Takehisa Sibata
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6 min readMar 26, 2019

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2018年からの精神障害者の雇用義務化は雇用を変えるか?

1.先日、意見交換した外資系企業の場合

先日、ある外資系企業の人事担当者と障害者雇用について意見交換をした。以下のような話が出た。

・法人を大きくするためには、今後、障害者雇用を広げる必要がある。特例子会社の設置も含め検討中。

・オープンポジションで障害者を入社させているが、障害者でも一般枠と同等の仕事ができる場合は、交渉次第で仕事を振っている。

・アメリカでは、「障害のあるアメリカ人」法のもとで、合理的配慮を義務づけた上で、障害者枠という概念はなく、障害者も健常者も同等の仕事ができれば採用するし、そうでなければしない、という方針を取っている。

・日本は、法定雇用率を満たすかを考えているが、アメリカ系企業はダイバーシティや公平性という視点で考えている。

アメリカ系企業は、障害者枠という概念で障害者用の仕事をつくることよりも、「ダイバーシティ」という観点から障害者を活躍させるという概念に重きをおいている。

ダイバーシティを重んじているという点では、アメリカ系企業であるIBMはその代表例である。IBMは障害者の方が管理職やエンジニアとして活躍している企業の例である。視覚障害者の浅川智恵子さんは、視覚障害者のアクセシビリティの研究の世界的な第一人者であり、点字翻訳システムなどの実績を持つ。IBMの最高技術職である技術フェローに選ばれた。

アメリカでは、「障害のあるアメリカ人法」が制定されており、職場には合理的配慮義務が課されている。障害者枠をつくるのではなく、それぞれの職場で合理的配慮を義務付けるという考え方である。そのため、障害者も健常者が良くも悪くも同じ土俵で戦いながら、合理的配慮を受けるという考え方だ。

精神障害者の法定雇用率が義務化されてきたため、採用を増やす外資系企業も多い。

2.公務員の場合ー公務員の障害者枠にも精神障害者ー

精神障害者の雇用義務化について、では、公務員の場合はどうだろうか?

しばしば、発達障害者の方から、

「営業もないし、コツコツ仕事できる環境だから公務員になったら良いのかな?」

「障害者枠に発達障害者は含まれるのか?」

しばしば相談を受ける。また、安定しているというイメージから発達障害者の親御さんの中には、子どもに公務員になってもらいたい、という方も多いようである。

現実はどうであろうか?実は、

・ミスが民間以上に許されない職場であるため、非常に辛い。

・近年の行政改革で、定型業務はアウトソーシングされ、管理業務ばかりになり、発達障害者には不利。

・精神障害者には理解がない。

と言った声が発達障害者から寄せられている。一般枠で働く厳しさは、民間企業も公務員も変わらないようである。ただ、安定性が高いアスペルガー症候群の場合は、かえって職務知識が深くミスがない、という点で評価される方もいることも事実である。

障害者枠ではどうだろうか?

昨年、中央官庁や地方公務員などで障害者雇用の水増しが長年行われている実態が明らかになった。手帳交付に至らない軽度の障害者、例えば、視力が悪い方や病気を抱えている方などを障害者として不正に参入してたとのことであった。

そのため、法定雇用率を満たすため、大量採用を進めている。

それを受けて、政府は、障害者を対象とした枠を設置し、採用試験を行った。ただ、国家公務員の場合は、チャレンジ雇用(1年を任期として、民間企業では採用しにくい障害者を対象にお行われている)で発達障害者を雇うケースが非常に多い。今回設置された障害者枠では、、発達障害や精神障害者も採用される。

地方公務員の場合は、東京都庁と特別区では2017年から、明石市では2015年から発達障害者も障害者枠に含められている。特別区は、身体障害者の採用が少なかった当時から、障害者が健常者に近いレベルの内容で仕事をしているケースがあった。精神障害者でもこうした活躍できる先例ができることが望まれる。

http://www.dpi-japan.org/friend/restrict/essay/essay0103.html

とはいえ、精神障害者は特に、まだまだ障害者枠には適応しにくいという声もある。障害者でも精神障害者にはまだまだ理解が薄い、という問題が挙げられている。改善が必要であろう。

3. 中小企業の場合ースキルある障害者をも求めて

中小企業家同友会には、障害者雇用を扱う部会が設置されている。しばしば、中小企業家同友会で話題になっていることとしては、

・スキルのある障害者を雇いたい。

・社長には、尖った人が多いから、実は、発達障害者と相性がいいと感じている。

・小さい職場で一人二人雇うという点では、大企業より働きやすいのではないか。

・健常者でもスキルある方は少ないから、スキルある障害者が欲しい。

などなどであった。

昨今の人手不足では、スキルある労働者の採用、定着、において多くの中小企業が四苦八苦している。せっかく、教育しても退職してしまうケースが多いことや、そもそもスキルある方が受けに来ない、という問題がある。そうした観点から、障害者や女性の活用が注目されている。法定雇用率が課せられていない企業でも、採用したいという声が多く出ている。

精神障害者を採用した企業の中には、

・障害者を入れたら健常者も働きやすい職場になった。

・風通しの良い職場になった。

・ワークライフバランスを職場が考えるようになった。

など「会社が良くなった」という声もあるとのことである。

障害者問題の部会に参加していたある人材紹介会社さんの方は、次のように語る。

「東京都だけで中小企業同友会に参加する2200社あります。発達障害は、それぞれ個別具 体的に違う障害なので、ありとあらゆる職種がある中小企業家同友会こそ対応できる強 みがあります。オーダーメイドで対応できます。」

とのことである。個性的な会社、ブティックのような会社、などなど尖った会社も少なくない。検討してみてもいいかもしれない。

終わりに

発達障害者が抱える悩みの中には、

・障害者枠になったら業務が軽くなって、やりがいがなくなってしまうのではないか?

・お給料が心配だ。

などの声がある。発達障害者の中には、高学歴な方やスキルの高い方も大勢いる。そうした人たちの中には、軽作業が中心となることへの不安も強い

精神障害者の義務化によって、多くの企業が発達障害者の雇用に本格的に取り組む流れにある。そうした取り組みが社会全体に広がり、発達障害者が自分の能力が発揮できる職場増えて行くことが望まれる。

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