Takehisa Sibata
gftd_family
Published in
8 min readFeb 28, 2019

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発達障害者が「なぜ、仕事ができない」と言われてしまうのか?仕事ができる、できないを考えてみる

1.日本人の3分の1は日本語が読めない!?

http://news.livedoor.com/article/detail/16029841/

OECDの成人学力テストに対するある評論家の記事である。

この記事の面白い点は以下の点である。

(1)日本人の3分の1は日本語が読めていない

(2)日本人の3分の1以上が小学校3~4年生以下の数的思考力しかない。

(3)パソコンを使った基本的な仕事をできる人は日本人の1割しかいない。

(4)65歳以下の日本の労働力人口のうち、3人に1人がそもそもパソコンを使えない。

この点がOECDの成人学力テストで示されたとのことである。しかも、OECDの成人学力テストでは、日本は学力トップであった。先進国の多くでは、半分以上の大人が、自国の言語を正しく読めていない、小学校レベルの数的思考力がなかったことも判明した。

AIに東大の入試問題を読ませる「東ロボくん」を開発している新井紀子氏によれば、中高生の基礎読解能力を調査したところ、3人1が簡単な文章の読み書きができないと言うことが判明した。

日本人では8.3%しか正答していない問題に、会議室の予約のメールを処理すると言うものがある。4件のメールのうち、3件は会議室の予約に関するものであり、回答者は会議室の空き状況を確認して、予約、返信すると言うものである。この問題が9割の人が間違えた。初歩的なパソコンの操作方法から怪しい、と言うものであった。

驚くべきことには、成人の学力テストにおいて、全分野で日本がトップであった。

以下のことも判明している。

(1)成人の約半分が初歩的な自国の言語を処理できていない。

(2)成人の約半分は小学校3、4年生以下の数的思考力しかない。

(3)先進国の成人のうちパソコンを用いた仕事ができるのは20人に1人。

欧米諸国では、失業率が極めて深刻である反面、プログラマーやエンジニアの人手不足が深刻化している。また、多くの企業では、

「そもそも求人を募集しても資格に該当する人が来ない」

と嘆いている。

この統計調査は、GFTD.にお手伝いしている筆者から見れば、

・そもそも、発達障害、すなわち脳の凹凸とは非常にありふれたものではないか?

・パソコンも使いこなせ学力が高い発達障害者がいるがつまづくのは、仕事の大半が別の能力が要求されるからではないか?とのことである。

すなわち、既存の多くの仕事とは、読み書きの能力やパソコンができるかどうかではなく、空気を読むこと、感覚的にものを覚えること、そうした言語以外の能力が要求される、と言うことである。

2.日本の発達障害の現状

https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20171108-OYTET50040/

自治体と連携した調査では、小学1年生のうち1割が発達障害という調査結果が得られた。また、地区によっては3割近くに達するという話を教育関係者から伺った。

実は発達障害は極めてありふれた障害であることを意味する。OECDの学力テストと合わせて考えれば、実は、能力の凹凸を多くの人が抱えているのではないか?ともいうことができる。

発達障害者の支援とは、

「特別な障害者だから支援しましょう。特別な配慮をしましょう」

どころか、みんなが実は脳の凹凸を色々抱えているので、

「みんなの脳の凹凸を理解して、みんなが生きやすい社会づくり、働きやすい職場づくりをしましょう」

に転換するものだと考えている。

私たち、gftd_familyの試みとは、ただ特別な人を支援する、ということではなく、みんながそれぞれの才能を伸ばしあう社会をつくる、その一里塚になるのではないか、と考えている。

3. 発達障害者はなぜ仕事でつまづくのか?事例1

しばしば、高学歴なのに仕事ができない、高い学力を持っていても仕事ができない人がいる、と言われている。先ほど、OECDの学力テストの結果が示している通り、日本では人口の3分の1、先進国では人口の半分が読み書きの能力が厳しい。となれば、仕事の多くが、非言語的な能力を駆使して、行われている、と推測するのが容易であろう。

なぜ、高学歴なのに仕事ができないのか?以下の事例から考えてほしい。

発達障害を抱えたAさんと上司のBさん、その上の上司のCさん、クライアントのDさんがいるとする。クライアントのDさんは、依頼した仕事の進捗が気になりCさんに色々聞きました。その仕事は実は、AさんとBさんがしています。そこで、進捗をCさんがBさんに聞き、さらにBさんはAさんに任せていたので、BさんはAさんに

「今、仕事の状況どうなんだ!報告しろ!」

と聞きました。

Aさんは、仕事の状況を全部話しクライアントが聞きたい部分以外全部を答えたり、ある時はクライアントのDさんが知りたい部分と関係ないところを報告することがあるようでした。

つまり、「今、仕事の状況どうなんだ!報告しろ!」という指示一つでも、

・その仕事が何を指すのか?

