていた。

このタイプは、学校での特に5教科での勉強には適応しやすい傾向にある反面、社会に出て苦労するケースが多いと分析している。動作性IQと言語性IQでは言語性IQが優位とされる。会計士、法律家、IT関係、学者、研究者に向く傾向がある。ただ、学校の勉強での評価と社会に出てからのギャップに苦しみ、引きこもりや社会不適応を起こしてしまうケースもあるとのこと。

このように脳の特性を把握することで、それぞれにあわせた教育法や進路選択が可能となる。また、苦手なこと得意なことの凹凸があったとしても、それを「個性」と受容することが出来るようになる。

視空間優位の子どもには、比較的はやい段階で体験を中心とした教育を行うこと、ものづくりや運動の面で得意な傾向があるためそうした実技教科の教育を重視して行くことも良いであろう。学校の勉強があわずに自尊心が傷つけられるケースもあるので、その面でのフォローも必要だ。

逆に視覚言語優位の子どもは、学校での5教科の勉強や座学が強いのに対し、実技面・実務面に弱点を持つため、補うようなことが社会に出るはやい段階で必要だと考えられる。グループワークや運動はその療育には良い。学校の勉強や得意な読書面を伸ばして行くことも言うまでもない。

おわりにー進路の支援について

日本では教育制度の仕組み上、多くの人は、15歳の高校選択と18歳の学校選択(専修学校、大学など)の段階で進路の大きな方向性を選ぶことになる。ただ、その段階で「偏差値の輪切り」ではないか?と批判されるように、学校の成績を基準に決め流刑講がある。ただ、その場合、学校の成績だけで本人の特性に合わせた進路を切り開くことができるのか?という問題が生じる。

私たちが考える真のサポート。それは、本人が脳の特性を把握すること。そして、それに応じて、得意不得意を整理することにある、と考えている。