Takehisa Sibata
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Published in
8 min readFeb 19, 2019

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発達障害の療育より先の未来ーいかに自分の能力で未来を切り開く力をつけていくか

1 発達障害って治るの?、という疑問

たまに、親御さんから、

「発達障害治るのか?」

という質問をいただく。一方で、そうした声が、当事者を苦しめている。落ち着きがないことやマナーが習熟していないことについて、それを治療することはできないかという質問がある。

ADHDの場合には、コンサータやリタリン、ストラテラといった、注意欠陥や多動を抑制する薬が処方されます。とはいえ、完全には治ることはない。ただ、年齢とともに多動の傾向自体は弱くなるとされている。

また、自閉症特有の空気が読めない、コミュニケーションに関わる障害についてはオキシトシンという物質で改善されることも研究で言われている。また、ソーシャルスキルトレーニングによって、社会で求められるコミュニケーションの型を覚えていくという形で克服している方も多い。ディスレクシア(識字障害)では、識字障害の脳に合わせた形で文字の読み書きができるようになるケースも報告されている。

ただ、発達障害は、脳機能の偏りでもあるので完全に治るということではなく、その脳の個性とどう向き合って生きるのかそれが課題になると考えている。

2 療育でできること

小さい頃の療育である程度、発達障害特有の症状を改善することはできる。改善できることは、集中力がないなりにでも集中できるようにすること、数字を数えるように療育すること、吃音症があるなりにでもしっかり発音できるようにすることなどである。主に就学前教育や小学校低学年段階で行われる。

海外では、幼稚園や保育所から小学校に上がる前に、就学教育を行われる。その際に、発達障害者を早期発見し、フォローする体制がある。特にそうした幼児教育は、アメリカ、イギリス、北欧で盛んである。

その例として、フィンランドを例にする。

フィンランドでは、小学校に入る1年前にエスカリという就学前教育を行う機関があります。以下の内容を勉強する。

・アアコセット(フィンランドのアルファベット)の大文字

・1〜10までの数字

・時計の読み方

・ワークブック(大文字の書き取り、塗り絵など)

この就学前教育では、自分の身の回りのことは自分で行うことと、学校で行われる集団による学習に適応できることが目標とされる。就学前教育では、幼児教育や児童福祉の専門家が担当し、学習や集団行動に困難や障害が見られる方は早期に発見されケアを受ける体制が整っている。上記の内容のことができない場合や、身の回りのことができない場合、集団での学習に困難をきたしている場合、その児童には特別な支援が提供される。その過程で、発達障害が発見され、就学前の段階で、必要な療育を受けることができる。

就学前の段階で、発達が遅れている場合には、1年小学校に入る年数を遅らせるという措置をフィンランドでは取られる。ただし、就学前段階で留年したところで、就職活動やその後の人生で不利になることはないとのことである。むしろ、適切に療育を受けた、というように社会では評価される。

本人に無理強いするのはなく、本人の特性に合わせた形で、本人ができる形でしっかり療育を通じてできるようにしていきます。

しかし、療育は、あくまで学校や社会で最低限求められることをできるようにすること、社会性を養うことができる。ただ、療育より先は、本人の得意不得意を伸ばしていくこと、それに合わせた進路を見つけていくことが求められる。そうした支援が望まれる。

3 ある建設業の社長の体験談

小学校高学年以降、どのように育てていくか。それを考える上で示唆的なのは、ある建設業の社長さんの体験談である。

その社長さんは、ADHDとアスペルガー症候群、加えてディスレクシア傾向を抱えている。雑談をすると好きな話題を数時間話す上に、何を話していたかも忘れ思いつた話をする傾向にある。また、漢字の読み書きが非常に苦手であるため、学校の勉強では支障があった。

ただ、その社長さんは非常に手先が器用であり、目の前に見たテーブルや椅子などの家具を見ると瞬時に、木材で同じものを作り出す才能があった。その才能を学校の先生が褒め、ツバメの巣を作ることを提案した。小学生離れした立派な巣箱を作り褒め称えられた。