・Bさんはどういう立場でCさんから聞かれているのか?

・さらにクライアントのDさんは何を望んでいるのか?

・Aさんの職務領域から考え何を報告するのが妥当か?

・聞かれた時間によって、また声のトーン、状況によってどの程度の量を報告するのが妥当か?

実は、人間関係、会社の状況、クライアントの状況など幾つもの非言語的な情報処理が要求される。この点が重要である。

「今、仕事の状況どうなんだ!報告しろ!」でも、何を指すのか、何を答えればいいのか、は常に変わるのである。非言語的な情報をいかに読み取るかが重要であり、むしろその点の方が重要だからこそ、社会でつまづく発達障害者が多いのである。

4 .発達障害者はなぜ仕事でつまづくのか?事例2

仕事ができるのに職を転々と繰り返すAさん。販売の仕事や接客の仕事は大変できる。ただ、感情的になることが多く対人関係でつまづきやすい、また、管理ができない、という特徴を持つ。また、書類を読むことに苦労したり、難しい言葉が頭に残らない、と悩んでいる。管理する時には大変だ。

この場合、仕事はできる上に非言語的なコミュニケーションは得意のでなんども転職することが容易なのである。ただ、言語表現の能力が弱い場合は、すぐ行動に移す、感情的になりやすい、ということで、職場では「突発的な行動を取る人」「感情的な人」と思われてしまう。また、管理する立場になればなるほど、言語的な知性(契約書を読む、など)が要求されるため苦労を重ねる。ただ非常に、現場にいるときは仕事ができる、と評されることも多いようだ。

ただ、年を重ね、管理する立場になるとき、転職を重ねすぎて職歴が傷になってしまう時にマイナスにもなる。

5 .未来は発達障害の定義をどう変えるか?

今、先進国ではどんどん、「知識経済」と言われるように単純作業から知的な労働が中心の社会になりつつある。AIやロボティクスは、どんどんルーチンワークや定型業務を奪う。そうなれば、一握りのクリエイティブな人間や知識を持つ人間が中心となる社会になるであろう。逆に言えば、言語性IQが高い発達障害者は、知識社会では創造力を発揮するかもしれない。今の時代では、健常者の人が、「知識社会に適応出来ない人間」という未来も考えられる。

また。AIやロボティクスとは関係ないが脳科学の進展が発達障害の定義そのものを変える可能性もある。先進国の約半分の人間が、小学生レベルの読み書き・算数に困難があることも判明してきた。その点が、「支援の必要な発達障害者」と考えるのか「人間とはそうしたものだ」と考えるのか非常に難しい議論を提示してくるだろう。

社会によって、障害かそうでないかのライン引きも変わるかもしれない。太古の時代、文字がなかった時代には、そもそも、文字の読み書きに困難のあるLDの方は障害ではなかったであろう。文字が生まれたからこそ、たまたまた「文字」というものが認識出来ないために「障害者」になったということである。むしろ、太古の時代においては「仕事が出来た人」だったこもしれない。

発達障害者が仕事できる、できない、も社会や時代によって変わってくるそういうものだと私は考えている。

おわりにーギフテッドワークスは何を提示するのか?

私たち、ギフテッドワークスは「偏りを活かし和える社会」をつくるとして、あらゆる「偏り」を受けいれ活かす社会をつくろうとしている。就労移行支援施設なので、「社会で働く」ということにつまづいてきた方が非常に多い。

そうしたときに、私たちはまず、仕事ができる、できない、そのものが社会の中で相対的に決められたものだ、ということを提示する。そして、人間には、言語的な知性、プログラミングの知性、コミュニケーションの力、絵を描く力、味覚など色々な知性があることを理解していただきたいと考えている。

そして、その偏りを活かして社会に貢献出来る人材づくりをしていきたいと思う。

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