その社長さんは、中学校卒業後は建設業者の社長に弟子入りし、昼は働きんがら夜は学校の勉強をする定時制高校に通う道を選んだ。大変、手先が器用であったために、その才能が認められ若くして建設業の会社を興した。

またその社長さんには、空気は読めないかもしれないし話も一方的で話も飛ぶことが多いが、その反面お客様のニーズを掴むことに長けていた。そのため、営業でも成功した。一方で苦手な事務作業などは、家族に任せるというスタンスをとり得意なことだけを打ち込んだ。その結果として、建設業の世界で大成功した。

この社長さんの話から大切なことは、

・得意なこと秀でたことを、小さい頃から発見していくこと。

・学校の勉強が苦手でも諦めない、学校以外でも得意なことを見つけていくこと。

・自分に合った道、得意な分野で育ててくれる師匠を早く見つけること。

こうしたことがいかに発達障害者を育てていく上でいかに重要かを教えてくれる。この社長さんの場合は、小学校の高学年という段階で、自分の得意なことを発見することができた、という面が非常に大きい。得意なことを伸ばす環境がなかったならば、苦手な学校の勉強で強いコンプレックスを抱えたことであろう。得意なことを早い段階で発見し育てていく、ことが大切である。

また、こうした場づくりを私たちとしても行きたいと考えている。

4 場作りのヒントとなるDE-SCHHOL

ギフテッドジャパンでは、ギフテッドワークスという就労移行支援施設の他、DE-SCHOOLというテクロジーで学ぶ、テクノロジーを学ぶというコンセプトでフリースクールを運営している。ものづくりやITに特化した学習ができる。ITやテクノロジーによって社会のあるゆる場が学ぶ場になる、という考え方である。

DE-SCHOOLには多様なバックグラウンドを持つスタッフがいる。VR/3Dモデリングのプロフェッショナル、アニメーター、3Dプリンターのプロフェッショナル、エンジニアといった人たちである。また、しばしば、ゲストスピーカーを迎えて授業を行なっている。多様な専門領域を持った人がいるからこそ、多様な可能性を広げられるそんな場である。

プロジェクトベースの学習や自主学習をモットーとしている。3Dプリンターをつかって制作物つくったり、している。例えば関ヶ原の戦いを3DCGを仲間とプロジェクトで制作しながら学ぶというようなことが想定されている。電子玩具やプラモデル、3Dプリンターを活用してものづくりに勤しむ経験は、子どもの創造力や好奇心を刺激することであろう。

また、国際理解もDE-SCHOOLでは大切にされている。グローバルシチズンすなわち世界市民という観点でプロジェクト学習が行われている。その例としては、例えば異文化理解、海外から来られたスタッフが自国の文化を解説し理解する、そしてVRを用いて現地の文化を体験するといったことが行われる。国際協力を経験したゲストスピーカーの方が来て学習することもある。

メンタリングを基とした自主学習も行われる。多様なバックグラウンドを持つスタッフがおり、そうした人と触れ合いながら興味を広げ、自分の興味を探求する。自分の学ぶことは自分で学んでいく。算数や国語、英語はIPadを使いながら、自分のペースで学んだ上で、スタッフと1週間で学ぶことを決めていく。日常のなんで、例えば、スマートフォンの中はどうなっているのか、早稲田はなぜ早稲田という名前なのかというような疑問を発し、スタッフのアドバイスを受けながら調べ、発表するといったことを行なっている。

多様な可能性、創造力を広げ、伸ばしていく場が、DE-SCHOOLである。こうした学校であれば、自分の脳の特性や興味の特性に応じた学習ができるであろう。こうしたことが、ゆくゆくは進路を切り開く、「生きる力」になる。

おわりに

ギフテッドジャパンは、発達障害者の就労支援をやるだけではなく、発達障害者がそれぞれの脳の特性、自分の興味に応じて活躍出る場づくりをしていくことを目標としている。発達障害という考え方が普及し、近年は、療育が盛んになって来たが、療育より先、自分の能力に応じた進路を切り開いていく力をつけていく、そうしたことができる社会づくりをしていきたい。

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